日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

国際政治の問題となってきた「新疆ウイグル」の問題。

2021-07-14 20:46:56 | ビジネス

昨日だったと思うのだが、米国のバイデン大統領がある声明を出した。
それは「新居ウイグル自治区」におけるビジネスが、「法令違反のリスクがある」という趣旨の内容だった。
毎日新聞:ウイグル関連事業「法令違反リスク」米警告、日本企業にも影響

これまで「新疆ウイグル自治区」に関する中国の圧政や人権蹂躙の問題は、様々な国の「人権団体」が、訴えてきた。
しばらく前に話題になったのは、日本のUNIQLOや無印良品に対して「新疆ウイグル産の綿製品の取扱について」という、趣旨の質問状を海外のNPOが出していたが、「回答が得られず」ということを公表した、ということだろう。
一連のことについては、拙ブログでも以前取り上げているので、覚えていらっしゃる方もいると思う。
この「無回答」という曖昧な対応に対して、質問を送ったNPOが猛反発をし、厳しい批難声明を出したということもあった。

逆にスウェーデンの世界的アパレル企業H&Mが「中国産の新疆綿を取り扱わない」と声明を出した事から、中国ではH&Mに対する不買運動まで起き、売上そのものを大きく減らしている。
H&Mが中国で売り上げを減らした分、このような問題に敏感な諸外国での売り上げが伸びれば、H&M側としては全く問題がないばかりか、「人権問題等にも厳しく接する企業」としての、イメージアップを図ることができた、と考える事もできるはずだ。
というのも、中国は長い間行ってきた「一人っ子政策」の為に、急激な人口減少が起きる可能性が高く、現在のような「人口の多さ=市場規模が大きい」という、魅力を失う可能性を持っているからだ。
まして、「新疆ウイグル自治区」の問題だけではなく、中国そのものは、さまざまな「民族問題」を抱えている。
そのような「問題を抱えた市場」に対して、どのような魅力を感じ続ける事ができるのか?というのが、これからのビジネスとしての中国問題なのでは?と、考えるとH&Mの判断のタイミングは良かったのかもしれないのだ。

ただこれまでは、アパレル産業としての問題として、とらえられてきた。
それが今回、米国のバイデン大統領がこのような声明を出した、ということは「アパレル産業の問題」ではなくなった、ということを示している。
「国際政治」へと、発展し始めていると考える必要があるだろう。
その背景にあるのは、中国の経済的躍進というよりも強引な政策によって、旧西側諸国が脅威と感じ始めている、ということに他ならない。
それだけではなく、中国に隣接する東アジア諸国にとっても、中国とは「国境線」という問題を抱えており、米国の大統領がこのような声明を出した事で、「米国の後ろ盾をもらった」と感じる国はあるだろう。
特にインドやフィリピンなどは、そう捉える可能性は高い(はずだ)。

問題なのは、日本なのだ。
米国の同盟国としての立場と、中国に対して弱腰とも取れる防衛戦略、今だに中国からの観光客を目当てにしたような「観光=インバウンド政策」等々、「こちらを立てればあちらが立たず」という、板挟み状態だからだ。
そのため、政府は何もせず「企業活動の中で、個々に判断してやってください」という方針で、進んでいくのでは?という、気がしている。
とすると、企業側は独自の「海外戦略」を持ち、中国からの圧力に屈しない(あるいは中国に取り込まれる)ようなビジョンを、国内外に示す必要がある。

既に「アパレル産業の問題」ではなくなってしまった「新疆ウイグル問題」。
果たして日本の企業は、どのような判断をするのか?
そして、その判断に対して私たち生活者は、どのように考え・行動するのか?
その点にかかってきているのかもしれない。