日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「社会との関わり方」の情報発信が重要になっていく

2021-07-11 20:40:18 | ビジネス

VOGUEのWebサイトを見ていたら、しばらく前にFM番組で聞いた「紙かみそり」の記事があった。
FM番組では、その形状等具体的なイメージがわかなかったのだが、この記事を読んで「なるほど!」と思った。
VOGUE: 「ソーシャルグッドな消費の選択肢を」-グローバル刃物メーカー貝印の挑戦

記事という形態をとってはいるが、一種の企業広告なのだが、一般的な広告では伝えきれない場合はこのような「広告」を企業が掲載することがある。
ただし、このような記事広告は掲載をする媒体を相当吟味しないと、往々にして失敗をする。

広告としては、数多くの人に見てもらう、ということが一番重要なのだが、興味の無い人たち100人に向けて広告を打っても、その効果は期待ほどではない。
逆に、興味のある人あるいは、VOGUEのような、特徴的な顧客を持っていて、雑誌そのものにステイタスがあるような場合は、数が少なくてもそれなりの効果を上げられる。
いわゆる「インフルエンサー」となる人達が、読むような雑誌や媒体であれば、その媒体を目にする人が少なくても、それなりの効果が得られる、ということなのだ。

一時期話題となり、数多くの企業が探していた「インフルエンサー」と呼ばれる人たちだが、ここ1,2年余り聞かれなくなったような気がする。
一つは「コロナ禍」の為、「インフルエンサー」となる人達も「生活行動の自粛」を余儀なくされている、ということが考えられる。
もう一つは、一時期社会的問題になった「広告」とは告げずに、一部のタレントさんが、ご自身のブログやSNS等で商品を勧める「ステマ(広告)」が問題になった、ということが大きいのでは?と、考えている。

「ステマ(広告)」は、広告のルールとしては問題なので、扱われなくなっていくこと自体は、「広告の健全化」という意味で、良い傾向だと思う。
そして「インフルエンサー」と呼ばれる人たちについても、「SNSのフォロワーが〇万人いる」と自ら売り込みをかけるような輩が登場してからは、企業側も簡単に使うことが無くなったように感じている。
逆に「インフルエンサー」という存在ではなく、「自社製品を使って欲しい」と思わせるSNSの発信者に対して、商品をトライアル的に使い、その使用感をSNSで取り上げて欲しい、という本来あるべき「インフルエンサー」の使い方になりつつあるのでは?という気がしている。
このような「自社製品を使って欲しい」と企業側が積極的になるのは、DIY関連や料理関連が中心にように感じている。

代わりに登場してきたのが、今回のVOGUEの貝印が掲載したような「広告」だ。
このような広告の強みは、「商品の広告」というよりも、企業広告という意味合いのほうが強く、「企業の理念やビジョンに共感してもらえる人達」の掘り起こしと顧客としての定着を狙っている、と言える。

そのためには「自社製品の自慢」ではなく、「企業と社会との関係の中で、どのように考え・製品を創っているのか?」という、具体的なビジョンが必要になる。
このビジョンによって、生活者が企業に対して好感を持つのか・否かということになるからだ。

このビジョンが明快で社会性が高いと、掲載誌側が判断すれば、その企業規模は関係が無くなる。
事実、時折拙ブログでも紹介をさせて頂く「和楽Web」では、「義肢」のメーカーを取り上げている。
和楽Web:地雷よりも義肢を。「心の中に入り込むモノづくり」を目指す川村義肢の理念に胸アツ!

「義肢メーカー」そのものは、企業規模が小さく、工業製品化することができない。
そして、和楽Webに取り上げられたからと言って、売上が大きく伸びる可能性は高くないはずだ。
しかし、社会的に影響力のあるメジャー雑誌に取り上げられることで、社会的認知度は上がり、支援者が増える可能性が高くなる。

「コロナ禍」によって、人の気持ちや心の向かう方向が変わり始めている。
「売るための広告」だけではなく「社会との関わり」というビジョンの発信が、これからの企業に求められることなのでは?と、考えている。