日経新聞のWebサイトに、マーケティングの基本だな~と感じさせる記事があった。
日経新聞:グリコがアイス再生 消費者ニーズよりも困りごとを解消
見出しを見ると「生活者のニーズを無視しているのでは?」と、思われる方もいらっしゃると思う。
しかし、記事をシッカリ読んでいくと「生活者のニーズがどこにあるのか?」ということと自社の理念とをすり合わせ、「企業としての使命は何か?」と、考え深く掘り下げていくことで「生活者のニーズ」のとらえ方を変え、商品コンセプトを大きく変えることなく、キャッチコピーなどの「(生活者の)アイキャッチ」表現を変えることで、基本的には同じ」でありながら、生活者に受け入れられるように変化させている。
その結果として、新しい市場を創りだすことにも成功しているのだ。
今回取り上げられている、「グリコ」という企業は創業者の考えというものが、しっかり継承されている。
多くの人にとって「グリコ」との出会いは「グリコ」のキャラメルだろう。
もしかしたら、キャラメルではなく「おまけ」についている、小さなおもちゃかもしれない。
創業以来、第2次世界大戦の時でも、「グリコ」は一貫してこの「おもちゃ」をお菓子に付けてきた。
おそらく30年位前になると思うのだが、「グリコのおもちゃ展」という美術展があり、見に行ったことがある。
断っておくが「グリコのおまけ展」ではない。
「グリコ」は創業当時から、あの「おまけ」のことを「おもちゃ」と呼んでいるのだ。
何故なら、「お菓子は子供の体を、おもちゃは心を育てる」という考えがあるからだ。
そこに「お菓子を食べる楽しさ」が時代と共に加わり、今では「オフィス・グリコ」と呼ばれる、「お菓子の配置サービス」までに発展している。
今は「コロナ禍」で、苦戦を強いられているとは思うのだが、「仕事で疲れた時に、ほっとする時間を提供し、リフレッシュして仕事をする」ということも、創業当時の理念の延長線にある、ということだろう。
そして今回取り上げられている「アイス事業」だが、スーパーやコンビニ等のアイス売り場に行くと「今の生活者の生活志向」が反映されているのでは?と感じる程、バラエティーに富んでいる。
記事に取り上げられている「SUNAO」という、糖質等を考えた「健康志向」のアイスもあれば、手ごろな値段でおいしいと固定的な人気のある明治の「エッセルスーパーカップ」シリーズに、値段がやや高い「アイスケーキ」のシリーズが出て、人気となっている。
もちろん、日本では高級アイスの代名詞となっている「ハーゲンダッツ」も健在だ。
その一方で、豆乳を使ったアイス等もある。
アイスに限らず、飲食品は年間で相当数の新商品が登場し、瞬く間に廃番となる厳しい市場だ。
だからこそ、生活者のニーズをどのようにとらえ、生活者に共感されるようなネーミングや仕掛けが、重要なのだ。
そのネーミングや仕掛けが、企業の創業理念と大きくかけ離れた時、生活者は戸惑い、その企業の商品から心が離れて行ってしまう。
企業理念は企業活動の指針となるモノだし、そこにある考えを生活者ニーズとどのようにマッチングさせる「言葉や表現が必要なのか?」ということもまた、マーケティングでは重要なことである、と言うことをこの記事は教えてくれている。