日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「銀座」というブランド力

2022-05-10 22:41:19 | マーケティング

毎日新聞のWebサイトに、「銀座」について興味深い記事があった。
毎日新聞:プラダの前にワークマン 低価格帯店舗続出 変わる銀座に戸惑いも

「コロナ禍」になる前から、久しく東京の銀座に行っていないので、今の状況といわれてもよくわからないというのが、本当のところだ。
ただ、私が10年くらい前に行った銀座でも、随分雰囲気が変わってきたな~という印象があった。
当時は、中国からの観光客が大手を振って銀座の高級ブランド店で、買い物をする光景が見られた。
私の知っている、「日本で一番おしゃれな文化を発信している」という雰囲気はなくなっていた。
最も私が「日本で一番おしゃれな文化を発信している」というのは、単なる「銀座」という土地の名前が持つブランド力によるイメージだったのかもしれない。
それでも、銀座に立ち寄ると上野や新宿などとは全く違う「街の風情」のようなものが、感じられた。
それが、一遍して「ブランド品爆買いの街」のように見えた時には、ショックだった。

もしかしたら、そのころから「銀座」という街のイメージが、変わり始めていたのかもしれない。
それが「コロナ禍」によって、海外からの「爆買い観光客」が来なくなり、代わりに「銀座」に登場したのが低価格帯店舗のように思えてくる。
このような傾向は、「銀座」だけではなく、私が住んでいる名古屋でも見られる。
「人が集まるところから、高級ファッションブランド店が撤退し、低価格帯店舗が進出をする」という傾向だ。

記事を読むと、「銀座」に出展する、低価格帯店舗の経営側は「いつか銀座に出店したい」という、「夢」を持っいらっしゃったようだ。
それだけ「銀座」という「街のブランド力」があり、魅力的であったということだと思う。
そのような場所に出店する、ということは誇らしいコトであり、それだけの経営基盤を含め力をつけてきた、ということにもなる。
企業としての「ブランド価値」等も上がるだろう。

だが「銀座」という「地名のブランド力」は、どうなってしまうのだろう?
実は、「銀座で爆買いをする中国人観光客」の姿を見るようになってから、「銀座」という街の魅力があまり感じられなくなってしまったのだ。
その理由は、上述した通り「日本で一番おしゃれな文化を発信する街」という、自分が持っている「銀座」という場所のイメージが変わってしまい、「銀座で買い物をしなくてもいいや」と、思うようになってしまったのだ。
もちろん、文房具の伊東屋のように、銀座に行かなくては変えないお店には行きたいと思うのだが、銀座通りを歩きたい(=銀ブラをしたい)という気分が失せたようなのだ。

企業の戦略として、「夢であった場所に進出する」ということは間違ってはいない。
それだけの採算見込みができるだけの市場調査をしたうえで、経営判断がされたはずだからだ。
とすれば、「夢であった場所に進出する」だけではなく、低価格でありながらも銀座という場所にふさわしい何かをつくり上げていく必要がある、ということなのだと思う。

それぞれの場所には、その場所に在ったモノ・コトがある。
それを知らなくては、進出する意義そのものが無くなってしまう、ということも理解する必要があるように思うのだ。