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聴くスタイルの変化が、倒産を招いただけなのか?

2022-05-14 09:34:17 | ビジネス

日経新聞を含む全国各紙が、ONKYOの倒産を報じている。
ITMediaNEWS:オンキョー、自己破産を申請 負債総額は31億円「誠に申し訳なく心からおわび」

オンキョーという企業名を聞いて、オーディオ特にスピーカー等に強い企業である、ということを知っている方は50代以上なのでは?という気がしている。
いわゆる「ミニコンポ」と呼ばれる、オーディオシステムで音楽を楽しんだ世代以上でなくては、オンキョーという企業に馴染みがないと思うからだ。

オンキョーという企業は、ソニーやビクター(現JVC)のような規模の企業ではなかったが、その名の通りスピーカー等に関しては、価格と製品バランスがとても良い企業として、オーディオファン以外の人たちにも、人気のあるオーディオメーカーだった。
当時は、ソニーのウォークマン(カセットテープで聴くタイプ)で聴くために、ミニコンポでレコードをカセットテープに録音する、という作業を当たり前のようにしていた。
それが、CD全盛期となると、カセットテープに録音するという手間は省け、小型CDプレーヤーを持ちだすようになった。
とはいっても、CDプレーヤーそのものは、歩きながら聴くと音飛びが激しかったので、どちらかと言えば移動中のカーオーディオで聴いたり、自宅でゆっくりCDを聴く、というのが「音楽を聴く」一つのスタイルだったように思う。

それが大きく変わったのは、i Podが登場したころだろうか?
i Podを作ったアップルのスティーブ。ジョブス氏は、「ソニーのウォークマンのように、音を外えへ持ち出して聴く」ということアイディアとして持っていた、という話は有名だろう。
この「音楽をもって出かける」という、音楽を聴くスタイルを作り上げたのは、ソニーのウォークマンだった。
そのウォークマンにITの技術が加わり、より身軽にミニコンポ等を必要とせずに、もっと手軽に音楽を楽しめるようになったのだ。
その利便性に、より拍車をかけたのがスマホ等からダウンロードというサービスが始まり、サブスクと呼ばれる「定額制」が一般化することで、音楽を聴くスタイルだけではなく、リスナー側にとっても大きな変化が生まれたように感じている。

もちろん、日本の場合は住宅事情という最大の問題がある。
自由に自分の好きな時に音楽を聴きたくても、ご近所に配慮する必要がある。
でなくては「騒音」として、「ご近所迷惑をかけている家」と認定されてしまうからだ。
戸建てが主流であった時代はまだしも、今のように集合住宅が「住まいのスタンダード」のようになると、「音楽ファンの為の防音室があるマンション」が必要となってくるのだが、そのようなマンションは「音楽を演奏する人の為」という注釈付きでなければ、一般の人が出会うような物件ではない。

このような生活状況になればなるほど、スピーカーという音響システムはその性能や技術等とは別に、市場そのものがニッチになってしまう。
一方、イヤフォンの進化により、「Dolby Atoms」のような全方向から音が降り注ぐような聴こえ方ができるようになっている、と言われている。
このような状況になればなるほど、スピーカーに強みを持っていたオンキョー等は、経営が厳しくなってしまったのだろう。
だからと言って、オンキョーが企業として磨きをかけ続けてきた「音響技術」を失ってしまうのは、もったいない。

上述したように、マンションの1室に「自分の趣味のための部屋」が欲しい人たちのための音響システムとして提供できるようなコトもできるかもしれない。
「聴こえ」という点に特化することで、イヤフォンの中でも聴覚障害のある人たちの為の「補聴器」等への技術転用等も考えるコトができるのではないだろうか?
そのような支援が得られることを、願っている。