日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

ITとかAIの時代でも、根底にあるのは「人」

2022-05-24 20:54:44 | マーケティング

先週末から、実家に帰省していた時に感じたコト柄を、拙ブログに書いているのだが、改めて「行政におけるマーケティングの重要性」ということを感じた帰省でもあった。
「行政におけるマーケティングの重要性?」と、思われる方も多いと思う。
日本では「マーケティング=ビジネス(=お金儲け)」という、とらえられ方をされている部分が多いからだ。
確かに、「マーケティング」の中で重要なことの一つは「収益を上げる」という点も含まれている。
しかし「収益を上げる」必要があるのは、企業だけに限ったことではない。
例えば、行政における市民サービス。
税収がキチンと確保されていなければ、市民サービスを提供することができない。
行政における税収は、企業における収益のようなものでもあるのだ。
そのような視点を持って考えたとき、行政であってもマーケティングの発想は、とても重要なのだということが分かると思う。

さて、そのようなことをつらつらと考えるきっかけとなったのは、米子市と地域のバス会社が始めた「1日乗車券」のチラシを見たからだ。
米子市広域公共交通ポータルサイト:Y-MaaS わいわいバス

高齢者社会になり、その中でも鳥取・島根の両県は、他の都道府県よりも高齢化が進んでいる、といわれている。
実際、実家に帰省する度にご近所の方々の高齢化は、目立つ。
高齢化が目立つだけではなく、空き家もチラホラ見受けられる。
いわば「日本の高齢者社会の縮図」のような地域でもあるのだ。
そのような状況を打開するということを目的として、このような政策を打ち出したのだと思われるのだが、果たして「使う人」をどれだけ想定しているのだろうか?という、疑問をザっとチラシを見ただけで感じてしまったのだ。
例えば…
①事前登録を必要としている
②スマホ以外は使えない
③ルート検索等ができない
等があるからだ。

①については、事前登録を必要としているとすれば、利用者は米子市に住んでいる人か、米子市に定期的に用事がある人ということになる。
この情報が全国的に知れ渡っていれば、観光で米子市を訪れる人が事前登録をするだろうが、1回しか使わない1日乗車券の為に事前登録をするだろうか?
②だが、意外に思われるかもしれないのだが「スマホ」そのものを持っていない。あるいは海外仕様の為日本国内で使用できるのか不明、という場合があるのでは?ということなのだ。
確かにスマホは便利なツールだが、そのスマホを使いこなせない人たちは、最初から除外されている、ということになる。
ユニバーサルサービスという点で、どうなのだろう?
③ルート検索等の使い勝手については、まず自分がどこにいてどこへ行きたいのか?という状況を把握する必要がある。
観光客の多くは、「〇〇に行きたい、✕✕へ行ってみたい」という場所はあっても、そこまでのルートを把握しているわけではない。
そのためのナビゲーションだけではなく、いつ自分の行きたい場所へ連れて行ってくれるバスが来るのか?という把握ができなければ、ストレスを感じてしまう。
「使う人の気持ちや行動」に、どれだけ応えられているのだろうか?という、疑問を感じたのだ。

運営の名前に「MaaS」という言葉を使っている通り、新しい交通システムとして運用を考えているということが分かる。
分かるのだが、それが「人」に対してどうなのか?という、視点が無ければ「システム」として効果的なモノではない。
マーケティングにおける「誰を対象に、どうすれば問題が解決できるのか?」という、当たり前の視点があまり感じられないのだ。
ITだ!AIだ!といったところで、それらを使う「人」の姿を見なくては、費用をかけたのに効果が低いシステムということになってしまう。
実際、国が行ってきた様々なIT関連の事業が、利用者が少なく事業が打ち切られてしまう理由も、同じだろう。
だからこそ、行政にもマーケティングの基本となる視点が、必要なのだと思うのだ。