日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

不満をビジネスに買える(変える)

2022-05-26 19:51:13 | ビジネス

今朝、FM番組を聞いていたら、マーケティングに携わる者として「ついに!」という話があった。
それは「不満買取センター」というビジネスモデルが、注目を浴びている、という話だ。
サイトを見るとわかるのだが、「不満」をこのサイトでプレゼンテーションをし、その内容によってポイントが付く、というビジネスモデルだ。
もちろん、このような内容だけで、サイト運営ができるはずがない。
このサイトは「生活者の不満を企業に結び付ける」コトで、収益を上げている(=ビジネスモデル)のだ。

本来であれば、企業のマーケティング担当者が「生活者の不満や問題点」を探し歩くはずなのだが、今の生活者のように多面的で考え方や思考が、多方面にわたっていると、一人の生活者の持っている「不満や問題点」そのものを探る労力というものは、果てどないモノとなってします。
このような場合、「カスタマーセンター」等と協力しあうことで、利用者や生活者の「不満や問題点」を探る、ということになる。

しかし、「カスタマーセンター」に寄せられる内容の多くが、一過的な感情に任せたような不満が多くなると、「生活者の不満や問題点」そのものを見つけにくくなってしまう。
まして今の「カスタマーセンター」は、いわれなき不満をぶちまけられる「心病むような感情労働の場」の一つとなっている。
そのような企業側にとって、リスクとなりかねない問題点を、「買い取る」という方法で、企業へ橋渡しをするというのは、面白い発想なのでは?と、思ったのだ。

「不満買取」といっても、上述したような「カスタマーセンターの担当者が心病む」ような不満の伝え方では、「買取」の対象とはならない。
買取判定を行うのは、人ではなくAIなのだ。
感情に任せた口汚い不満を並べても、「買取対象」とはならない、ということになる。
「不満」ではなく「改善の提案を行う」という、発想が必要となってくるのだ。
言い換えれば「不満を伝える側(=不満を買取ってもらう側)」にも、それなりの理由や根拠となるモノが必要になる。
それだけではなく、「その理由や不満の根拠」から「どうして欲しいのか?」という改善点を伝える必要が出てくる。
いうなれば「改善のプレゼンテーションを行う」という、ことなのだ。
それを判定するのがAIということになれば、自分の不満ばかりとつらつらと述べたところで、AIには響かない。
違う言い方をするなら「AIから共感性を引き出すことはできない」ということになる。

今という時代だからこそ、このようなビジネスモデルが、誕生したのだと思う。
しかも「不満(=問題点)を買取る」という方法は、とても興味深い。
これまで「80%のサイレントコンシューマー(=不満を持った物言わぬ購入者)」を掬い上げ、それを商品やサービスに結び付けよう、という様々な試みはされてきたはずだが、効果的であった!という方法を見つけるコトができないでいた企業は、数多くあるだろう。
それが、「改善」というアプローチで、企業側に提供されるというのは、企業にとって大きなメリットだ。

そのように考えると「不満買取」というビジネスは、「生活者の御用聞き」であり「企業が十分にできなかった新しいワンクッション置いた、生活者とのコミュニケーションツール」ということになるのかもしれない。
このようなビジネスが、低迷する日本経済を変えるきっかけを作っていくのかもしれない。
提案を受けた企業が真剣に「生活者からの改善点に耳を傾ければ」の話だが。