日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

東京オリンピックの談合事件と広告代理店。

2023-03-01 11:54:48 | ビジネス

昨日、東京オリンピックで談合があったとして、公取委が刑事告発をする、という報道があった。
毎日新聞:五輪談合、公取委が刑事告発へ 電通、博報堂など6社と幹部ら7人 

この報道を見て、「談合なんかするから」と思われる方が大多数だろう。
もしかしたら「談合は、均等に仕事を分けるための話し合い」と、嘯いている方もいらっしゃるかもしれない。
というのも、「談合」という公共事業における契約について、均等に恨みっこなしで仕事を割り当てる事、という認識が今でも土木・建築業などの中にはあるのでは?という気がしているからだ。
その延長線で、広告代理店が一枚かんでいたのでは?という、認識の方もいらっしゃるのでは?と、想像しているからだ。

談合そのものは、法律では禁じられていることなので、行うこと自体が問題である、ということには変わりない。
それよりも今回注目すべきは、電通や博報堂といった大手広告代理店が加わっていた、ということだと思う。
ご存じの方も多いと思うのだが、今やスポーツイベントに広告代理店が関係することは、当たり前となっている。
おそらくコトの始まりは、1984年のロサンゼルスオリンピックから始まった「オリンピックの商業主義」からの関係なのだと考えている。
それ以前のオリンピックは、開催都市に負担がかかるばかりでなかなか開催地として手を挙げる都市がなく、開催地選びに苦労をしていたという。
そこで、オフィシャルサプライヤーなどを募集し、サプライヤーとなっが企業に対しては、オリンピック会場での広告掲示、オリンピックのロゴを使っての広告などができるようにした。
1984年のロサンゼルスオリンピック以降のオリンピックでは、飲料水メーカーはコカ・コーラ、クレジットカードはVISAカード等と決まり現在に至っているはずだ。
その結果、オリンピック開催が開催都市に大きな利益をもたらす、というスポーツビジネスのモデルが出来上がったことになる。

ここで気づかれたと思うのだが、広告代理店がオリンピックとかかわるようになったのは、このような「オリンピックの商業化」が背景にある。
スポーツイベントとしては世界規模であること、IOCと東京オリンピック組織委員会と、広告代理店契約は別であることなどから、複数の広告代理店がかかわる事になった、ということなのだろう。

IOCやオリンピック組織委員会と懇意な関係になれば、当然そこには様々な「利権」が生じてくる。
その利権を求め、様々な企業が寄ってくる。
その寄ってきた企業の橋渡しと整理を広告代理店が行っていた、というのが今回の構図なのではないだろうか?

もう一つ感じる事は、広告代理店としての事業内容が変わりつつあるのでは?という点だ。
今や「広告」そのものが、新聞やテレビなどのマスメディアだけではなく、YouTubeやSNSなど「情報を発信する媒体」が多様化している。
「媒体の多様化」は、大手広告代理店にとって決してプラスとなるビジネス環境ではないのでは?ということなのだ。
Webコンテンツを作り慣れている人であれば、大手広告代理店ほどの費用を掛けずともある広告そのものを作る、ということはできる。
それまで「広告を出す」ということを考えられなかったような地方企業であっても、YouTubeやSNSでは全国に情報発信ができる。
場合によっては、海外にまでその情報が届く、という時代になってきている。
とすれば、「大手広告代理店」としての社会的意味合いが変わり始めている、ということにもなる。

そのようなビジネス環境の変化を考えると、大手広告代理店だからこそ東京オリンピックのような世界規模のイベントに積極的にかかわり、発生する様々な「利益・利権」を手に収めたかったのでは?
ビジネス環境の変化がもたらした事件のような気もしている。