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アートと価値。地域活性化に結び付ける行政力の時代

2023-03-19 12:13:54 | アラカルト

朝日新聞のWebサイトに、「やはりな~」と思う記事があった。
朝日新聞:「ただの箱に3億円も?」鳥取県初の県立美術館にウォーホール、賛否の声 

確かに、アンディ・ウォーホールを知らない人にとっては、「ただの箱」にしか見えないだろう。
しかも、「古びたただの箱」という印象だと思う。
それが、アンディ・ウォーホールのファンとなれば「鳥取県にウォーホールの作品が常設で観られるの!」と、喜んでいるだろう。
美術品の中でも、いわゆる現代アート、ポップアートと呼ばれる作家や作品は、その価値をどう判断するのか?という点では、なかなか難しいのでは?と、感じている。
それを象徴するのが、ウォーホールやキース・ヘリング、バスキアなどだろう。
最近では、バンクシーなどもそうだろう。
日本の芸術家であれば、草間彌生さんなどかもしれない。
中には、「キース・ヘリングと街中の落書きとどう違うのか?」と感じている方もいらっしゃるかもしれない。
というのは、ご存じの方も多いと思うのだが、キース・ヘリング自身が認められたのが「ストリートアート」だったからだ。

いつの時代も同じだと思うのだが、アート作品などは著名な評論家や批評家が、「素晴らしい作品」と発したとたんに「芸術作品」となる場合が多い。
もしくは、著名な画商が高値を付けた時だろうか?
第三者による「お墨付き」がある事で、芸術作品の価値が大きく変わってしまう、と言っても過言ではないと思っている。

そして今回の「ブリコの箱」という作品だが、ウォーホールの作品としては珍しい、立体物の作品だ。
ウォーホールと言えば、スープ缶やマリリンモンローなどのシルクスクリーンによる作品が有名なだけではなく、複製を含め数多く紹介されているウォーホール作品だからだ。
その中で言えば「ブリコの箱」は、作品的には珍しいということになる。
だからこそ、「たかが箱、それでもウォーホールの箱」ということで、それなりの価値となったのでは?と、想像している。

個人的には、「モダンアート、現代アート」に接する機会が少ない地方だからこそ、このような常設展示があって欲しい、と思っている。
というのも、数多くの「モダンアート、現代アート」の作品は都市部に集中し、地方で見られる機会が圧倒的に少ないからだ。
地方にもモダンアートや現代アートのファンはいるだろうし、直接作品を見たい、という気持ちは強いと思う。
その点では、とても貴重な機会を県民に与える事になるのでは?という、気がしている。

もう一つは、この「ブリコの箱」を常設展示するコトで、他の作品も多くの人に見てもらえる機会となるのでは?という点だ。
地方の公立美術館などの多くの常設展示は、地元の作家作品が多く(という印象がある)、集客力が弱いと感じている。
公立美術館と言えども、それなりの収益を上げなくてはならない時代になっていることを考えれば、集客のために話題となる作品展示もまた、必要なのでは?ということなのだ。

公立施設などでよく議論されるのは、「〇〇億円の費用をかけ、作品購入をした」という、購入額ばかりに話題が集中する。
むしろ重要なのは、作品を購入した後、その公立施設がどれだけ多くの人を惹きつけ、常時入館者を増やすのか?という点ではないだろうか?
乱暴な言い方だが「作品購入=投資」と考え、投資に対して利益を上げるようなコトを考える時代になっている、ということなのだ。
公立施設だから、何もしなくても良い、という時代ではない。
市民からの税金を使っているのであれば、使った税金に相当するような「利益」を、行政に還元するということなのだ。
「行政が金儲けをする」のではなく、「行政も運営資金を自ら調達する」という時代になってきている、という時代になってきており、それを「地域経済の活性化」に結ぶ付けるような政策が行政にも求められる時代になってきている、ということなのだと思う。