日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

WellbingとHappiness

2023-03-26 22:00:32 | ビジネス

最近、新聞のWebサイトなどを見て、頻繁に目にする言葉がある。
その一つが「Welling」だ。
日本語にすると「幸福」という意味になる。

「幸福」という英語で思い浮かべるのは「Happiness」という方も多くいらっしゃるのでは?
この「Wellbing」と「Happiness」については、随分前から「これからの社会に求められるもの」として、言われてきた言葉のような印象を持っている。
私が初めて「Wellbing」という言葉をビジネス雑誌で目にしたのは、20年ほど前だったと思う。
当時のネスレ日本支社の社長となられて方が、「これからのネスレが目指すのは、Wellbingである」と、あるビジネス誌のインタビューで応えられていたからだ。
その時のインタビュー内容から「よりよく生きる」という、生き方としてのビジョンのようなものを指しているのだな~と、受け止めていた。

その後、同じビジネス誌で「幸福論」という特集が組まれた。
その時に使われていたのが「Happiness」だったのだ。
特集の内容から「心の充実」というニュアンスなのでは?と、理解した。

同じ「幸福や幸せ」という意味の英語ではあるが、そこに含まれている意味や意図は微妙に違う。
「wellbing」には「生き方」のようなニュアンスがあるのに対して、「Happiness」には「心の充足感」という意味を含んでいる。
おそらく、日々の生活で充実をしていると感じるのは、この2つに対する満足度が高い、と感じられた時なのではないだろうか?
もちろん、個人個人の生活に対する価値観や現実的問題というモノがあるため、全てにおいて満足度が高い生活をしている、という生活者はほとんどいないのではないだろうか?

ただ、生活者が求める「より良い生き方とは何か?」ということを知る事は、ビジネスに限らず行政であっても必要なことだろう。
何故なら、その上に「心の充足感」というモノが加わるからだ。
しかも、この2つは時代の価値観によって、大きく変わってしまう。
例えば今の日本について考えれば、まず必要なことは「経済的な安定」を求める人は多いのではないだろうか?
かつてのような「大企業に定年まで勤めあげれば、安定した年金生活ができる」という時代ではない。
今現在の状況は、例え正規雇用であっても、日本の場合30年近く、実質賃金が減っているという指摘がされている。
そしてこの30年間で増えたのは「非正規雇用者」であり、「非正規雇用者が増える」ということは、経済的不安定な人達が増えたということでもあった。

この現実に対して、企業が「Wellbing」だの「Happiness」を提供する、と広告で謳ったとしても生活者の心には響かない。
その意味では、広告そのものがとても打ちにくい時代だと感じているし、企業が小手先のモデルチェンジを新製品として謳ったとしても、生活者に伝わらないという気がしている。
広告業そのものも、一つの岐路に立たされているというのが今なのではないだろうか。
と同時に、この2つの言葉の中に「今の生活者が抱えている本質的問題」が、隠れているような気がしている。