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歌舞伎とジャニーズ

2023-08-23 19:40:28 | アラカルト

タイトルを見て、「ジャニーズと歌舞伎を一緒にするな!」と言われそうな気がするのだが、今年の春ごろから話題となっている故ジャニー喜多川氏に対する小児性愛的な問題は、収まることなく続いている。
ご存じの方も多いと思うのだが、この問題の火付け役となったのはBBC制作のドキュメンタリーだった。
BBCテレビ:J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル 

この番組が全世界で放送された直後は、日本では今ほど話題になってはいなかったような気がする。
それが、現在のように連日何かしらのカタチで報道されるようになったのは、被害当事者である男性が海外記者クラブで話したからだろう。
BBCが放送した頃は、日本の大手メディアの多くはいわゆる「スルー」状態だったような印象を持っているからだ。
それが、海外記者クラブでの記者会見という場が設けられたことで、「実は被害にあっていたのは彼だけではない」と、実名公表をする男性が次々と現れ、1か月ほど前(だったと思う)には、70年前から同様の被害を受けていたという、著名な作曲家の息子さんまで登場し、ジャニー喜多川氏の「小児性愛」の傾向は若いころからであった、ということまで判明してしまった。

一連の報道を見ながら、「日本のメディアがスルーしてきたわけ」を考えるようになった。
その理由の一つが「歌舞伎」の歴史の中にあるのでは?ということに気づいたのだ。

高校の日本史などでは。「歌舞伎の祖」と言われているのは、出雲大社の巫女であった「出雲阿国」だと習ったはずだ。
彼女が、出雲の地を離れ京都の三条河原で、男物の着物を着、歌い踊ったのが始まりだと言われている。
その後、出雲阿国を真似るように、女性だけの歌舞集団「女歌舞伎」が登場する。
ところが、時の権力者が「風紀を乱す」という理由で、「女歌舞伎」は無くなってしまう。
その後登場したのが、美少年たちで結成された「稚児歌舞伎」だ。
その「稚児歌舞伎」もまた、「風紀を乱す」という理由で無くなることとなる。
その結果、現在の「野郎歌舞伎」となったわけである。
和楽:歌舞伎とは?なぜ男性だけが演じるの?歴史をわかりやすく紹介 

他にも、時の権力者が「小姓」と呼ばれる美少年を侍らせる、ということも実際にはあった。
有名な「森蘭丸」等は、小姓の一人だと言われている。
そしてこの傾向は、日本に限ったことではない。
時折欧米の修道院でも修道士が見習いの少年を性的にもてあそぶ、という事件が後を絶たない。

だからと言って許される問題ではないのだが、歴史的なことを考えた時、日本のメディアがジャニー喜多川氏の事件をスルーしてきた背景というモノが、見えてくるような気がしたからだ。
と同時に、現在のメディアの取り上げ方にも疑問を感じている。
何故なら、被害にあった当時の少年たちとジャニー喜多川氏との「力関係」に言及することが無いからだ。
あくまでも個人的な考えだが、この一連の関係は「ジャニー喜多川という、芸能界で権力を持つ男性が、その権力にモノを言わせ少年たちを屈服させた」という印象を持っているからだ。
言い換えれば、「ジャニー喜多川氏による、少年たちに対するパワハラ」のカタチが「小児性愛」であった、と考えた方が良いのでは?ということなのだ。
だからこそ、現在でもジャニーズ事務所に所属しているタレントや関係者を含め、歯切れの悪い言葉しか出てこないのではないだろうか?
小児性愛を良しとしているのではなく、その行動を許すことができた立場であったからこそ、実行できたのでは?ということなのだ。

問題の本質部分とその付属となる問題を一緒にするコトで、「社会的問題・事件」ではなく「ゴシップ」になってしまうのでは?と、懸念している。