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女性マーケターから見た日々の出来事

オーバーツーリズムとインバウンド政策

2023-08-29 18:05:35 | ビジネス

中国から日本への観光客が、再び戻り始めたようだ。 
Reuters:焦点 爆買いは過去の話か、中国団体観光客解禁「コト消費」に商機 

改めて書く必要もないと思うのだが、「コト消費」とは、いわゆる「体験型消費」だ。
ディズニーリゾートやUSJに行く、ということではなく、日本文化を体験することで発生する「消費」のことだ。

今まで「インバウンド=爆買い」という意味で、使われるコトが多かったが「コロナ禍」の2年ほど前から、この「コト消費(=体験型)ツーリズム」が、増え始めていた。
目だって多かったのは、やはり京都だろう。
清水寺周辺に行くと、季節を問わず着物を着た中国を含むアジアからの観光客の姿を数多く見かけた。
何故、観光客だと分かるのか?と言えば、季節を問わず薄い化繊の着物を着ているからだ。
日本の女性であれば、それなりの質の着物を着ているだろうし、まして場所は京都だ。
着る着物の柄一つとってみても、四季折々の季節感を重視し柄の着物を、季節ごとに合わせて着ている。
季節感を無視したような素材に柄を見れば、やはり「観光客相手の着物レンタル」だと、わかってしまうのは仕方のないことかもしれない。

このようなサービスそのものが悪い、とは言い切れない。
「日本の文化を知ってもらう」という、きっかけづくりとなれば、その後の日本の観光産業にもプラスになるのでは?と、考えられるからだ。
ただ問題なのは、「オーバーツーリズム」と呼ばれる、「観光害」が各地で起きている、という点だろう。

例えば今年の夏(まだ夏は終わってはいないが)、富士登山で問題になった登山者の中には、海外からの観光客だった。
服装がカジュアルすぎるコト。登山靴ではなくサンダルで登山をしようとしている、など「富士登山」を丘陵地の散歩気分で訪れる、海外からの観光客が急増した、ということだった。
「富士山」の世界遺産登録時、ユネスコからは「富士山だけでは、世界遺産登録は難しい」と言われ、「富士山を中心とした山岳信仰」という文化的な要素を含めたコトで、世界遺産に登録されたという記憶がある。

しかしながら、新幹線の車窓から富士山が見えると、海外から来たと思しき人達は、一斉にスマホやビデオカメラを向け撮影を始める。
「山岳信仰」等の意味を含ませる必要がないほど、海外からの人たちにとっても「富士山」という山には、魅力があるのだと思う。
とすれば、当然のように「登ってみたい!」という気持ちになるのも、理解できる。
しかし、いくら警告的な案内をしても、解決とはならなかった、というのが今年の「富士登山」だったのではないだろうか?

このような、地元の人たちにとって「迷惑」と感じる「観光」のことを「オーバーツーリズム」というのだが、このような「オーバーツーリズム」の問題は決して、日本に限ったコトではないようだ。
朝日新聞:700人の村に押し寄せる観光客「生活空間を守る」住民が抗議 

記事の下にある「関連記事」の見出しを見るだけでも、このような問題は日本に限ったコトではない、ということが分かる。
人が少ない村に、観光客が気軽に行けるようになったのは「交通網の発達」と「経済的豊かさ」によるものだ。
「交通網の発達」が十分にされたとしても、観光に行く人達がいなくては「オーバーツーリズム」にはならない。
この二つの要素があって、初めて「観光をしたい」という、気持ちに人はなるのだ。

今の日本は、経済的落ち込みが続き、有名観光地もあり、そのような観光地へのアクセスも十分に整っている。
だからこそ、観光地のオーバーツーリズムが、問題になっているのだ。
日本政府は、インバウンドの拡大と観光客による収益増を考えているようだが、観光地に生活する人達のことは全く考えていないだろう。
まして「インバウンド~爆買い」だと信じ込んでいれば、現在の「オーバーツーリズム」の実態を、把握できていない可能性もある。

上述した内容から感が無くてはならないのは、個々の自治体が「自分たちの考えるオーバーツーリズムにならない観光誘致」ということになるような気がする。
そのアイディアと対策がとれる自治体が、どれほどあるのだろうか?と、心配になる。