今月24日から始まった、福島第一原子力発電所事故で発生した「処理水」の海洋放出。
このことに対して、中国側が「日本からの水産物の輸入禁止」を発表した。
海洋放出に関しては、国際原子力機構(「IAEA」)が認めていることなので、放出そのものは国際ルールにのっとったものである、というのが日本のスタンスだ。
それに対して、「食の安全が確認できない」として、日本からの水産物の輸入禁止を決めたのが、中国および香港政府ということになる。
ここまでの話は、外交によって問題解決を図らなくてはならないコトだと思うのだが、中国側の「日本からの水産物輸入禁止理由」が、中国国内で独り歩きをし、結果として週明けである今日から、日本あてに中国からの嫌がらせ電話がされている、という。
「国際電話を使ってまで…」とは思うのだが、インターネット回線を使えば思うほどの通信料金はかからないのだろう。
そもそも、ネットを利用したプリペイドカード詐欺などの多くは、中国から発信されていると言われている。
ネットの世界では、中国という国は隣国どころか近隣住民のような距離なのかもしれない。
そのような通信環境ということもあり、中国から嫌がらせ電話をする人達は「日本に電話をする」という心理的ハードルが低いのかもしれない。
と同時に、中国側の「ガス抜き」的意味合いもあるのでは?という、気がしている。
というのも、中国の不動産大手である恒大集団が、ニューヨークで破産申請をしたのは、つい最近のコトだ。
しかし、中国の不動産バブルは10年以上前に破綻しており、その結果として内情としての中国経済を危ぶむ声は、随分前からあった。
表向きは、順調な経済状況を言いつつ、その実態は違っていた、ということになる。
それだけではなく、先日エントリしたように、「EVバブル」も弾けてしまった、という見方もある。
実態として、決して中国経済が順調ではない、ということは国際市場の中では「暗黙の了解」のようになっているのでは、無いだろうか?
とすれば、当然中国国内には国民の中特に、都市部の経済的に余裕があった層に経済的不満がたまっていてもおかしくはないだろう。
良くも悪くも日本人は苦渋に耐える傾向があるのに対して、中国にはそのような耐性があるとは思えない。
独裁的な体制を整えつつある習近平氏に対して、歯向かうようなこともできない不満のようなモノも、中国の生活者に溜まりつつあるのかもしれない。
そこへ「福島第一原子力発電所事故」の処理で発生した「放射能を含んだ処理水の海洋放出」は、中国政府にとっても中国の生活者にとっても、恰好の「日頃の不満に対する、ガス抜き」の対象となってしまったのではないだろうか?
それに拍車をかけるように、中国外務省は「中国からの嫌がらせ電話」の実態を把握していない、とコメントを出してしまった。
Yahoo!トピックス(FNNプライムオンライン):【処理水放出】中国からの迷惑電話中国外務省、定例記者会見で「状況を把握していない」
元々言論統制の厳しい中国において、中国政府側がこのような発言をするコトで、「嫌がらせ電話をする」という行為にお墨付きを与えてしまっているようなモノなのだ。
これでは、いくら日本側が「遺憾である」と言ったところで、効果があるとは思えない。
とすれば、日本「処理水の海洋放出の正当性と中国側からの嫌がらせ」を、世界に向け発信するしかないだろう。
確かに中国は、経済パートナーとして重要な国の一つであるとは思うのだが、公正で平等な経済パートナーとして付き合う為には、時には強硬な態度も必要なのでは?と、思うのだ。