日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

異質の文化を持つ企業の事業引継ぎ

2017-08-07 13:48:43 | ビジネス

先日友人が、Facebookにとても素敵な施設の写真を、投稿していた。
どのような施設なのか?と思い、調べてみると「二期倶楽部」という、施設だった。
那須高原にある広大で自然豊かな敷地に、離れにように点在する40室余りの宿泊施設、レストランやスパ施設などがある、というぜいたくな「リゾート施設」だ。
何でも、那須の御用邸にも近いことから皇太子ご家族などもレストランをご利用される、という「高級」という言葉が似合いそうな施設でもあるようだ。

サイトを見ると、この秋で営業を終了するとある。
二期倶楽部公式HP:二期倶楽部営業終了のご挨拶と新プロジェクトについて

ネットなどではとても評判が良く、「世界のホテル100」にも選ばれているというリゾートホテル。
しかも開業から30年余りたち、国内外から評価もされているというのに、なぜ?という、疑問が起きた。
どうやら、営業そのものの問題というよりも、親会社で起きたとその親会社との考えの違い、親会社側からは経営に対する不満などがあったようだ。
裁判にまで発展したようだが、結局「二期倶楽部」の運営は違う企業が引き継ぎ、「二期倶楽部」自体は新しい施設を創り、再スタートをするということになったようだ。

ここで気になったのは、事業を引き継ぐ企業はどこなのか?という点だ。
名前が挙がっているが、「星野リゾート」だ。
本当のところは、分からないのだが「星野リゾート」もまた、日本のリゾートホテルとして、有名な企業であることには変わりないだろう。

ただ「星野リゾート」と「二期倶楽部」の、「リゾート」に対する考えが違うような気がしている。
「星野リゾート」が全国各地に、ホテルを展開しているのはご存じの方も多いと思うのだが、その展開をしているホテルの多くは、経営不振などに陥った旅館やホテルを買収し、「星野リゾート」が運営をしている。
リゾートホテルという事業というよりも、投資事業のような側面もあるような印象を持っている。

「星野リゾート」という名前に変わったコトで、それまでのイメージを一新し、新しい顧客の獲得に成功しているのだから、あれこれ言われる筋合いのものではないが、それまで「二期倶楽部」という理ぞとホテルが創り上げてきた「文化」は、どうなってしまうのだろう?と、思ったのだ。
というのも、「二期倶楽部」の実質的経営・運営をしている(まだ営業中なので、現在形)北山ひとみ氏は、「自然と文化」をキーワードにしてきたからだ。
単なる「自然を感じる宿泊施設」ではなく、芸術や文化を通して「ヒューマンサイズのリゾート文化の創造」という場として「二期倶楽部」を創ってきたように思えるからだ。

利用者側に、そのような「文化や芸術の理解を求める」ようなコトはないとはいえ、そのような企業文化に共感できる人達がフロントランナーとなり、「二期倶楽部」というブランドを創り、ある種のステータスを創ってきたのでは?と、考えている。
とすると、投資事業に軸足を置きつつある「星野リゾート」とは、どこか相容れないモノが生まれてくるのでは?という、気がしている。

明快な企業文化を持っている企業の買収、事業継承というのは、過去の利用者から納得してもらい、認めてもらう必要がある。
果たして「二期倶楽部」の事業を引き継ぐ企業は、その利用者の期待に応えられるのだろうか?




日本でも「ロック(ミュージック)は、中高年の音楽」になってしまったのか?

2017-08-05 20:36:55 | ライフスタイル

Yahoo!のトピックスに、「フジロック(フェスティバル)」についての記事が、取り上げられていた。
日刊ゲンダイデジタル:若者が敬遠か フジロックは”おひとりさま”中高年の祭典に

「フジロック」という名前だが、現実には苗場(スキー場)で行われる、日本最大級の音楽フェスティバル。
出演ミュージシャンも多く、まさに「(夏の)音楽の祭典」というイメージを持っている。
ただ、最近の出演するミュージシャンのリストを見ると、ロックという音楽にこだわってはいないようだ。
逆に、いわゆるJ-POPと呼ばれる日本のミュージシャン、しかもテレビなどにあまり登場しないミュージシャンの名前が多いように思える。
テレビなどに出演しないからと言って、人気ミュージシャンではない、とは言い切れない。
ネット配信などの普及・一般化により、マスメディアに登場しなくても、コアなファンを獲得しているミュージシャンは数多くいるはずだ。
そのようなファンがいるからこそ「フジロック」というステージに、立つことができるのだ。

その「フジロック」の観客の年齢層が、上がっているというのが、今回の記事だ。
確かに苗場までの交通費、宿泊代、滞在中の食事に当然の事ながら開催期間中のチケット代が加わる。
「フジロック」に行くだけで、軽く10万円くらい飛んでしまうかもしれない。
そう考えると、経済的余裕がある年齢層が観客の中心となってしまうのは、仕方のないコトかもしれない。
以前、拙ブログでも「アメリカでもロックは、中高年の音楽になりつつある」という内容のエントリをしたことがある。
チケット代の高騰などを考えると、必然的に経済的余裕のある世代しかコンサートなどに行くコトができなくなってしまっている、という現実はアメリカだけに限ったコトではない、ということだろう。

一方夏真っ盛りの今頃は、全国各地で「野外フェス」が行われている。
こちらはJ-POPのミュージシャンが主体で、都市部に近い場所で開催されたりすることが多いようだ。
当然、観客の年齢層も「フジロック」よりも若い。
そしてこの「野外フェス」が、新人ミュージシャンのメジャーデビューの場ともなっている、と聞く。
CDが売れない時代、「野外フェス」が、ミュージシャンにとっての稼ぎ場なのだ。
しかも不特定多数のファンが集まる場所だからこそ、有名ミュージシャンに交じって新人ミュージシャンを売り出す機会ともなってしまうのは、当然の事かもしれない。
それだけではなく、このような「野外フェス」やライブ会場で販売される、様々なミュージシャングッズもまた、大きな利益を生み出すようになっているのだ。

固定的なファンがいる中高齢(どころか老齢)のロックミュージシャンにとって、日本の市場は安定的な稼ぎ場所となっているのが「フジロック」だとすれば、J-POPの若手ミュージシャンにとって、不特定多数の人達にお披露目をする場が「野外フェス」なのかもしれない。


「物語のある」ものづくり

2017-08-03 21:11:41 | マーケティング

Yahoo!のトピックスバナー広告に、ホンダのNシリーズが表示されるようになった。
ご存じの通り、ホンダのNシリーズというのは、現在ホンダが販売している「軽自動車」のことだ。
その「Nシリーズを一新します」という、告知広告が表示されているのだ。

その告知広告の動画(=CM)が、どことなくこれまでのホンダが創ってきた「クルマづくり」のメッセージのように思えて、気になりサイトへアクセスしてみた。
サイトには、「Nヒストリー」というコンテンツがあり、まさに「ホンダのクルマづくり」という「物語」があった。
ホンダ:Nヒストリー

トップに置かれている真っ赤なクルマは、ホンダが初めて四輪を手掛け、市場に出した「N360」だ。
今となっては、「軽自動車の排気量が360㏄であった」ということすら、忘れてしまうくらい昔の話になるのだが、「N360」の360という数字は、発売当時の軽自動車の排気量を指している。
そしてこの「軽自動車」というクルマ文化は、日本独自で発展をし現在ではアジア全体に広がってきている。
ご存じの通り、スズキ自動車がインドで製造販売をしている車も「軽自動車」が中心だ。
もちろん、欧州のカーデザイナーの中には「日本の軽自動車(欧州では「ミニマムカー」と呼ばれるようだ)」は、「経済的で、欧州の狭い石畳の道も走ることができる」と、評価する方もいらっしゃるようだ。
乗り物ニュース:「カウンタック」を手がけた名デザイナーも愛用 日本の軽カー最強説

おそらく日本で「軽自動車」という、独特のクルマ文化が生まれたのは、Nヒストリーに書かれているような事情があったからだろう。
「経済性と、広い公道が少なかった」ことが、独特のクルマ文化を創り上げ、自動車メーカー各社それぞれの「物語」を紡いでいったのでは?と、思っている。

ホンダの場合、このような過去のクルマづくりを物語の中心に置いたCMを数年前に放映している。
残念ながら、現在では見ることができないのだが、放映した年のACC「CMフェスティバル」で最高賞・総務大臣賞を受賞している。
Hondaニュースリリース:企業広告「負けるもんか」がACC CMフェスティバルで「総務大臣賞/ACCグランプリ」受賞

このCMを見た時も、ホンダという企業の「ものづくり」に対する思いや企業姿勢を感じたのだが、と同時に「物語づくり」が上手い!とも感じた。

と同時に、「物語があるものづくり」というのは、ある種の強みを持っているのでは?と感じている。
それは「ブランド力」と重なる部分でもあるのだが、購入者とクルマの間でつくられていく「物語」であり、それが「親しみ」や「信頼」へと繋がっているのではないだろうか?
「物語」を通して、企業メッセージだけではなく、多くの生活者に共感を与える、それが「ブランド力づくり」にもなっている、と感じるホンダの広告だ。


今だに熱狂するトランプ支持者の姿から学ぶべきこと

2017-08-01 12:36:18 | ビジネス

昨日の朝日新聞の朝刊に、米国・トランプ大統領の記事が1面と2面に掲載されていた。
朝日新聞:トランプ王国、冷めぬ熱狂 集会「ヒーローの凱旋だ」
     トランプ勝利「象徴の地」、さびついたままの日常

ご存じの通り、トランプ氏の支持率は超が付くほどの低空飛行が続いている。
就任1年目からこれほど低い支持率の大統領は、過去にはいなかった、とまで言われている。
しかし、トランプ氏を熱狂的に支持する人達は、今だにいる。
その人達の多くが、かつてアメリカ経済を支え、今は忘れ去られた地域「ラストベルト(=さび付いた工業地帯)」で生活をしている人たちだ。

確かに、トランプ氏の支持者の多くが「白人・低所得者」ということは、以前から言われてきたことだ。
記事を読んで驚くことは、「ラストベルト」と呼ばれる地域の人たちの多くが、ドラッグ中毒や自殺によって30代半ば~40代で亡くなっている、という点だ。
経済的問題という背景も十分あるとは思うのだが、その実態から生活者自身の「荒んだ暮らし」が見えてくるような気がするのだ。

と同時に感じることは、彼らの多くが「かつての栄光の時代」から、「労働思考」がまったく変わっていない、という点だ。
「あの頃は良かった・・・」と、懐かしんでいるのではない。
「あの頃と同じような労働と暮らしがしたい」と、望んでいるように思えるのだ。
鉄鋼業や石炭などによる火力発電に携わっていた人が、30年、40年前と同じ労働をすることで、生活を維持できると真剣に思っているような節がある。
これほど、IT化が進みAIの時代がすぐ近くに来ているにもかかわらず、その労働思考が変わっていないのでは?と、感じるのだ。

これは、アメリカの「ラストベルト」と呼ばれる地域の人たちに限ったことなのだろうか?
本来であれば、時代の変化と共に「仕事や労働に対しての意識や思考」が、変わっていく必要がある。
かつて、人の手で行われていた組み立て作業が、オートメーション化によって人の手が必要では無くなり、働く人はそれまでとは違う知識やスキル、技能を習得する必要になった。
時代の変化と共に、企業側は新しい知識やスキル、技能を積極的に習得するよう、労働者側に働きかける必要があるだろうし、労働者側も積極的に習得する努力が求められるはずだ。
場合によっては「働き方」そのものを、見直す必要があるかもしれない。

まさに今の日本が抱える問題の一つが、その「働き方」なのではないだろうか?
そのための回答は、簡単に導きだされるものだとは思わない。
ただ、「働き方を考えつづける」ことが、大切なのでは?と、この記事の熱狂的トランプ支持者は教えているような気がするのだ。