11日(木・祝)は早暁5時30分に起きて、中央バスの営業所へ向かう。6時00分発の「高速あさひかわ号」で札幌へ向かうためである。今回の旅行ではフリー切符の類を用意していないので、現地で安くて効率のいい切符の購入を考える必要がある。今回の行程は旭川→札幌→深川→JRバス深名線経由で名寄へ→旭川(宿泊のみ)→余市→小樽→新千歳空港 の予定である。旭川←→札幌の特急列車自由席が利用できる「Sきっぷ」4,940円というのがあるが、復路の札幌→旭川で、深川にて途中下車するのがどうにも悔しい。
そこでとりあえず、2,000円と安価な高速バスを利用することにしたのであった。しかしこれが大悪手だったと気付くのは、12日(金)の午後7時40分ごろになる。
まだ外は暗いが、買物公園の氷像前ではガードマンが警備している。この通りでは先日、市民が造った雪だるま49体が壊される事件が起きた。こうした事件が再発することのないよう、人々が寝静まっている間にも、警備は続けられているのだ。
高速バス「あさひかわ号」は定刻6時00分に旭川駅前バスターミナルを発車。6時の出発ということもあって、さすがに乗車人数は少なかった。
高速バスのよいところは座席が大きいことだ。さらにバスによっては音楽が聴けたりテレビが観られたり、インスタントコーヒーが飲めたりする。あさひかわ号はテレビを視聴できるのみであった。とりあえずヘッドホンを付けたが、ほとんど耳に入っていなかった。なにしろ昨晩は、明け方に意識がなくなった記憶があるだけで、ほとんど眠っていない。車内で睡眠をかせぐしかないのだ。電車だと横に誰が座るか分からないので若干の緊張感を要するが、高速バスならその心配はまずない。どんな乗り物でも一長一短がある。
定刻を2分過ぎて、8時22分、バスは札幌駅前バスターミナルに着いた。その足で駅付近にあるネットカフェへ向かう。ブログの更新をするためである。ブログを書くようになってから、旅先での過ごし方が変わってきた。観光の時間をブログの記述に充てるようになったのだ。これでは本末転倒だが、まあ書ける間は書こうと思っている。
朝だから「モーニングパック」があるはずだが、女店員さんは「モーニングは…」と口ごもるだけで、ふつうに入店伝票を寄越す。こういう応対は困る。ちゃんと説明してくれないと分からない。
3時間も店内でだらだらし、会計。「3時間パック」と記されていて、1,100円も取られた。
いよいよ本日のメインである「さっぽろ雪まつり」会場の札幌大通りへ向かう。6丁目だか7丁目だかに実行本部があり、そこでパンフレットをもらう。さっぽろ雪まつりも旭川冬まつりと同じく、雪像の鑑賞と同時にイベントを楽しみたい。最終日はミスさっぽろと雪の女王(4月1日から「ミスさっぽろ」となる)が出演するフィナーレが感動的だ。今年は「ミスさっぽろ雪上おわかれセレモニー」と題して、午後8時30分から20分間行われる。昔はこのセレモニーを中心とする1時間の盛大なイベントだったものだが、だんだん規模が縮小し、最近ではセレモニーをやらない年さえあった。
ほかのイベントで目を惹くのは、陸上自衛隊第11個師団音楽隊による「雪まつりコンサート」で、2時から行われる。数年前までは、自衛隊敷地内に真駒内会場があり、ここでの同音楽隊による演奏が楽しみだった。第2会場が別の場所に移ってからは拝聴する機会もなかったが、今年は久しぶりに聴ける。このふたつを軸にして、この日の予定を頭の中で組む。
大通会場に着き、とりあえず12丁目会場まで、早足で観て回る。会場は反時計周りの一方通行だ。だから歩きやすいはずなのだが、この日は最終日のせいか観光客でごった返し、思うように前へ進めない。
12丁目までくる。ここで100人中95人が、そのままぐるりと円を描いて引き返す。
もったいない、と言うしかない。そのすぐ目の前に札幌市資料館があり、無料で入館できるのだ。中には市民制作の絵画や工芸品などが部屋ごとに飾られ、大部屋ではジャズコンサートなども行われる。大通会場でジュースの試飲などがあると行列ができるのに、同じ無料でもこちらは少人数である。もっともパンフレットには資料館の記載はないから、観光客がUターンするのは無理もない。
資料館に入館し、2階へ向かう。札幌在住(だと思う)のフォトグラファー(だと思う)が味わい深い写真を展示している。ここ数年出展していて、私は早速入る。そのとたん、
「あっ、来てくださったんですねー」
と言われる。
藤田麻衣子女流1級と八嶋智人を足して2で割ったような、人なつこい笑顔の女性だ。
「週末の6、7日にいらっしゃらなかったから、今年はいらっしゃらないのかと思いましたー」
彼女が快活に話を続ける。
「いえいえ、今年は10日の休みが取れたので、最終日に来ることにしました」
「ありがとうございますぅ。ここで写真展を開かせてもらって、もう4回目になるんですよ」
「ああそうですか。じゃあボクは4回とも訪れていることになりますね」
「でも去年は忙しそうで、すぐお帰りになりましたよ」
「そうでしたか? 昨年は2日間しか日程がなかったからなぁ…」
私は極度の人見知りなので、知己がいても自分からは声を掛けない。だからこうして相手から声を掛けてもらえると、ありがたい。
彼女の作品(写真)の唯一にして最大の特徴は、どこにでもある雑草や花などを、独特の視点で切り取り、作品に昇華させているところにある。将棋と同じで、なんでもないところから手を作る、という感じだ。今年も気に入ったポストカードを買うと、おまけをくれた。
部屋を出て奥へ向かうと、陸上自衛隊北部方面隊の美術展がある。真駒内会場では定番の展示だったが、ここも真駒内会場の閉鎖を受けて以後、鑑賞する機会がなかった。雪まつり期間中に資料館で開かれるのは初めてのはずだが、なんと「2時30分まで休み」とある。これは2時からのコンサートと無関係ではあるまい。ジャズコンサートも聴きたいし、ここは改めて来るとして、5丁目会場まで向かわなくてはならない。12丁目会場からはけっこうな距離がある。雪で固められた地面を踏みしめながら、再び早足で歩く。将棋も観光も、体力が必要である。
定刻を2分すぎた2時02分、5丁目会場に到着。ステージ前は黒山の人だかりだ。自衛隊と音楽隊はミスマッチな感があり、観光客の足を止めるには十分である。30分余りの演奏だったが、「虹と雪のバラード」「嵐・11曲メドレー」「侍戦隊シンケンジャー」「フレッシュプルキュア!」など、バラエティに飛んだ選曲で楽しませてくれた。
その足で再び資料館へ戻る。3時からはホットドリンクのサービスがある。絶対飲めるのだが、やっぱり早足になってしまう。再入館するや早速いただき、飲み干すと2階へ上がる。いよいよ陸上自衛隊の作品鑑賞だ。
(15日につづく)
そこでとりあえず、2,000円と安価な高速バスを利用することにしたのであった。しかしこれが大悪手だったと気付くのは、12日(金)の午後7時40分ごろになる。
まだ外は暗いが、買物公園の氷像前ではガードマンが警備している。この通りでは先日、市民が造った雪だるま49体が壊される事件が起きた。こうした事件が再発することのないよう、人々が寝静まっている間にも、警備は続けられているのだ。
高速バス「あさひかわ号」は定刻6時00分に旭川駅前バスターミナルを発車。6時の出発ということもあって、さすがに乗車人数は少なかった。
高速バスのよいところは座席が大きいことだ。さらにバスによっては音楽が聴けたりテレビが観られたり、インスタントコーヒーが飲めたりする。あさひかわ号はテレビを視聴できるのみであった。とりあえずヘッドホンを付けたが、ほとんど耳に入っていなかった。なにしろ昨晩は、明け方に意識がなくなった記憶があるだけで、ほとんど眠っていない。車内で睡眠をかせぐしかないのだ。電車だと横に誰が座るか分からないので若干の緊張感を要するが、高速バスならその心配はまずない。どんな乗り物でも一長一短がある。
定刻を2分過ぎて、8時22分、バスは札幌駅前バスターミナルに着いた。その足で駅付近にあるネットカフェへ向かう。ブログの更新をするためである。ブログを書くようになってから、旅先での過ごし方が変わってきた。観光の時間をブログの記述に充てるようになったのだ。これでは本末転倒だが、まあ書ける間は書こうと思っている。
朝だから「モーニングパック」があるはずだが、女店員さんは「モーニングは…」と口ごもるだけで、ふつうに入店伝票を寄越す。こういう応対は困る。ちゃんと説明してくれないと分からない。
3時間も店内でだらだらし、会計。「3時間パック」と記されていて、1,100円も取られた。
いよいよ本日のメインである「さっぽろ雪まつり」会場の札幌大通りへ向かう。6丁目だか7丁目だかに実行本部があり、そこでパンフレットをもらう。さっぽろ雪まつりも旭川冬まつりと同じく、雪像の鑑賞と同時にイベントを楽しみたい。最終日はミスさっぽろと雪の女王(4月1日から「ミスさっぽろ」となる)が出演するフィナーレが感動的だ。今年は「ミスさっぽろ雪上おわかれセレモニー」と題して、午後8時30分から20分間行われる。昔はこのセレモニーを中心とする1時間の盛大なイベントだったものだが、だんだん規模が縮小し、最近ではセレモニーをやらない年さえあった。
ほかのイベントで目を惹くのは、陸上自衛隊第11個師団音楽隊による「雪まつりコンサート」で、2時から行われる。数年前までは、自衛隊敷地内に真駒内会場があり、ここでの同音楽隊による演奏が楽しみだった。第2会場が別の場所に移ってからは拝聴する機会もなかったが、今年は久しぶりに聴ける。このふたつを軸にして、この日の予定を頭の中で組む。
大通会場に着き、とりあえず12丁目会場まで、早足で観て回る。会場は反時計周りの一方通行だ。だから歩きやすいはずなのだが、この日は最終日のせいか観光客でごった返し、思うように前へ進めない。
12丁目までくる。ここで100人中95人が、そのままぐるりと円を描いて引き返す。
もったいない、と言うしかない。そのすぐ目の前に札幌市資料館があり、無料で入館できるのだ。中には市民制作の絵画や工芸品などが部屋ごとに飾られ、大部屋ではジャズコンサートなども行われる。大通会場でジュースの試飲などがあると行列ができるのに、同じ無料でもこちらは少人数である。もっともパンフレットには資料館の記載はないから、観光客がUターンするのは無理もない。
資料館に入館し、2階へ向かう。札幌在住(だと思う)のフォトグラファー(だと思う)が味わい深い写真を展示している。ここ数年出展していて、私は早速入る。そのとたん、
「あっ、来てくださったんですねー」
と言われる。
藤田麻衣子女流1級と八嶋智人を足して2で割ったような、人なつこい笑顔の女性だ。
「週末の6、7日にいらっしゃらなかったから、今年はいらっしゃらないのかと思いましたー」
彼女が快活に話を続ける。
「いえいえ、今年は10日の休みが取れたので、最終日に来ることにしました」
「ありがとうございますぅ。ここで写真展を開かせてもらって、もう4回目になるんですよ」
「ああそうですか。じゃあボクは4回とも訪れていることになりますね」
「でも去年は忙しそうで、すぐお帰りになりましたよ」
「そうでしたか? 昨年は2日間しか日程がなかったからなぁ…」
私は極度の人見知りなので、知己がいても自分からは声を掛けない。だからこうして相手から声を掛けてもらえると、ありがたい。
彼女の作品(写真)の唯一にして最大の特徴は、どこにでもある雑草や花などを、独特の視点で切り取り、作品に昇華させているところにある。将棋と同じで、なんでもないところから手を作る、という感じだ。今年も気に入ったポストカードを買うと、おまけをくれた。
部屋を出て奥へ向かうと、陸上自衛隊北部方面隊の美術展がある。真駒内会場では定番の展示だったが、ここも真駒内会場の閉鎖を受けて以後、鑑賞する機会がなかった。雪まつり期間中に資料館で開かれるのは初めてのはずだが、なんと「2時30分まで休み」とある。これは2時からのコンサートと無関係ではあるまい。ジャズコンサートも聴きたいし、ここは改めて来るとして、5丁目会場まで向かわなくてはならない。12丁目会場からはけっこうな距離がある。雪で固められた地面を踏みしめながら、再び早足で歩く。将棋も観光も、体力が必要である。
定刻を2分すぎた2時02分、5丁目会場に到着。ステージ前は黒山の人だかりだ。自衛隊と音楽隊はミスマッチな感があり、観光客の足を止めるには十分である。30分余りの演奏だったが、「虹と雪のバラード」「嵐・11曲メドレー」「侍戦隊シンケンジャー」「フレッシュプルキュア!」など、バラエティに飛んだ選曲で楽しませてくれた。
その足で再び資料館へ戻る。3時からはホットドリンクのサービスがある。絶対飲めるのだが、やっぱり早足になってしまう。再入館するや早速いただき、飲み干すと2階へ上がる。いよいよ陸上自衛隊の作品鑑賞だ。
(15日につづく)