31日(日)は、南青山でLPSA×企業将棋部の「第3回ペア将棋選手権」があった。船戸陽子女流二段や中倉宏美女流二段がアマ強豪と仲睦まじく将棋を指す姿を見るのはおもしろくないが、一将棋ファンとして見届ける必要はある。すでに入場料は支払っていたこともあり、当日はしぶしぶ南青山へ向かった。
東京メトロ・表参道駅で下車し、会場である「ふくい南青山291」へ向かう。ちょっと道に迷って会場入りしたのは、開会式の午前11時30分を2分すぎた11時32分だった。別に旅行中ではないので、遅刻しても構わない。
会場の1階はその名の通り、福井県の名産品を売っていて、なかなかオシャレな造りである。LPSAのイベントではシャレた会場が多いが、いつどこでリサーチするのだろう。恐らく都内のあっちこっちに出没している女流棋士がいるのだろうが、このあたりは女流棋士で構成されているLPSAの強みである。
今回の出場選手は、プロアマ10人ずつ。最初に予選を2局行い、本戦入りの7名ないしは8名を決める。シードを2組作ってトーナメント戦にすればすっきりすると思うが、アマ強豪に1局でも多くペア将棋を楽しんでほしいという、LPSAの配慮だろうか。
中井広恵代表理事の挨拶、出場選手の紹介のあと、さっそく対局開始。
選手の配置は左から、渡部愛ツアー女子プロ・星宮謙アマ×松尾香織女流初段・長岡洋平アマ、島井咲緒里女流初段・伊藤享史アマ×大庭美樹女流初段・山下洋アマ、藤田麻衣子女流1級・鈴木貴行アマ×中倉女流二段・伊藤康晴アマ、中倉彰子女流初段・清水上徹アマ×石橋幸緒女流四段・馬上勇人アマ、船戸女流二段・渡辺健弥アマ×中井天河・宮原洋介アマの10組である。先に書いた対局者が先手である。
観客席は横に2列並んでいる。しかしうしろの席からは前の将棋は見えない。私も最初は渡部・星宮ペア×松尾・長岡ペアが正面に見える席にすわったが、すぐに席を立って、ほうぼうをうろちょろする。何度も書くが、公開対局は出場選手の顔を観ることが大事である。
女流棋士の服装は、アマチュアを引き立たせるためか全体的に地味だったが、島井女流初段は白のスーツにミニスカートといういでたちで、とても輝いていた。島井ブルーのアイシャドーをつけ、戦闘態勢は十分というところか。
石橋女流四段はエメラルドグリーンのジャケット。髪にパーマがかかり、こちらもちょっとオシャレである。石橋女流四段も、優勝へ向けて気合十分と見た。
皆さん隣りのペアとは近くもなく離れてもなく、適度な距離で指している。しかし島井女流初段は、将棋盤からやや右に離れて指している。これでは島井女流初段がチェスクロックのボタンを押しにくい。これはもう一方のアマにも責任があって、盤がふたりの中央にくるようすわっているからいけないのだ。ほかのアマは、女流棋士が盤の正面にくるよう配慮してすわっている。これなら女流棋士がボタンを押すときにも、それほど負担にならない。
藤森奈津子女流三段がにこやかな顔で挨拶にいらっしゃる。私は先日、「ヘンな夢を見た」という怪しい記事を書いた。藤森女流三段がそれを読まなかったはずはないので、私はまた説教されるのを恐れて、こそこそ逃げる。
各対局を観て回る。船戸・渡辺ペアは、ちょっと密着しすぎではないか? いや違う。ほかのペアは盤に正対しているのに、このペアは「\ /」のように座っているので、顔が近付いているのだ。
もう気が気でないが、こちらは傍観者なので、ほかを見回るしかない。
渡部ツアー女子プロが、「あっ、私ですか? すいません」とか叫んでいる。自分の手番だったのにうっかりしたらしい。この天然ぶりは、中倉女流姉妹の大きな脅威となろう。
大庭・山下ペアが相談タイムを取り、離れたところで駒を並べ研究する。その間に、相手の島井・伊藤ペアも盤上で話し合っている。これでは両方が研究でき、作戦タイムの意味がないと思うが、どうか。
それよりも、島井・伊藤ペアの検討は、ちょっとくっつきすぎではないか? パッと見、年上の女性と年下の男性の、いちゃいちゃカップルに見える。
「え~、ワカンナーイ!」と渡部ツアー女子プロが叫んで、このペアも相談タイムに入る。このちょっと甘えたようなイントネーション、さすがに現役女子高生である。この言葉が似合うのは、LPSAでは彼女だけである。たとえば石橋女流四段が使うと、ちょっとおかしなことになる。
清水上アマと目が合う。その眼光は鋭い。清水上アマは、アマという名のプロである。今回の勝者予想は、決勝進出の2チームを当てる。トーナメントの山すらできていない状態で2ペアを当てるのは至難だが、中倉彰子・清水上ペアの決勝進出は固いと思った。
もう各局で秒読みに入っているところがあるが、長岡アマが残り1秒のところで相談タイムを取った。あぶない。相方の松尾女流初段は、以前ペア対局のとき、残り1秒のところでボタンを押したことがある。チェスクロックに感情はない。もう少し余裕をもって指すべきだ。
その松尾・長岡アマは絶体絶命だったが、先に指してからボタンを押すことが許され、「時間切れ」というシラケる結果からは何とか免れた。
しかしどこもかしこも和気藹藹とした雰囲気である。また藤森女流三段がやってきて、
「みんな仲よさそう。一公さんのブログが楽しみだわー」
とイヤなことを言う。
そろそろ各局とも、形勢に差がついてきた。まずは島井・伊藤ペアが勝ち名乗りを上げる。ややあって、中倉彰子・清水上ペアが続いた。
今回の勝者予想は、12時30分までに投票すればよい。今回は1勝で予選通過だから、中倉彰子・清水上アマの本戦トーナメント決勝進出は固いとして、もう1組を誰にするか。私は女流棋士のメンツは考えず、出場アマの実力を主に考えることにした。熟考の末、最近は実戦不足らしいが、アマ名人、アマ竜王経験者の渡辺アマを推す。問題は相方の船戸女流二段で、彼女が決勝まで勝ち進む姿を見たいような見たくないような気持ちはあるが、予想と歪んだ願望は違う。
本局は中井・宮原ペア相手に苦戦を強いられていたが、仮にこの将棋を負けても、次は勝つだろう。
私は船戸・渡辺ペアにもうひとつのチェックを入れ、投票した。
予選1回戦は、中倉宏美・伊藤ペア、中井・宮原ペア、松尾・長岡ペアがトントントンと勝ち名乗りをあげ、終了した。
私は昼食を摂るべく、外へ出る。私はかつて原宿の近くが勤務地だったことがあり、そこがどうなっているか見てみようと足を運ぼうとしたのだが、この会場の最寄り駅である表参道駅のひとつ先である明治神宮前駅(原宿駅に隣接している)と混同していたことに気づき、途中で引き返した。帰途、表参道でこの日結婚する花婿と花嫁がタキシードとウエディングドレス姿で、シャレたビルに入っていったのを見た。これは縁起がいいと言うべきなのであろうか。
午後1時37分、会場へ戻る。ところが様子が変だ。さきほどの10ペアが対戦相手を変え、熱戦を繰り広げている。もう終わった将棋もあるし、秒読みの真っ最中の将棋もある。?? 予選2回戦は1時30分からではなかったのか?
私はスケジュール表を確認する。と、予選2回戦は、12時40分からと書いてあった。
な、なんてことだ!! 昼休みなしで、あのあとすぐに2回戦が始まったということか!! あ~、ちゃんとスケジュールを確認しておくのだった!! 私は呆然として、しばらくその場に立ちつくす。
船戸・渡辺ペアと渡部・星宮ペアはもう感想戦を行っている。ボードに貼られた勝敗表を見ると、船戸・渡辺ペアに「●」が付いている。まさかと思う。早指し戦に強い船戸女流二段と、実績十分の渡辺アマ。私が決勝進出に推したペアが2連敗で、まさかの予選敗退となったのだ。
私の落胆は大きかった。なんだかんだ言っても、私はこのペアを応援していたことに気づいたのだった。
(つづく)
東京メトロ・表参道駅で下車し、会場である「ふくい南青山291」へ向かう。ちょっと道に迷って会場入りしたのは、開会式の午前11時30分を2分すぎた11時32分だった。別に旅行中ではないので、遅刻しても構わない。
会場の1階はその名の通り、福井県の名産品を売っていて、なかなかオシャレな造りである。LPSAのイベントではシャレた会場が多いが、いつどこでリサーチするのだろう。恐らく都内のあっちこっちに出没している女流棋士がいるのだろうが、このあたりは女流棋士で構成されているLPSAの強みである。
今回の出場選手は、プロアマ10人ずつ。最初に予選を2局行い、本戦入りの7名ないしは8名を決める。シードを2組作ってトーナメント戦にすればすっきりすると思うが、アマ強豪に1局でも多くペア将棋を楽しんでほしいという、LPSAの配慮だろうか。
中井広恵代表理事の挨拶、出場選手の紹介のあと、さっそく対局開始。
選手の配置は左から、渡部愛ツアー女子プロ・星宮謙アマ×松尾香織女流初段・長岡洋平アマ、島井咲緒里女流初段・伊藤享史アマ×大庭美樹女流初段・山下洋アマ、藤田麻衣子女流1級・鈴木貴行アマ×中倉女流二段・伊藤康晴アマ、中倉彰子女流初段・清水上徹アマ×石橋幸緒女流四段・馬上勇人アマ、船戸女流二段・渡辺健弥アマ×中井天河・宮原洋介アマの10組である。先に書いた対局者が先手である。
観客席は横に2列並んでいる。しかしうしろの席からは前の将棋は見えない。私も最初は渡部・星宮ペア×松尾・長岡ペアが正面に見える席にすわったが、すぐに席を立って、ほうぼうをうろちょろする。何度も書くが、公開対局は出場選手の顔を観ることが大事である。
女流棋士の服装は、アマチュアを引き立たせるためか全体的に地味だったが、島井女流初段は白のスーツにミニスカートといういでたちで、とても輝いていた。島井ブルーのアイシャドーをつけ、戦闘態勢は十分というところか。
石橋女流四段はエメラルドグリーンのジャケット。髪にパーマがかかり、こちらもちょっとオシャレである。石橋女流四段も、優勝へ向けて気合十分と見た。
皆さん隣りのペアとは近くもなく離れてもなく、適度な距離で指している。しかし島井女流初段は、将棋盤からやや右に離れて指している。これでは島井女流初段がチェスクロックのボタンを押しにくい。これはもう一方のアマにも責任があって、盤がふたりの中央にくるようすわっているからいけないのだ。ほかのアマは、女流棋士が盤の正面にくるよう配慮してすわっている。これなら女流棋士がボタンを押すときにも、それほど負担にならない。
藤森奈津子女流三段がにこやかな顔で挨拶にいらっしゃる。私は先日、「ヘンな夢を見た」という怪しい記事を書いた。藤森女流三段がそれを読まなかったはずはないので、私はまた説教されるのを恐れて、こそこそ逃げる。
各対局を観て回る。船戸・渡辺ペアは、ちょっと密着しすぎではないか? いや違う。ほかのペアは盤に正対しているのに、このペアは「\ /」のように座っているので、顔が近付いているのだ。
もう気が気でないが、こちらは傍観者なので、ほかを見回るしかない。
渡部ツアー女子プロが、「あっ、私ですか? すいません」とか叫んでいる。自分の手番だったのにうっかりしたらしい。この天然ぶりは、中倉女流姉妹の大きな脅威となろう。
大庭・山下ペアが相談タイムを取り、離れたところで駒を並べ研究する。その間に、相手の島井・伊藤ペアも盤上で話し合っている。これでは両方が研究でき、作戦タイムの意味がないと思うが、どうか。
それよりも、島井・伊藤ペアの検討は、ちょっとくっつきすぎではないか? パッと見、年上の女性と年下の男性の、いちゃいちゃカップルに見える。
「え~、ワカンナーイ!」と渡部ツアー女子プロが叫んで、このペアも相談タイムに入る。このちょっと甘えたようなイントネーション、さすがに現役女子高生である。この言葉が似合うのは、LPSAでは彼女だけである。たとえば石橋女流四段が使うと、ちょっとおかしなことになる。
清水上アマと目が合う。その眼光は鋭い。清水上アマは、アマという名のプロである。今回の勝者予想は、決勝進出の2チームを当てる。トーナメントの山すらできていない状態で2ペアを当てるのは至難だが、中倉彰子・清水上ペアの決勝進出は固いと思った。
もう各局で秒読みに入っているところがあるが、長岡アマが残り1秒のところで相談タイムを取った。あぶない。相方の松尾女流初段は、以前ペア対局のとき、残り1秒のところでボタンを押したことがある。チェスクロックに感情はない。もう少し余裕をもって指すべきだ。
その松尾・長岡アマは絶体絶命だったが、先に指してからボタンを押すことが許され、「時間切れ」というシラケる結果からは何とか免れた。
しかしどこもかしこも和気藹藹とした雰囲気である。また藤森女流三段がやってきて、
「みんな仲よさそう。一公さんのブログが楽しみだわー」
とイヤなことを言う。
そろそろ各局とも、形勢に差がついてきた。まずは島井・伊藤ペアが勝ち名乗りを上げる。ややあって、中倉彰子・清水上ペアが続いた。
今回の勝者予想は、12時30分までに投票すればよい。今回は1勝で予選通過だから、中倉彰子・清水上アマの本戦トーナメント決勝進出は固いとして、もう1組を誰にするか。私は女流棋士のメンツは考えず、出場アマの実力を主に考えることにした。熟考の末、最近は実戦不足らしいが、アマ名人、アマ竜王経験者の渡辺アマを推す。問題は相方の船戸女流二段で、彼女が決勝まで勝ち進む姿を見たいような見たくないような気持ちはあるが、予想と歪んだ願望は違う。
本局は中井・宮原ペア相手に苦戦を強いられていたが、仮にこの将棋を負けても、次は勝つだろう。
私は船戸・渡辺ペアにもうひとつのチェックを入れ、投票した。
予選1回戦は、中倉宏美・伊藤ペア、中井・宮原ペア、松尾・長岡ペアがトントントンと勝ち名乗りをあげ、終了した。
私は昼食を摂るべく、外へ出る。私はかつて原宿の近くが勤務地だったことがあり、そこがどうなっているか見てみようと足を運ぼうとしたのだが、この会場の最寄り駅である表参道駅のひとつ先である明治神宮前駅(原宿駅に隣接している)と混同していたことに気づき、途中で引き返した。帰途、表参道でこの日結婚する花婿と花嫁がタキシードとウエディングドレス姿で、シャレたビルに入っていったのを見た。これは縁起がいいと言うべきなのであろうか。
午後1時37分、会場へ戻る。ところが様子が変だ。さきほどの10ペアが対戦相手を変え、熱戦を繰り広げている。もう終わった将棋もあるし、秒読みの真っ最中の将棋もある。?? 予選2回戦は1時30分からではなかったのか?
私はスケジュール表を確認する。と、予選2回戦は、12時40分からと書いてあった。
な、なんてことだ!! 昼休みなしで、あのあとすぐに2回戦が始まったということか!! あ~、ちゃんとスケジュールを確認しておくのだった!! 私は呆然として、しばらくその場に立ちつくす。
船戸・渡辺ペアと渡部・星宮ペアはもう感想戦を行っている。ボードに貼られた勝敗表を見ると、船戸・渡辺ペアに「●」が付いている。まさかと思う。早指し戦に強い船戸女流二段と、実績十分の渡辺アマ。私が決勝進出に推したペアが2連敗で、まさかの予選敗退となったのだ。
私の落胆は大きかった。なんだかんだ言っても、私はこのペアを応援していたことに気づいたのだった。
(つづく)