現在発売中の「ビッグコミックオリジナル」に連載中の「黄昏流星群」は、「萬代橋の女②」。
定年を過ぎた主人公が、出張に行った先で、一目見ただけのある女性に一目惚れをしてしまう。それから4年後、男はひょんなことから、同窓生らとその女性を探しに行くことになった。そして今号。男らは実に都合のよい展開でその女性と再会を果たす。しかもその男と女性がうまい具合にふたりきりになり、ホテルにしけこむ、というところで、「以下次号」。
現実の世界は、こんなに都合よくは行かない。もっと、もっと、苦しいものなのだ。
昨年最後の金曜サロンである12月25日、夜の担当は松尾香織女流初段だった。松尾女流初段は、私の(ココロの)姉弟子である。2009年のラストを飾るにふさわしい女流棋士であった。
この日はクリスマス。石橋幸緒女流四段はサンタクロースの格好、植山悦行手合い係も白ヒゲをつけ、一応それらしい雰囲気はあった。
松尾女流初段が入室するや、やはり驚きの表情だったが、「しょうがないなあ」と言いながら、トナカイの衣装をまとって登場する。さすがに松尾女流初段、場の空気をよく読んでいらっしゃる。
ところでトナカイの衣装といえば、3年前の年末に行われた、ミネルヴァファンクラブイベントでの北尾まどか女流初段を思い出す。北尾女流初段はちょっとコミカルな感じだったが、今回の松尾女流初段は大人のムード満載で女らしく、私は思わず見とれてしまった。2本の角も、本当に生えているようで、素敵だった。
しかし姉弟子にそんなことを言ったらまた何を言い返されるか分からないので、黙って指導対局を受ける。
▲7六歩△3四歩に、私は▲6六歩。そこで松尾女流初段が☖3五歩と振り飛車を目指したので、私は▲5六歩と突く。自分では居飛車を明示したつもりだったのだが、松尾女流初段は、
「え? 何考えてるの? 狙いが分からない」
と、三間飛車に振る。私は▲4八銀~▲6八玉と上がり、ここで松尾女流初段も、私が居飛車の方針ということを確信したようだ。
その後松尾女流初段は石田流に組み直し、私は玉頭に位を張る。そして迎えた中盤の局面が、以下のごとくである。
ここで松尾女流初段は△4五桂と跳ねた。私は▲4六歩△同角と呼びこんでから、▲4七金と強く受ける。
「それは…ちょっと損じゃないかなぁ」
と松尾女流初段がつぶやき、△3六歩。
▲4七金は疑問手だったか? と疑心暗鬼が生じたが、こうなっては行くよりない。以下▲4六金△3七歩成▲3五歩△2八成桂▲3四歩、と騎虎の勢いで進んだ。しかしそこであらためて局面を見ると、私の角得になっている。これは私が優位に立ったのではないか?
しかし上手の囲いが金銀4枚なのに、こちらのそれはバラバラ。玉も薄く、意外と指しづらいことに驚いた。事実その後の進行は自陣飛車を打たされるなど大苦戦だったが、9筋からの端攻めが割合うまく決まって、最後はなんとか花を持たせてもらうことができた。
前回の松尾女流初段との指導対局では、局後に
「一公さんには一生負けない!」
と宣言されてしまったが、そこはそれ、年の終わりに上手に負かされるのも悔しかろうと、松尾女流初段が緩めてくれたのだ。
これで2009年の指導対局はすべて終了した。戦績はどうだったか。詳しく調べないが、勝ったり負けたり、というところだったろう。
今年1年間ありがとうございましたと、LPSAすべての女流棋士に心の中で御礼を申し上げ、私はサロンをあとにした。
定年を過ぎた主人公が、出張に行った先で、一目見ただけのある女性に一目惚れをしてしまう。それから4年後、男はひょんなことから、同窓生らとその女性を探しに行くことになった。そして今号。男らは実に都合のよい展開でその女性と再会を果たす。しかもその男と女性がうまい具合にふたりきりになり、ホテルにしけこむ、というところで、「以下次号」。
現実の世界は、こんなに都合よくは行かない。もっと、もっと、苦しいものなのだ。
昨年最後の金曜サロンである12月25日、夜の担当は松尾香織女流初段だった。松尾女流初段は、私の(ココロの)姉弟子である。2009年のラストを飾るにふさわしい女流棋士であった。
この日はクリスマス。石橋幸緒女流四段はサンタクロースの格好、植山悦行手合い係も白ヒゲをつけ、一応それらしい雰囲気はあった。
松尾女流初段が入室するや、やはり驚きの表情だったが、「しょうがないなあ」と言いながら、トナカイの衣装をまとって登場する。さすがに松尾女流初段、場の空気をよく読んでいらっしゃる。
ところでトナカイの衣装といえば、3年前の年末に行われた、ミネルヴァファンクラブイベントでの北尾まどか女流初段を思い出す。北尾女流初段はちょっとコミカルな感じだったが、今回の松尾女流初段は大人のムード満載で女らしく、私は思わず見とれてしまった。2本の角も、本当に生えているようで、素敵だった。
しかし姉弟子にそんなことを言ったらまた何を言い返されるか分からないので、黙って指導対局を受ける。
▲7六歩△3四歩に、私は▲6六歩。そこで松尾女流初段が☖3五歩と振り飛車を目指したので、私は▲5六歩と突く。自分では居飛車を明示したつもりだったのだが、松尾女流初段は、
「え? 何考えてるの? 狙いが分からない」
と、三間飛車に振る。私は▲4八銀~▲6八玉と上がり、ここで松尾女流初段も、私が居飛車の方針ということを確信したようだ。
その後松尾女流初段は石田流に組み直し、私は玉頭に位を張る。そして迎えた中盤の局面が、以下のごとくである。
ここで松尾女流初段は△4五桂と跳ねた。私は▲4六歩△同角と呼びこんでから、▲4七金と強く受ける。
「それは…ちょっと損じゃないかなぁ」
と松尾女流初段がつぶやき、△3六歩。
▲4七金は疑問手だったか? と疑心暗鬼が生じたが、こうなっては行くよりない。以下▲4六金△3七歩成▲3五歩△2八成桂▲3四歩、と騎虎の勢いで進んだ。しかしそこであらためて局面を見ると、私の角得になっている。これは私が優位に立ったのではないか?
しかし上手の囲いが金銀4枚なのに、こちらのそれはバラバラ。玉も薄く、意外と指しづらいことに驚いた。事実その後の進行は自陣飛車を打たされるなど大苦戦だったが、9筋からの端攻めが割合うまく決まって、最後はなんとか花を持たせてもらうことができた。
前回の松尾女流初段との指導対局では、局後に
「一公さんには一生負けない!」
と宣言されてしまったが、そこはそれ、年の終わりに上手に負かされるのも悔しかろうと、松尾女流初段が緩めてくれたのだ。
これで2009年の指導対局はすべて終了した。戦績はどうだったか。詳しく調べないが、勝ったり負けたり、というところだったろう。
今年1年間ありがとうございましたと、LPSAすべての女流棋士に心の中で御礼を申し上げ、私はサロンをあとにした。