一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2013年12月の九州旅行・5

2014-06-09 00:31:29 | 旅行記・九州編
武雄市図書館に再び入ると、すぐ左手に「棟方志功展」会場があった。さっき私が何度も通ったところである。なぜ気付かなかったのか、呆れた。
会場には絵や書が所狭しと掲げられていた。が時計を見ると、午後2時半である。時間に余裕があれば1時間でも鑑賞したいところだが、15時27分発の列車に乗らないと後の予定が瓦解するので、最低でも午後3時にはここを出たい。
と、学芸員と思しき妙齢の女性が、
「いまあちらで、富山県南砺市立福光美術館の副館長さんが、解説会をしておられます。どうぞ」
と教えてくれた。これはありがたい申し出ではあるが、それを拝聴していたら、ホントに列車に間に合わなくなってしまう。
私は
「いやワタシ、武雄温泉駅から列車に乗らなくちゃなりませんでね、…いいよ、聞きますよ、聞いていきますよ!」
と、ぶっきらぼうに返答する。女性は気分を害したふうだった。
ここが私のダメなところで、悪意はないのにこの口調で、つい女性を怒らせる。
とりあえず、副館長の解説を聞きに行く。各作品を進路に沿って、逐一解説していくやり方だ。棟方志功と富山県の関係がよく分からぬが、副館長の話はおもしろかった。
しかしあまりにも時間がない。私は途中で群れを離れ、断腸の思いで、今度こそ本当に図書館を後にしたのだった。

武雄温泉駅に戻る。列車は4分遅れの15時31分に発車し、早岐(はいき)には3分遅れの16時ちょうどに着いた。
大村線に乗り換え、16時19分発。タイム17分で川棚に着いた。1年振りの川棚である。
ここに初めて訪れたのは1999年だから、もう15回目となる。「あんでるせん」は変わっていなかった。しかし1階のクリーニング屋は閉店していた。
まだ時間があるので、ちょっと先のスーパーまで足を伸ばし、1本49円の缶コーヒーを調達しておく。これが後で効くことは、経験上分かっている。
午後5時過ぎになり、あんでるせんへの入場となった。今回は15人前後か。女性の数が多かったが、中にはキラッと光るひともいて、ここにそぐわない気もした。
さて、あんでるせんは喫茶店なのに、完全予約制である。中には電話予約の際、満員で断られた例もあるらしいが、私は一度も断られたことがない。これはマスター流に言えば、私が断られることをイメージしていないからだろう。
マジックは7時過ぎからだが、その前に軽食を摂る。ここは喫茶店だから、注文は絶対である。マジックはあくまでも余興であり、だから追加料金も発生しない。このスタイルが私は好きなのであって、もしいくらかでも観戦料金を取るようになったら、私は川棚に行かなくなると思う。
今年はアイスコーヒー(525円)とビーフカレー(788円)を頼む。意識しているわけではないが、毎年違うオーダーをする。この組み合わせは初めてではなかろうか。
出されたビーフカレーは、ややごはんがゆるかった。ま、まあいい。ここで食事に期待してはいけない。
7時過ぎになり、いよいよマジックショーの開始となる。定員31人に対して今回は、最終的に18人だった。見物の際は、カウンターに6人が座り、残りは立ち見となる。私は後方のいちばん右で、実はここからがいちばんマスターのマジックを見やすい。私の左、というかナナメ前に女性が来て、ちょっとドキドキした。
マスターが登場した。私は激太りし頭が禿げかかっているが、マスターはいつも変わらない。早速、マジックの始まりである。
と、以下のマジックをつらつら書いてもいいのだが、もう毎年書いているので、ネタは省略してしまおう。
客は女性が大半だったので、華やかだ。私には見慣れたマジックでも、初見の客は驚く。そのたびに黄色い歓声が飛び交う。マスターの語りも、一段と滑らかである。一言一言が実におもしろい。
ただ千円札の中を50円玉が泳いだときは、シーンと静まり返ってしまった。人間、理解不能な画を見ると、声を発するのを忘れてしまうらしい。それを私は笑って見ている。
私がこんな有様なら、わざわざ川棚まで行く必要はないじゃないかと思われそうだが、私は毎年ここで1年の疲れを癒し、この先1年分の元気をもらって帰るのである。
マジックは9時半ごろ終了。この後は例によって、ぐにゃりと曲がったスプーンとフォークが300円で売られる。今回は女性が多かったので、全員が購入したようだ。その際マスターと握手をし、脳天にピリッと、「気」を注入してもらう。始末が悪いのは、彼女らはその後長話をするのである。
まあお客の生年月日を当てたり恋人の名前を当てたり、お札の中でコインを泳がしたり、ビールの瓶をぐにゃっと曲げたりと、さんざんサイキックを見せつけたのだから、女性が興奮するのも分かるというものだ。かつては、悩みを内包していたのか、泣き出してしまう女性もいた。
ようやく順番が回ってきて、私もスプーンを購入する。握手をして、脳天にピリッとやってもらう。
「腰が弱ってますね」
マスターがこう言ったので、びっくりした。確かに私は、腰ににぶい痛みを覚えていたのだ。マスターの慧眼、恐るべしであった。
これで今年のあんでるせんは終わりだが、マスターが毎年語ることを、ここに再録する。
「人間は過去に戻ることができませんね。でもその方法があるんです。皆さんが10年後の自分の姿を想像してみてください。そのとき、いろいろやりたかったことがあると思います。そこから10年前のいまに戻ってくると、自分が何をしたいか、見えてきますね。もう、のんびりとはしてられないですね」
私は14年前からマスターの言葉を聞いていながら、ちっとも実践しなかった。いまこれを読んだ方が、少しでも目からウロコを落としてくれればうれしい。
もう10時は過ぎていたので、長崎行きの最終22時36分を覚悟していたのだが、21時58分の長崎行きが奇跡的に6分遅れたため、飛び乗ることができた。
列車の中で缶コーヒーを飲む。やはり効いた。
定刻の23時05分をやや遅れて、長崎着。今夜は近場のカプセルホテルに宿泊する。熊本―佐賀―武雄温泉―川棚―長崎と、ジェットコースターのような1日だった。
さて、あすはどうしようか。長崎県といえば、2、3年前から気になっていた島があった。
軍艦島である。この世界遺産候補でもある炭鉱の島に、訪れたいと思った。
(つづく)
コメント (4)
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