先日(2013年12月中旬)の九州旅行で、私は思いもよらず「青春18きっぷ」を購入してしまった。それを消化するため、旬日を経て、また私は旅に出ることになった。今回は3泊4日の日程で、北陸を中心に回ろうと思う。
北陸といえば私的には、能登半島にある「ヤセの断崖」である。2時間サスペンスドラマの崖でのやりとりは、松本清張「ゼロの焦点」のクライマックスが嚆矢で、2時間ドラマファンの私としては、一度は訪れたい聖地である。だが時刻表と格闘した結果、また今回も見合わさざるを得なくなった。というのも、ヤセの断崖へは路線バスが充実しておらず、タクシーを使わざるを得ない。がそれは私のポリシーに反するので、どうにも無理になってしまうのだ。もう諦めた。
さらに福井県にもお邪魔したいところ。福井県は道端三姉妹の出身地で、ことに道端アンジェリカには、「Peach John」で大変お世話になった。がこれも、帰路の時間を考えると無理となった。やはり北陸は遠いのだ。
私はいったいどこへ向かうのか分からぬが、とりあえず先を急ごう。
12月28日(土)午前10時過ぎ、自宅最寄り駅より山手線に乗る。神田で中央線特別快速の高尾行きに乗り換えた。ここまでは好調だ。と、豊田の手前で我が車両が調子を崩し、止まってしまった。私たちは電車の乗り換えを余儀なくされた。かなりレアなケースだが、私は旅先で同じパターンを2度食ったことがある。とはいえ旅行早々、ケチがついた格好である。
八王子の手前で、右手に山が見えた。しかしここも東京である。東京といえば23区、のイメージが強いが、実は都下の面積のほうが圧倒的に大きい。23区すべて足しても、東京都の面積の3割にも満たない。
高尾には2分遅れの11時22分に到着した。すぐに中央本線に乗り換える。「中央線」は通勤電車の趣だが、「中央本線」は旅情を誘う。
ボックスシートは適度に塞がっており、私はドアの近くに立った。ここ数年運動不足なので、このくらいの「運動」をしたほうがいい。
13時40分、小淵沢着。小淵沢には、往年の人気番組「愛川欽也の探検レストラン」から生まれた「元気甲斐」なる駅弁があるのだが、今回は購入をパスする。駅のホームの立ち食いそばで済ませることにした。しかしこの寒さなので、人が満杯だ。
私はいったん改札を抜けたが、そこにも同じ立ち食いそば屋があった。しかしここもすごい人だ。なぜこんなに多いのか。旅先で立ち食いそばを食すと、旅をしている実感が味わえるからであろう。
私は駅舎を出て時間をつぶし、再び戻るが、かけうどんの待ち時間が15分と言われ、こちらはパス。私は再びホームに戻った。
ホームのそば屋はさすがに人がいなくなって、私はかけうどんを頼む。これが290円とちょっぴり高めながら、天かすが入って、期待以上のうまさだった。
14時09分、小淵沢発。今度は何とか座れた。15時18分、松本着。きょうは松本、というか松本城を観光しようと思う。
とりあえず駅前の観光案内所に寄る。松本城へは、アルピコ交通が運営する「松本周遊バス」がある。時間に余裕があれば徒歩で行きたいところだが、やや厳しい。今回はバスの利用である。
駅前の「お城口」なるバス停から乗った。川を渡ると、バスは風情のある商店街の中を走る。観光用に施されてはいるが味があり、やはり時間が許せば1時間でもぶらつきたいところだ。
バスは「松本城・市役所前」に着いたが、私はその先の「旧開智学校」で降りた。190円は良心的な値段であろう。
旧開智学校は歴史ある白亜の小学校で、ここも時間があれば見学したいが、やはり時間がない。いや本音は、入館料(300円)を出すのが惜しいだけなのだが。
その先に、松本市旧司祭館があった。ここは無料なので、入る。無料大好きである。
ここから引き返す形になる。松本城の手前に、風格のある佇まいの神社があった。その名も「松本神社」である。こういうとき、私はとりあえずお参りをしてしまう。5円のお賽銭を投じ、おみくじを引く。「大吉」はめでたかった。
いよいよ松本城に来た。松本城は昭和52年に「国宝シリーズ」として記念切手が発行された。当時私は切手をコレクションしていたので、松本城には深い思い入れがある。
しかし冬の陽は短いうえに、空はどんよりと曇っている。おまけにお堀が改修工事中で、ちっとも絵にならない。よって、いい写真も撮れなかった。
なおもちろんここも、天守閣には登らない。ちなみに入場料は、600円だった。
松本城公園の出入り口に出たが、この造りに見覚えがある。たしか1993年に開かれた「国宝松本城400年まつり」のときの記憶である。だとすると21年も前のことになってしまうが、本当だろうか。21年…。当時は私も20代の新鋭だったのに、いまはさえないオジサンになってしまった。
ここからは徒歩で松本駅に戻る。千歳橋を渡った右手に、大きな柱時計が見えた。銀座和光の時計塔を思わせるが、あれは松本市の時計博物館(300円)である。もちろんこれも、遠くから眺めるに留める。
「パントリー マルナカ」なるパン屋があったので、菓子パンを買う。東京ではめったに買わないが、旅先で菓子パンを買うのは好きである。わずか百数十円でパン職人の「夢の作品」が買えるのがよい。
ほかにしゃれた和菓子店があった。最中がおいしそうだが、あまり買いこむのもアレなので、やめておく。
などなど、あっちこっちをキョロキョロしながら歩いていたら、松本駅に着いてしまった。
次に乗るべきは、16時47分発の大糸線である。私は改札を抜け、ホームに降りる。ホームには、すでに電車が入線していた。
あ…あああっ!! こっ、これは…!?
(つづく)
北陸といえば私的には、能登半島にある「ヤセの断崖」である。2時間サスペンスドラマの崖でのやりとりは、松本清張「ゼロの焦点」のクライマックスが嚆矢で、2時間ドラマファンの私としては、一度は訪れたい聖地である。だが時刻表と格闘した結果、また今回も見合わさざるを得なくなった。というのも、ヤセの断崖へは路線バスが充実しておらず、タクシーを使わざるを得ない。がそれは私のポリシーに反するので、どうにも無理になってしまうのだ。もう諦めた。
さらに福井県にもお邪魔したいところ。福井県は道端三姉妹の出身地で、ことに道端アンジェリカには、「Peach John」で大変お世話になった。がこれも、帰路の時間を考えると無理となった。やはり北陸は遠いのだ。
私はいったいどこへ向かうのか分からぬが、とりあえず先を急ごう。
12月28日(土)午前10時過ぎ、自宅最寄り駅より山手線に乗る。神田で中央線特別快速の高尾行きに乗り換えた。ここまでは好調だ。と、豊田の手前で我が車両が調子を崩し、止まってしまった。私たちは電車の乗り換えを余儀なくされた。かなりレアなケースだが、私は旅先で同じパターンを2度食ったことがある。とはいえ旅行早々、ケチがついた格好である。
八王子の手前で、右手に山が見えた。しかしここも東京である。東京といえば23区、のイメージが強いが、実は都下の面積のほうが圧倒的に大きい。23区すべて足しても、東京都の面積の3割にも満たない。
高尾には2分遅れの11時22分に到着した。すぐに中央本線に乗り換える。「中央線」は通勤電車の趣だが、「中央本線」は旅情を誘う。
ボックスシートは適度に塞がっており、私はドアの近くに立った。ここ数年運動不足なので、このくらいの「運動」をしたほうがいい。
13時40分、小淵沢着。小淵沢には、往年の人気番組「愛川欽也の探検レストラン」から生まれた「元気甲斐」なる駅弁があるのだが、今回は購入をパスする。駅のホームの立ち食いそばで済ませることにした。しかしこの寒さなので、人が満杯だ。
私はいったん改札を抜けたが、そこにも同じ立ち食いそば屋があった。しかしここもすごい人だ。なぜこんなに多いのか。旅先で立ち食いそばを食すと、旅をしている実感が味わえるからであろう。
私は駅舎を出て時間をつぶし、再び戻るが、かけうどんの待ち時間が15分と言われ、こちらはパス。私は再びホームに戻った。
ホームのそば屋はさすがに人がいなくなって、私はかけうどんを頼む。これが290円とちょっぴり高めながら、天かすが入って、期待以上のうまさだった。
14時09分、小淵沢発。今度は何とか座れた。15時18分、松本着。きょうは松本、というか松本城を観光しようと思う。
とりあえず駅前の観光案内所に寄る。松本城へは、アルピコ交通が運営する「松本周遊バス」がある。時間に余裕があれば徒歩で行きたいところだが、やや厳しい。今回はバスの利用である。
駅前の「お城口」なるバス停から乗った。川を渡ると、バスは風情のある商店街の中を走る。観光用に施されてはいるが味があり、やはり時間が許せば1時間でもぶらつきたいところだ。
バスは「松本城・市役所前」に着いたが、私はその先の「旧開智学校」で降りた。190円は良心的な値段であろう。
旧開智学校は歴史ある白亜の小学校で、ここも時間があれば見学したいが、やはり時間がない。いや本音は、入館料(300円)を出すのが惜しいだけなのだが。
その先に、松本市旧司祭館があった。ここは無料なので、入る。無料大好きである。
ここから引き返す形になる。松本城の手前に、風格のある佇まいの神社があった。その名も「松本神社」である。こういうとき、私はとりあえずお参りをしてしまう。5円のお賽銭を投じ、おみくじを引く。「大吉」はめでたかった。
いよいよ松本城に来た。松本城は昭和52年に「国宝シリーズ」として記念切手が発行された。当時私は切手をコレクションしていたので、松本城には深い思い入れがある。
しかし冬の陽は短いうえに、空はどんよりと曇っている。おまけにお堀が改修工事中で、ちっとも絵にならない。よって、いい写真も撮れなかった。
なおもちろんここも、天守閣には登らない。ちなみに入場料は、600円だった。
松本城公園の出入り口に出たが、この造りに見覚えがある。たしか1993年に開かれた「国宝松本城400年まつり」のときの記憶である。だとすると21年も前のことになってしまうが、本当だろうか。21年…。当時は私も20代の新鋭だったのに、いまはさえないオジサンになってしまった。
ここからは徒歩で松本駅に戻る。千歳橋を渡った右手に、大きな柱時計が見えた。銀座和光の時計塔を思わせるが、あれは松本市の時計博物館(300円)である。もちろんこれも、遠くから眺めるに留める。
「パントリー マルナカ」なるパン屋があったので、菓子パンを買う。東京ではめったに買わないが、旅先で菓子パンを買うのは好きである。わずか百数十円でパン職人の「夢の作品」が買えるのがよい。
ほかにしゃれた和菓子店があった。最中がおいしそうだが、あまり買いこむのもアレなので、やめておく。
などなど、あっちこっちをキョロキョロしながら歩いていたら、松本駅に着いてしまった。
次に乗るべきは、16時47分発の大糸線である。私は改札を抜け、ホームに降りる。ホームには、すでに電車が入線していた。
あ…あああっ!! こっ、これは…!?
(つづく)