図は9日の指導対局で現れた局面である。ここで下手の私はどう指すべきか。
9日(金)は、埼玉県川口市の「大野教室」で、初の「金曜教室」があった。9日の夜は家にいたくないところもあったので、教室に行くことにした。
営業時間は午後6時から10時まで。5時50分ごろに川口駅に着いたが、迷った末、軽食を摂ることにした。
駅構内の立ち食い蕎麦屋でかけそばをすする。これが想像以上に美味く、ちょっとした発見だった。
教室には6時10分ごろ入る。先客はTaga氏、S君、小学3、4年と思しき少年の3人だった。ちょっと少ないが、初回だからこんなものだろう。なお、スタッフのW氏は不在だった。
料金は3,500円で、回数割引はない。私はすぐに指導対局が行われると思ったが、大野八一雄七段は「まだ金曜教室のスタイルが確立していないので、まずは講座をしましょう」と言う。それで、初回は山田定跡の講義をすることになった。
大盤に初手から並べられる(第1図)。
ここでどう指しますか、の問いにTaga氏が▲3五歩と答える。山田定跡にもいろいろあって、大野七段が今回述べたいのは▲9七角である。
だが▲3五歩の仕掛けもあるので、それを先に解説することになった。
よって、第1図から▲3五歩。以下ほぼ必然の手順を経るが、ところどころに細かい解説が入り、それがためになるのだ。
途中、少年がしゃしゃり出てきて、解説の流れが滞った。大野教室は子供の生徒が多く、土・日はにぎやかである。しかし金曜の夜は大人の時間で、もう少し静かに将棋の勉強ができると思った。…が、そうでもないようだ。
なお私見だが、私が親だったら、この年齢の子供をこの時間帯の教室には行かさない。
私は大野七段からスマホを渡され、写真係になっていた。途中何枚か写したが、自分が写らないのがうれしい。
解説に戻る。大野七段「ここで▲4四角(第2図)と打ったらどうしますか」
少年は△5三銀とアテたがこれは大野七段の待ち受けるところで、▲同角成△同金▲6二銀△同金▲7一銀で先手成功となる。
よって第2図では黙って△6二銀が正着となる。このあたりは私も昔、「中原名人の振り飛車退治」を読んだことがあるので知っていた。
先手は▲1一飛成。「ここで皆さんに覚えてもらいたい手があります」
△2一歩(第3図)がそれで、こうやって竜筋を遮断するのがいいという。仮に▲2二歩でも、後に▲2一竜の一手が必要で後手の得。これは教わらないと指せない手だ。
先手は▲1二竜。
「ここは、これぞ筋、という手があります。どう指しますか」
早見えのS君は△8六桂▲同歩△8七角▲同玉△6九竜を示したが、それは▲6七角(大野七段)で後手の攻めが切れる。
「では筋のいい大沢さん、どう指しますか」
と聞かれても、私にはさっぱり分からない。そこで再びS君が△4六歩、と答えた(第4図)。
「正解です。▲同歩は△4七歩で、▲同銀は△3七歩成。▲5九銀も△3七歩成。▲同金は△6七角ぐらいで後手勝ちでしょう」
ナルホドこれが将棋のスジというものか。S君、急戦は興味がないふうだったが、さすがだ。どうも彼は私より強い、ということが分かった。
ここからようやく▲9七角型山田定跡に入る。私が時折指すやつだ。
まずは▲9七角~▲8六角~▲6八角の旧定跡。そして新定跡の▲9七角~▲7九角の解説となった。
私「(私は▲9七角を指したいのに)最近は四間飛車で△5四歩と突いてくる人がいないんですよ」
大野七段「最近はわざと△5四歩と指す人も多いですよ」
私「?」
何となく会話が噛み合わないが、解説を拝聴して、その意味が分かった。
すなわち▲7九角の新バージョンには△1四歩が好手で、以下先手の具合が悪いのだ。つまり、私は山田定跡で先手が指せると見ていたのに、現代では後手十分の結論になっていた。それが前記の会話のギクシャク感だったのだ。
私は今年3月の女流棋士親睦会で久津知子女流二段とこの将棋を指し、山田流を採用した私が劣勢に陥った。私が不利な方を持って指していたのだから、どうりで不利になるわけだった。
Fuj氏が来た。よくもわるくも、場の空気が変わった。
大盤解説は、ついで、というわけではないが、後手が早めに△4三銀と上がり、先手が仕掛ける順もやった。
ある程度手順が進んだあと、大野七段がどちら持ちか、私たちに聞く。私は「振り飛車」と答えたが、その局面を一瞥したFuj氏、
「居飛車ですね」
と即答した。「端歩の突き合いがないから…」
果たしてそうで、手順が進むと、居飛車優勢になった。Fuj氏の定跡通も相当なものだ。どうも彼も、私より強いということが分かった。
さらにU君が顔を見せる。ここまでいずれも、土・日教室の常連だ。新規のお客様の来席は、もう少しの時間が要るようである。
そろそろ指導対局に移ってもらいたいが、Fuj氏の発言が多く、大盤解説がのびのびになっている。1時間ばかり経って、ようやく指導対局となった。
(つづく)