もう何度も書いているが、私は奨励会員の棋力を高く評価している。
大野教室には生徒に研修会員もいるが、彼らはそろって実力者で、対局した私もかなり分が悪い。奨励会員はその彼らより強いのだから、奨励会有段に至ってはどのくらいの強さなんだ、と恐れおののくのだ。
女流王座戦が5年前に創設されて、主催社は当初から、奨励会員の参加を認めた。が、まあそんなわけだから、これをやったらタイトルホルダーは奨励会員一色になってしまうのではないか、と私は危惧した。
果たして第5期までは奨励会員の天下で、女流棋士は顔色(がんしょく)なしだった。
そして第6期の今期は、本戦準決勝で、里見香奈女流四冠(奨励会三段)VS香川愛生女流三段、西山朋佳奨励会女流三段VS伊藤沙恵女流二段というカードが実現した。香川女流三段、伊藤女流二段は元奨で、それぞれ2011年・4級、2014年・1級で退会している。
対奨励会員になみなみならぬ闘志を燃やしている女流棋士といえば、奨励会未経験者は上田初美女流三段、経験者は香川女流三段の名が浮かぶ。
また伊藤女流二段は前期の挑戦者で、加藤桃子女流王座をあと一歩のところまで追い詰めた。さらにさかのぼれば、第1期の本戦準決勝でも二人は対決しており、これに勝った加藤奨励会1級が決勝五番勝負も勝ち、初代女流王座に就いた経緯がある。
いずれにしても、準決勝の2局は、おもしろいカードになったのである。
ところが――。
準決勝第1局の伊藤女流二段―西山奨励会三段戦は、8月24日に行われた。
第1図は中盤の局面。
ここから△5五銀▲6九飛△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩△7六飛▲8七歩△6六銀▲6五銀△8六飛▲同歩△5七銀成(第2図)と進んで、後手快勝。
天王山に打った銀が手厚い。以下中央に殺到して、伊藤女流二段に粘る余地を与えなかった。
伊藤女流二段はふだん早指しで、本局に至るまで、バキバキと対戦相手をなぎ倒してきた。
その伊藤女流二段でさえ、現役奨励会三段の前では惨敗してしまう。恐るべき三段の力である。
その3日後、今度は里見女流四冠―香川女流三段戦が行われた。
第1図から△5四歩▲同歩△同金▲2四歩△4六歩▲同歩△6五歩▲同歩△2四歩▲4七金△2三角▲7七桂△4五歩▲6六銀右△4六歩▲同金△6四歩▲同歩△6五歩▲同桂△6四金▲5三桂成△6五金▲6二成桂△6六金▲4五歩(第2図)と進んで、以下先手勝ち。
香川女流三段は△5四歩から動いたが、うまくいかなかった。6筋からの攻めが強引で、飛車を見捨てて△6六金と突っ込んだが、里見女流四冠に慌てず▲4五歩とフタをされ、香川女流三段の攻めが切れてしまった。
大事な準決勝なのに、香川女流三段はなぜもっと大事に指さなかったのだろう。こんなイチかバチかの攻めに出なくてもよかったのに…。
「奨励会三段」の影におびえ、玉砕覚悟の決死行に出たように思えてならないのだ。
ああ、奨励会三段の強さよ。伊藤女流二段も香川女流三段も強豪だが、まったく問題にしなかった。
そんな二人の対局だから、挑戦者決定戦は大いに期待できた。が、結果は里見女流四冠の快勝。ちょっと拍子抜けで、これがどうにも理解できない。
もっとも、先日終了した奨励会三段リーグでは、里見奨励会三段が7勝11敗、西山奨励会三段が10勝8敗だった。やはり西山奨励会三段は強いのだ。
話を戻すが、本戦トーナメント表を見た時、左右の山から、里見女流四冠と西山奨励会三段が勝ちあがってくると(ほとんどの将棋ファンが)予想した。そして結果もそうなった。
だが、簡単に予想が当たるようではダメなのである。このままでは女流棋士の存在意義が危ぶまれる。女流棋士のいっそうの奮起を望む。
大野教室には生徒に研修会員もいるが、彼らはそろって実力者で、対局した私もかなり分が悪い。奨励会員はその彼らより強いのだから、奨励会有段に至ってはどのくらいの強さなんだ、と恐れおののくのだ。
女流王座戦が5年前に創設されて、主催社は当初から、奨励会員の参加を認めた。が、まあそんなわけだから、これをやったらタイトルホルダーは奨励会員一色になってしまうのではないか、と私は危惧した。
果たして第5期までは奨励会員の天下で、女流棋士は顔色(がんしょく)なしだった。
そして第6期の今期は、本戦準決勝で、里見香奈女流四冠(奨励会三段)VS香川愛生女流三段、西山朋佳奨励会女流三段VS伊藤沙恵女流二段というカードが実現した。香川女流三段、伊藤女流二段は元奨で、それぞれ2011年・4級、2014年・1級で退会している。
対奨励会員になみなみならぬ闘志を燃やしている女流棋士といえば、奨励会未経験者は上田初美女流三段、経験者は香川女流三段の名が浮かぶ。
また伊藤女流二段は前期の挑戦者で、加藤桃子女流王座をあと一歩のところまで追い詰めた。さらにさかのぼれば、第1期の本戦準決勝でも二人は対決しており、これに勝った加藤奨励会1級が決勝五番勝負も勝ち、初代女流王座に就いた経緯がある。
いずれにしても、準決勝の2局は、おもしろいカードになったのである。
ところが――。
準決勝第1局の伊藤女流二段―西山奨励会三段戦は、8月24日に行われた。
第1図は中盤の局面。
ここから△5五銀▲6九飛△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩△7六飛▲8七歩△6六銀▲6五銀△8六飛▲同歩△5七銀成(第2図)と進んで、後手快勝。
天王山に打った銀が手厚い。以下中央に殺到して、伊藤女流二段に粘る余地を与えなかった。
伊藤女流二段はふだん早指しで、本局に至るまで、バキバキと対戦相手をなぎ倒してきた。
その伊藤女流二段でさえ、現役奨励会三段の前では惨敗してしまう。恐るべき三段の力である。
その3日後、今度は里見女流四冠―香川女流三段戦が行われた。
第1図から△5四歩▲同歩△同金▲2四歩△4六歩▲同歩△6五歩▲同歩△2四歩▲4七金△2三角▲7七桂△4五歩▲6六銀右△4六歩▲同金△6四歩▲同歩△6五歩▲同桂△6四金▲5三桂成△6五金▲6二成桂△6六金▲4五歩(第2図)と進んで、以下先手勝ち。
香川女流三段は△5四歩から動いたが、うまくいかなかった。6筋からの攻めが強引で、飛車を見捨てて△6六金と突っ込んだが、里見女流四冠に慌てず▲4五歩とフタをされ、香川女流三段の攻めが切れてしまった。
大事な準決勝なのに、香川女流三段はなぜもっと大事に指さなかったのだろう。こんなイチかバチかの攻めに出なくてもよかったのに…。
「奨励会三段」の影におびえ、玉砕覚悟の決死行に出たように思えてならないのだ。
ああ、奨励会三段の強さよ。伊藤女流二段も香川女流三段も強豪だが、まったく問題にしなかった。
そんな二人の対局だから、挑戦者決定戦は大いに期待できた。が、結果は里見女流四冠の快勝。ちょっと拍子抜けで、これがどうにも理解できない。
もっとも、先日終了した奨励会三段リーグでは、里見奨励会三段が7勝11敗、西山奨励会三段が10勝8敗だった。やはり西山奨励会三段は強いのだ。
話を戻すが、本戦トーナメント表を見た時、左右の山から、里見女流四冠と西山奨励会三段が勝ちあがってくると(ほとんどの将棋ファンが)予想した。そして結果もそうなった。
だが、簡単に予想が当たるようではダメなのである。このままでは女流棋士の存在意義が危ぶまれる。女流棋士のいっそうの奮起を望む。