一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

中原の名局・2

2016-09-02 23:51:01 | 名局
今日9月2日は、中原誠十六世名人の69歳の誕生日。おめでとうございます。
では、中原十六世名人の名局を紹介する。
今回紹介するのは、第33期名人戦第7局である。相手は大山康晴十段。二人は2年前にも同じ舞台で戦い、中原挑戦者がフルセットの末名人を奪取し、将棋界の歴史が動いた。
本局、もし大山挑戦者が勝てば、歴史が巻き戻るという、将棋界注目の大一番だった。

第33期名人戦七番勝負第7局
昭和49年6月6日、7日
於:東京都港区「福田家」
持ち時間:各9時間

▲名人 中原誠
△十段 大山康晴

第1図までの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲2五歩△3三角▲6八玉△4二銀▲7八玉△6二玉▲5六歩△7二玉▲3六歩△8二玉▲5八金右△7二銀▲4六歩△5四歩
▲3七桂△2二飛▲4五歩△4三銀▲4四歩△同銀▲6八銀△4二飛▲2四歩△同歩▲4五歩△5三銀▲3三角成△同桂▲2四飛△4五桂▲同桂△同飛▲2一飛成△5一金左
▲1一竜△4六桂▲5九金引△3八桂成▲5七銀右△4九成桂(第1図)

後手番大山十段の作戦は三間飛車。後手番でのそれはとても珍しい。
中原名人は囲いを最小限に済ませ、▲4五歩の早仕掛け。今の棋士は100%穴熊を目指すから、絶対にお目にかからない順だ。
△4九成桂までと進んで、次の手が中原流。

第1図以下の指し手。▲6六桂△5九成桂▲同 金△6四歩▲4六香△2五飛▲4三香成 △6二銀▲4四角△2一歩▲2六歩△4五飛▲2一竜△9二玉▲4二歩△6三角▲4一歩成△同角▲5四桂△5八歩
▲同金△7一銀▲5三桂△4四飛▲同成香△1四角▲6一桂成△同金▲2五歩△2六角▲4三成香△6五桂▲1二飛△4一歩▲5二金△同金▲同成香△5七桂成▲同金△2二歩(第2図)

▲6六桂が中原流。桂が入れば▲7四桂打を見ている。
以下中原名人が快調に攻め、アマ同士なら先手快勝というところ。しかし相手は受けの大山である。しぶとく受けて、容易に土俵を割らない。△2二歩が味な好手だ。

第2図以下の指し手。▲1三飛成△2五角▲4一竜△3六角▲7九金△5四角▲5三成香△2七角成▲7一竜△8二銀▲7二竜△同馬▲2二竜△5二歩▲2六竜△5三歩▲2二竜△7一金▲5五桂△6一香(第3図)

▲2二同飛成は△4四角があるので、中原名人は▲1三飛成。大山十段は二枚角を駆使して遠くから受ける。一枚は犠牲にしたものの、馬を自陣に引いて、先手の攻め駒を一掃した。
第3図は後手陣が見違えるように固くなり挑戦者が十分に見えるが、ここで名人に名手が出る。

第3図以下の指し手。▲9六歩(途中図)

△5四歩▲4三桂成△4八飛▲5二成桂△6五桂▲5九銀打△4九飛成▲5八金△5五歩▲6六歩△5六歩▲6五歩 △4五馬▲6七銀打△6五歩▲6一成桂△同金▲6四香△5一金
▲6三桂△6六桂▲8八玉△5八桂成▲同銀上△4四馬▲7七角△2二馬▲同角成△4二竜▲3三角△2九飛▲4二角成△同金▲5五馬△2五飛成▲4五歩△2二角▲3三歩△5七歩成
▲同銀△5四歩▲7二飛(第4図)

ここで中原名人は▲9六歩(途中図)。自玉の懐を拡げ、敵玉に圧力をかけた名手といわれる。
以下も凄まじい攻め合いになったが、駒得の中原名人のほうに余裕があった。
馬取りの△5四歩を放置して、▲7二飛。ようやく勝敗の帰趨が見えてきた。

第4図以下の指し手。△5三金▲6五馬 △7四金▲同馬△同歩▲6二飛成△5五角▲6六銀右△6四角▲7二金△6三金▲同竜(投了図)
まで、161手で中原名人の勝ち。

大山十段の粘りがすさまじかったが、▲6三同竜まで、挑戦者が刀折れ矢尽きて投了となった。以下△1九角成は、▲6四歩と馬道を止めて、先手必勝である。
大山十段を返り討ちにした中原名人は、第一人者の地位を確固たるものにしたのだった。

難敵を降して、中原名人が3連覇を飾った。この後名人戦では、大内延介八段、米長邦雄八段の挑戦を退け、昭和51年、永世名人の資格を得る。しかし5期のうち4期が4勝3敗のフルセットで、その道のりは平坦ではなかった。
永世名人の重みは、そのくらいのものである。
コメント (3)
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