「今日は竜王戦(5組昇級決定戦)があったんですけど、増田君(康宏四段)にボロボロにされてしまいまして、贈呈式に間に合っちゃったんですね」
携帯中継もあったのに、早く終わって申し訳ない。私が本来ここにいてはいけないんです、ということらしかった。
もっとも教授のことだから、しっかり将棋は指したのだろう。
続いて上野裕和五段。「次は相振り飛車の本を出す予定です。現在はこれまで出た相振り飛車の本をすべて買って、勉強しているところです」
上野五段は、2013年の技術部門大賞受賞者。この前年の贈呈式で、「来年は大賞を獲ります」と宣言したのは記憶に新しい。次は相振り飛車の本で大賞を狙っているようだ。
続いて美馬和夫氏。アマ強豪が登壇するのは珍しいが、先ほどの鈴木大介八段のスピーチを聞けば、「四間飛車名局集」は二人の共著といえる。
「鈴木先生とのやりとりは楽しい時間でした。私は還暦を過ぎましたが、スタートラインに立った気持ちです」
続いて渡部愛女流初段。指導棋士はこの時間指導対局中なので、スピーチは珍しい。
「今年は関東交流会にも呼んでいただきました。贈呈式には4年連続の参加です」
将棋ペンクラブは女流棋士から敬遠されている気がするのだが、それだけに渡部女流初段の厚意はうれしい。
続いてバトルロイヤル風間氏。「週刊将棋に4コママンガを32年間連載していたんですが、休刊してしまいました。現在はネットで『オレたち将棋ん族ZOKU』をアップしています」
これは有料である。念のため。
続いてライターの後藤元気氏。「このたび『将棋観戦記コレクション』を出しました。『あとがき』を見てください」
この本はあまり話題になっていないが、かなりおもしろいと思う。古今東西の名観戦記が選りすぐって収められているのだから、おもしろくないわけがない。私も機会があったら買おうと思う。
窪田七段が戻ってきたが、スピーチは拒絶のポーズ。いったんスピーチは終わりとし、ここから指導対局が始まった。長野県上田氏など、すでに2人が着席。定員3人なのでTod氏は迷っているふうだったが、私が背中を押して、3人目の席に着いた。しかし時は7時40分を過ぎている。全局終局はしないだろう。
幹事のWas氏が来たので、しばしおしゃべり。Was氏、というか編集部は会報のさらなる内容向上を目指しているようで、私にも意見を求められた。
「おもしろいと思いますよ。だけど○○さん、あの人はなんでページ数が少ないの? あの内容なら、私なら4ページは書けますよ」
など、ちょっと話が弾みそうだったのだが、Kan氏の進行によるプレゼントコーナーが始まったりして、中途で終わってしまった。
三浦弘行九段が見えた。三浦九段も将棋ペンクラブをひいきにしてくれている。
私は長崎県川棚「あんでるせん」のマスターの言葉を思い出す。
「世の中に『忙しい』を口癖にしている人がいますね。だけど『忙しい』は何かに失敗した時の言い訳をあらかじめ言ってるんですね。たとえばここへ来たいと思ったら、どんなに忙しくても、時間をやりくりして来ますね」
三浦九段、木村八段、勝又教授にはこれがピタリと当てはまる。
私は食事に精を出す。小鉢に入っているのは何かと思ったら、ちらし寿司だった。
これは、う~む。今年は料理が安いかな?
さて、プレゼントコーナーである。私の抽選番号は「41」で、下1ケタ「1」が呼ばれた。
会場前方には色紙や著書が並べられている。もうだいぶハケたはずだが、色紙が何枚か残っている。ここが将棋ペンクラブ独特で、みんな花より団子、すなわち色紙より著書を手に取るのだ。
渡部女流初段の色紙も残っていた。…あっ! Osa氏に取られた!
Osa氏には昨年だったか、熊倉紫野女流初段の色紙を争いジャンケンをしたが、負けた。今回、またも一足先に持ってかれた。
私は気を取り直し、先崎学九段の「棋は対話」をいただいた。ちなみに3年前は米長邦雄永世棋聖の「忍」をいただいた。つまり師弟の色紙が揃ったわけである。ただ、どちらも落款がないのが残念だ。
指導対局は佳境に入っている。ふだんは対局者の木村晋介会長も、今年は見物組だ。
Tod氏は飛香落ちで挑んでいたが、私と指す時は私が二枚落としている。この辺のTod氏の考え方がよく分からない。局面はTod氏が劣勢。ほかの2局も上手持ちだが、どうなるか。
三浦九段のスピーチになった。「このたびは皆さんおめでとうございます」
三浦九段は先年、17歳年下のお相手と結婚した。これだけいいことがあったら、将棋の成績で均衡を取りそうなものだがあべこべ?で、九段は先ごろ竜王戦の挑戦者になった。新婚パワーはまだ続いていたということか。七番勝負では熱戦を期待したい。
大平武洋六段が手持無沙汰のようだったので、話かけてみる。
「大平先生、いつもブログを拝見しております」
「はい」
「先生、毎日更新されてますが、大変でしょうねぇ」
「はあ…でも1日でも休んじゃうと、そのまま続けて休みそうで…」
「ああそれ、分かります!」
同じブロガーとして、私もヒザをポンと打ちたくなったところである。さっきのスピーチもおもしろかったし、大平六段と飲んだら、いろいろ楽しい話を聞かせてくれそうだ。
Tag氏がバトルロイヤル氏に似顔絵を描いてもらった。これが吹き出すくらいによく似ている。毎度毎度ブログに書いているが、バトル氏の似顔絵は名人級だ。Tag氏はさっきも白鳥士郎氏にサインをもらっていたし、今日は最高の日になったのではないか。
先崎九段にも声を掛けてみる。
「先崎先生、はじめまして。あの、先生の色紙をいただきました。いつもエッセイ読んでますぅ。先生はあれ、鉛筆で書いていらっしゃるんですか?」
「ペンです」
「ああ、手書きということですよね」
「はい」
「でも、修正とかめんどうじゃないですか? しないんですか?」
「直しません」
原稿の直しをしない、はスゴイことである。私など、いったんアップした記事を何回修正しているか分からない。
さて、宴の時間も終わりに近づいた。
最後は恒例の三本締めである。将棋ペンクラブはこれが好きなのだ。
「パパパン、パパパン、パパパン、パン!」
を3回やって、幕。
と、呼ばれてもいないのに窪田七段が壇上に上がり、何事かを話し始めた。
しかし私たちは若干シラケている。窪田先生、棋士になって本当によかったですね、ということだ。
私は二次会には行かない。会場を出ると、アカシヤ書店の星野氏が受付をしていた。みなが談笑している時も、いつ来るか分からない客のために、こうして番をしていたのだ。キラリと光る仕事ではないか。
表に出ると、木村八段と佐藤圭司氏がいた。
「木村先生、王位戦は最終局ですね。私、深浦戦を思い出してしまって…」
「ハハハ」
「ガンバッテください」
私はかなり失礼な言い方をしてしまったのだが、木村八段は明るく笑い飛ばした。
最終局は、木村八段の勝ちに乗った。
(おわり)
携帯中継もあったのに、早く終わって申し訳ない。私が本来ここにいてはいけないんです、ということらしかった。
もっとも教授のことだから、しっかり将棋は指したのだろう。
続いて上野裕和五段。「次は相振り飛車の本を出す予定です。現在はこれまで出た相振り飛車の本をすべて買って、勉強しているところです」
上野五段は、2013年の技術部門大賞受賞者。この前年の贈呈式で、「来年は大賞を獲ります」と宣言したのは記憶に新しい。次は相振り飛車の本で大賞を狙っているようだ。
続いて美馬和夫氏。アマ強豪が登壇するのは珍しいが、先ほどの鈴木大介八段のスピーチを聞けば、「四間飛車名局集」は二人の共著といえる。
「鈴木先生とのやりとりは楽しい時間でした。私は還暦を過ぎましたが、スタートラインに立った気持ちです」
続いて渡部愛女流初段。指導棋士はこの時間指導対局中なので、スピーチは珍しい。
「今年は関東交流会にも呼んでいただきました。贈呈式には4年連続の参加です」
将棋ペンクラブは女流棋士から敬遠されている気がするのだが、それだけに渡部女流初段の厚意はうれしい。
続いてバトルロイヤル風間氏。「週刊将棋に4コママンガを32年間連載していたんですが、休刊してしまいました。現在はネットで『オレたち将棋ん族ZOKU』をアップしています」
これは有料である。念のため。
続いてライターの後藤元気氏。「このたび『将棋観戦記コレクション』を出しました。『あとがき』を見てください」
この本はあまり話題になっていないが、かなりおもしろいと思う。古今東西の名観戦記が選りすぐって収められているのだから、おもしろくないわけがない。私も機会があったら買おうと思う。
窪田七段が戻ってきたが、スピーチは拒絶のポーズ。いったんスピーチは終わりとし、ここから指導対局が始まった。長野県上田氏など、すでに2人が着席。定員3人なのでTod氏は迷っているふうだったが、私が背中を押して、3人目の席に着いた。しかし時は7時40分を過ぎている。全局終局はしないだろう。
幹事のWas氏が来たので、しばしおしゃべり。Was氏、というか編集部は会報のさらなる内容向上を目指しているようで、私にも意見を求められた。
「おもしろいと思いますよ。だけど○○さん、あの人はなんでページ数が少ないの? あの内容なら、私なら4ページは書けますよ」
など、ちょっと話が弾みそうだったのだが、Kan氏の進行によるプレゼントコーナーが始まったりして、中途で終わってしまった。
三浦弘行九段が見えた。三浦九段も将棋ペンクラブをひいきにしてくれている。
私は長崎県川棚「あんでるせん」のマスターの言葉を思い出す。
「世の中に『忙しい』を口癖にしている人がいますね。だけど『忙しい』は何かに失敗した時の言い訳をあらかじめ言ってるんですね。たとえばここへ来たいと思ったら、どんなに忙しくても、時間をやりくりして来ますね」
三浦九段、木村八段、勝又教授にはこれがピタリと当てはまる。
私は食事に精を出す。小鉢に入っているのは何かと思ったら、ちらし寿司だった。
これは、う~む。今年は料理が安いかな?
さて、プレゼントコーナーである。私の抽選番号は「41」で、下1ケタ「1」が呼ばれた。
会場前方には色紙や著書が並べられている。もうだいぶハケたはずだが、色紙が何枚か残っている。ここが将棋ペンクラブ独特で、みんな花より団子、すなわち色紙より著書を手に取るのだ。
渡部女流初段の色紙も残っていた。…あっ! Osa氏に取られた!
Osa氏には昨年だったか、熊倉紫野女流初段の色紙を争いジャンケンをしたが、負けた。今回、またも一足先に持ってかれた。
私は気を取り直し、先崎学九段の「棋は対話」をいただいた。ちなみに3年前は米長邦雄永世棋聖の「忍」をいただいた。つまり師弟の色紙が揃ったわけである。ただ、どちらも落款がないのが残念だ。
指導対局は佳境に入っている。ふだんは対局者の木村晋介会長も、今年は見物組だ。
Tod氏は飛香落ちで挑んでいたが、私と指す時は私が二枚落としている。この辺のTod氏の考え方がよく分からない。局面はTod氏が劣勢。ほかの2局も上手持ちだが、どうなるか。
三浦九段のスピーチになった。「このたびは皆さんおめでとうございます」
三浦九段は先年、17歳年下のお相手と結婚した。これだけいいことがあったら、将棋の成績で均衡を取りそうなものだがあべこべ?で、九段は先ごろ竜王戦の挑戦者になった。新婚パワーはまだ続いていたということか。七番勝負では熱戦を期待したい。
大平武洋六段が手持無沙汰のようだったので、話かけてみる。
「大平先生、いつもブログを拝見しております」
「はい」
「先生、毎日更新されてますが、大変でしょうねぇ」
「はあ…でも1日でも休んじゃうと、そのまま続けて休みそうで…」
「ああそれ、分かります!」
同じブロガーとして、私もヒザをポンと打ちたくなったところである。さっきのスピーチもおもしろかったし、大平六段と飲んだら、いろいろ楽しい話を聞かせてくれそうだ。
Tag氏がバトルロイヤル氏に似顔絵を描いてもらった。これが吹き出すくらいによく似ている。毎度毎度ブログに書いているが、バトル氏の似顔絵は名人級だ。Tag氏はさっきも白鳥士郎氏にサインをもらっていたし、今日は最高の日になったのではないか。
先崎九段にも声を掛けてみる。
「先崎先生、はじめまして。あの、先生の色紙をいただきました。いつもエッセイ読んでますぅ。先生はあれ、鉛筆で書いていらっしゃるんですか?」
「ペンです」
「ああ、手書きということですよね」
「はい」
「でも、修正とかめんどうじゃないですか? しないんですか?」
「直しません」
原稿の直しをしない、はスゴイことである。私など、いったんアップした記事を何回修正しているか分からない。
さて、宴の時間も終わりに近づいた。
最後は恒例の三本締めである。将棋ペンクラブはこれが好きなのだ。
「パパパン、パパパン、パパパン、パン!」
を3回やって、幕。
と、呼ばれてもいないのに窪田七段が壇上に上がり、何事かを話し始めた。
しかし私たちは若干シラケている。窪田先生、棋士になって本当によかったですね、ということだ。
私は二次会には行かない。会場を出ると、アカシヤ書店の星野氏が受付をしていた。みなが談笑している時も、いつ来るか分からない客のために、こうして番をしていたのだ。キラリと光る仕事ではないか。
表に出ると、木村八段と佐藤圭司氏がいた。
「木村先生、王位戦は最終局ですね。私、深浦戦を思い出してしまって…」
「ハハハ」
「ガンバッテください」
私はかなり失礼な言い方をしてしまったのだが、木村八段は明るく笑い飛ばした。
最終局は、木村八段の勝ちに乗った。
(おわり)