一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2016九州旅行・3

2017-01-19 20:34:22 | 旅行記・九州編
(13日のつづき)
丹波義隆に似ているマスターはいつもと変わらぬ容貌、雰囲気。客席をひととおり眺めたあと、私のところで一瞬目を止めた。ように見えた。
マスターが手形のオモチャを取り出して、みなが拍手をする。いよいよマジックの開演である。
まずマスターが懐から指環を取り出す。それを掌に乗せ、10度…20度…と、指環を浮かせてゆく。今度は客席から指環を所望するが、客席も心得ていて、ほうぼうから指環が出た。
マスターはそのうちの1ヶをマッチ箱に入れて振る。最初はカラカラ鳴っていたが、やがて音がしなくなる。箱を開けると、中身は空だった。その指環は、マスターのネックレスにくくられていたのだった…。
と、私にとってはお馴染みのマジックであるが、いつ見ても見事な手際に感心してしまう。
マジックはESPカードに移る。カウンターの4人が「○」「□」「△」「+」「波形」を1枚ずつ選び、それをマスターが当ててゆく、というものだ。
これもすべて正解。今回は女性客が約8割なので、例年になくハイトーンの声が上がる。
私はといえば、昨年と比べて、マスターの顔がボンヤリしていた。これは私の矯正視力が落ちたことを意味している。さらに父の病状や会社の存亡が脳裏にチラつく。背中は脂肪吸引の治療中だし、耳鳴りは相変わらずひどい。先月抜歯した左上奥歯の跡はまだ痛いし、その反対側の歯ぐきにも痛みがある。さっきまでMさんとの談笑はどこへやら、今の私は笑顔の中にも翳があるというふうだった。
マスターが客席からお札と硬貨を所望する。私は万が一のため一式所持しているが、ここからでは遠い。結局カウンター廻りにいた女性陣がすべての種類を出した。
マスターは千円札を取り、中に浮かせた。この辺りからマスターのマジックが凄味を見せてくる。今日マスターのマジックを初めて見る人が羨ましい。私もあのころのように、目をひんむいて驚いてみたい。
今回もビールジョッキに人数分の割り箸を入れ、その先に書いてある数字を持った客が呼ばれる。抽選役は「3」の女性だ。私は「30」番だが、いつ引かれるか…。
東京から来た人が聞かれる。私を含めて4人だった。あとはG県から来ているMさんがいるが、ほかは九州、長崎県、佐賀県、福岡県が多いようだ。
いまやマスターのマジックは世界的に知られているが、やはり訪れるのは近場が多いようだ。
マジックは快調に進む。しかし私の前の小学生は退屈なようで、椅子の上で体をくねらせている。
あんでるせんは子供の入場を断っている、という噂を聞いたことがある。その真偽は分からぬが、もし本当なら、それは子供の存在が場の空気を乱すからだと思う。
今も前の子供は退屈そうに体をよじっている。私たち大人にはマスターのマジックが不思議だが、子供たちは毎日が不思議体験なのだ。
次は「恋人当て」だ。若手男性タレント9人のカードが提示され、選ばれた女性の好みの男性を当てる。カードは女性タレント版もあるのだが、今年は提示されなかった。
今回は好みの順位1~6位を当てる。途中1人外したが、マスターは順番に当てていった。1位のみを当てるわけではないから、これも相当なスゴ技だろう。
マスターが壁に掛けてあるハンバーガーの絵に手を覆うと、本物のハンバーガーが飛び出て来た。これはセロのマジックでも見たことがあるが、中で見ると迫力が違う。
私はあんでるせんではクジ運がいい方で、「大吉」は自分の名前やイラストを当ててもらう、「小吉」はサイコロを振る、などがある。が、今年はまだ私の番号が引かれていない。もっとも私は今年シケた面をしており、これではクジ運にも見放される形だ。
マスターが1.5リットルのペットボトルを出す、中味はコーラだ。これにマスターが気合を入れると、ラベルが中に入ってしまった。
マスターがスプーンを取り出した。これをグニャグニャ曲げるのはいつものこと。マスターはかじってしまう。それはキレイな歯型を造って、欠けた。マスターが食べてしまったのだ。続けて100円玉もかじる。同様に歯型に欠けた。
私たちは驚きを通り越して呆然とし、あたりがシーンと静まり返った。
「本気を出すとこうなっちゃうんですよね」
とマスター。このマジックを見られてお代は食事代のみとは、やはりおトクだ。
千円札に紙を当て、ボールペンでブスッと刺す。ボールペンを抜いて紙を外しても、お札は無傷だった。
「名前と悩み当て」は私の2列前のご婦人が当たった。当然どちらも当てられたが、悩みは「娘の結婚」。この悩みも当然看破され、マスターは「娘さんは結婚します」と断言した。
ここにいない人の運命も分かるのかと、私たちは驚いた。
ちなみに私も過去3回「あなたは将来結婚します」と言われた実績があるのだが、もはや結婚の影も形もない。
マジックも最終盤だ。今度は客の生年月日とイラスト当て。「31」の女性が当たったのだが、彼女の生年月日を任意の5人が当てるのだ。マジック開始。いままでは数字盤を隠したり、マスターが最後に一言加えたりしていたのだが、今回はみんなに文字盤が見えたままだ。
すべてが終わり彼女の生年月日を確認すると、ピタリだった。この辺、私はわざとボカして書いているが、百聞は一見に如かずで、読者の皆様には実際に見に行ってください、としか言いようがない。
彼女が描いたイラストも、マスターがあらかじめ描いたイラストと寸分たがわなかった。
これにてマジックは終了。たっぷり2時間半以上で、ネタは50を優に越えただろう。時刻は午後5時をとうに過ぎ、5時の回の客が入ってきてしまったほどだった。
何と、今年はクジがまったく当たらなかった。私はただの観戦者で、ここ数年ではかなり珍しかった。
最後はマスターが用意した、ぐにゃぐにゃに曲がったスプーンやフォークを購入(300円)するのが流れとなっている。
だが私は出遅れ、いちばん後ろになってしまった。Mさんはとうに会計を済まし、店を出ている。
私の番になり、私はカウンターにある紙切れを所望する。お札に穴を開けた時、そのカバーに使われたものだ。
マスターと握手した後、脳天に気を入れてもらう。そして「腰を…」とマスター。私は腰痛がひどく毎日がつらいのだが、マスターはお見通しである。私は後ろを向き、腰にピリッ、とやってもらった。
スプーンにサインをしてもらうが、会計まではまだ時間がある。左を向けばマスターが所在なさげにしており、話をする絶好のチャンスが訪れた。
が、私はそれをしなかった。マスターとはマジック時のお付き合いのみがいいのだ。
さて、次回の来店は2017年12月16日(土)を予定している。しかし来年(2017年)は激動の一年が予想され、イメージ通り来られるかどうか分からない。
「(あなたに)来てほしくなったら(テレパシーで)呼びますよ」
と、マスターが誰にともなく言った。
もし私が来年もここに来られたら、私は1年間を幸せに過ごしたということになるのだが…。
(つづく)
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