表に出ると黄昏時だった。さすがに西の外れで、東京なら日が暮れている。
川棚駅に戻ると、駅員さんが「ななつ星が来るよ!」と教えてくれた。周遊型寝台列車「ななつ星in九州」がここ川棚で一旦停車するという。
私はまだ切符を買っていないのだが、好意でホームに入れてもらった。
まだななつ星は入線しない。その間私は駅員さんと、豪華列車について話した。ただ、私が他社の豪華列車に不案内で、駅員さんもそれほど詳しくなかったから、話はあまり弾まなかった。
ななつ星が入線した。特急電車にほとんど乗らず、普通列車派の私には縁のない列車だが、それだけに無料で見られるのはうれしい。私はななつ星に遭遇するほうで、これで3回目だろうか。こげ茶のボディーに高級感があった。
数枚写真に撮ったら、ななつ星はもう出発してしまった。時間が押していたのだ。
私は17時32分発の上り列車に乗る。車中では昼前に買った缶コーヒーを飲む。これがこよなく美味いのだ。
18時19分、諫早着。島原鉄道に乗る前に、ここで夕食を摂るつもりだ。が、駅の様子がおかしい。改札口付近が全体的に簡易っぽいのだ。変なところから出てくると、何と諫早の駅舎がなくなっていた。諫早が長崎新幹線の接続駅かどうかは知らぬが、取り壊すほど老朽していただろうか。
駅前に出る。昨年閉店した大型スーパーには、まだテナントが入っていないようだ。ここはおにぎりでもお茶でも安かったのだが、どうしてつぶれちゃったのだろう。
昨年も入った中華料理屋を目指した。店に入り、ちゃんぽんを頼む。たぶん、昨年と同じだ。
みかんがサービスで置いてあったので、いただく。無料大好きである。
ちゃんぽんは確かな味だった。リンガーハットもいいが、街中のちゃんぽんも美味い。
満腹になって、19時06分発の島原鉄道に乗る。意外に客が乗っていて、私は前方のロングシートに座った。明るければボックスシートに座りたいところだが、夜では車窓は関係ない。
島原外港に近づくにつれ客は降りるが、意外に乗ってくる客も多い。それでも客が減ってきて、首を右に曲げると正面が見える。ヘッドライトが暗闇を照らし、左右の家々が一瞬だけ見える。夜ならではの光景で、昼ほどではないが見応えはある。
20時21分、島原外港着。かつてはこの先も数十キロ線路が伸びていたが、2008年に廃止されてしまった。民間ローカル線の経営状態はどこも厳しいが、ここまでの路線が残っているだけでもありがたいというべきだろう。
今夜の宿は島原東洋シティホテルである。港からやや離れた高台にあるらしい。何となくそっち方面に向かっていたら、スーパーがあったので、入る。旅先の夜、灯りがあると寄ってみたくなるのは人情である。
弁当類が2割引になっていたので、のり弁当を翌日の朝食用に買った。さらにモナカアイス。こちらは130円が半額だった。
ホテルにチェックイン。部屋に入るとずいぶん狭かったが、前日のホテルが広かったのだ。
ちょっぴり緩くなったアイスを食べながらテレビを点けるが、年末なので土曜ワイド劇場をやってない。スマホを繰るが、最近は動きが重いので、動画を観ることもできない。年末まで有効のau1万円クーポン券があるので、帰京したら買い替えようか。
「日本のスゴイ所ベスト50」を何となく見た。有料ビデオのシステムもなく、あんでるせんの余韻に浸って、就寝した。
翌18日(日)。前日まではあんでるせんがメインだったので、今日が観光らしい観光といえる。
今日はフェリーで熊本に渡り、博多へ行って空路で帰る予定だ。
熊本へは07時10分の第1便があったが、それは早すぎる。08時35分の第2便利用とし、それに合わせて起床、チェックアウトをした。なお、島原半島からは高速船も通じているが、私が利用するのはもちろんフェリーである。
港に向かう途中、自販機でペットボトルのお茶を買う。定価で買うのは屈辱で、前夜にスーパーで買えばよかったのだが、この時は思い至らなかった。
九商フェリーの「くまもとフェリー」は大型船。入船の時、シャトルバスの整理券をもらった。熊本港から駅まで、無料バスが出ているのだ。
乗船客は意外に多かった。私は優雅に朝食を摂る。旅先では日頃のウサを少しだけ忘れることができる。ただの食事でもこよなく美味いのである。
私はデッキに出るが、九州とはいえ冬の朝は寒い。心にもすきま風が吹いていたので、早々に客席に戻った。
09時35分、定刻に着。すぐにシャトルバス乗り場に向かうが、バスはライトバン、客は私も含めて5人だった。
今日も天気はよい。歩道では、中学生と思しき団体が、マラソンをしていた。その脇では関係者が声援を送っていた。実にいい光景である。そんな中クルマですっ飛ばすのは申し訳ない気がする。
中学生はどこまで行ってもパラパラと走っている。先頭とビリの差が大きいのもマラソンの特長で、私の中学生の時は、ビリに近いほうだった。
定刻よりかなり早く、バスは熊本駅に着いた。だが、ふだん利用している駅の裏側に着いたようだ。玄関口には早くも門松が飾られていた。年末のこの雰囲気が私は好きである。
構内に入ってなんとなく迷っていると、ヴォランティアと思しき女性が表側の改札を教えてくれた。熊本城や水前寺公園に向かう旨を告げると、市電の1日乗車券は施設の割引もあるから便利だと教えてくれた。
「えきマチ1丁目」なる施設があったが、今日も意外に時間がなく、素通りせざるを得なかった。
駅前から健軍町行きの市電に乗る。乗車して、熊本市電1日乗車券を買った。500円だから3回乗れば元が取れるが、微妙なところだ。
発車してすぐ、志村けんのアナウンスがあり、沿線の観光名所を紹介していた。…が、よく聞くとおかしい。これはコロッケの声帯模写だった。そういえば、コロッケ氏が熊本復興のため、このアナウンスを無料で引き受けた、の記事を読んだことがある。
辛島町で下りてみる。対角の敷地ではクリスマスイベントをやっている。昨年も見たやつだ。…が、渡ってみると、まだ開会前だった。
かなり抵抗があるが、熊本城に向かう。今まで何度も天守閣に登る機会があったのに見送っていたら、登る機会が失われてしまった…。
大通りをしばらく歩くと、熊本城天守閣が遠くに見えた。異常があるようには見えないが、壁が茶色っぽい。そして何よりその横に組まれた足場が、この天守閣が修復中であることを物語っていた。
(22日につづく)
川棚駅に戻ると、駅員さんが「ななつ星が来るよ!」と教えてくれた。周遊型寝台列車「ななつ星in九州」がここ川棚で一旦停車するという。
私はまだ切符を買っていないのだが、好意でホームに入れてもらった。
まだななつ星は入線しない。その間私は駅員さんと、豪華列車について話した。ただ、私が他社の豪華列車に不案内で、駅員さんもそれほど詳しくなかったから、話はあまり弾まなかった。
ななつ星が入線した。特急電車にほとんど乗らず、普通列車派の私には縁のない列車だが、それだけに無料で見られるのはうれしい。私はななつ星に遭遇するほうで、これで3回目だろうか。こげ茶のボディーに高級感があった。
数枚写真に撮ったら、ななつ星はもう出発してしまった。時間が押していたのだ。
私は17時32分発の上り列車に乗る。車中では昼前に買った缶コーヒーを飲む。これがこよなく美味いのだ。
18時19分、諫早着。島原鉄道に乗る前に、ここで夕食を摂るつもりだ。が、駅の様子がおかしい。改札口付近が全体的に簡易っぽいのだ。変なところから出てくると、何と諫早の駅舎がなくなっていた。諫早が長崎新幹線の接続駅かどうかは知らぬが、取り壊すほど老朽していただろうか。
駅前に出る。昨年閉店した大型スーパーには、まだテナントが入っていないようだ。ここはおにぎりでもお茶でも安かったのだが、どうしてつぶれちゃったのだろう。
昨年も入った中華料理屋を目指した。店に入り、ちゃんぽんを頼む。たぶん、昨年と同じだ。
みかんがサービスで置いてあったので、いただく。無料大好きである。
ちゃんぽんは確かな味だった。リンガーハットもいいが、街中のちゃんぽんも美味い。
満腹になって、19時06分発の島原鉄道に乗る。意外に客が乗っていて、私は前方のロングシートに座った。明るければボックスシートに座りたいところだが、夜では車窓は関係ない。
島原外港に近づくにつれ客は降りるが、意外に乗ってくる客も多い。それでも客が減ってきて、首を右に曲げると正面が見える。ヘッドライトが暗闇を照らし、左右の家々が一瞬だけ見える。夜ならではの光景で、昼ほどではないが見応えはある。
20時21分、島原外港着。かつてはこの先も数十キロ線路が伸びていたが、2008年に廃止されてしまった。民間ローカル線の経営状態はどこも厳しいが、ここまでの路線が残っているだけでもありがたいというべきだろう。
今夜の宿は島原東洋シティホテルである。港からやや離れた高台にあるらしい。何となくそっち方面に向かっていたら、スーパーがあったので、入る。旅先の夜、灯りがあると寄ってみたくなるのは人情である。
弁当類が2割引になっていたので、のり弁当を翌日の朝食用に買った。さらにモナカアイス。こちらは130円が半額だった。
ホテルにチェックイン。部屋に入るとずいぶん狭かったが、前日のホテルが広かったのだ。
ちょっぴり緩くなったアイスを食べながらテレビを点けるが、年末なので土曜ワイド劇場をやってない。スマホを繰るが、最近は動きが重いので、動画を観ることもできない。年末まで有効のau1万円クーポン券があるので、帰京したら買い替えようか。
「日本のスゴイ所ベスト50」を何となく見た。有料ビデオのシステムもなく、あんでるせんの余韻に浸って、就寝した。
翌18日(日)。前日まではあんでるせんがメインだったので、今日が観光らしい観光といえる。
今日はフェリーで熊本に渡り、博多へ行って空路で帰る予定だ。
熊本へは07時10分の第1便があったが、それは早すぎる。08時35分の第2便利用とし、それに合わせて起床、チェックアウトをした。なお、島原半島からは高速船も通じているが、私が利用するのはもちろんフェリーである。
港に向かう途中、自販機でペットボトルのお茶を買う。定価で買うのは屈辱で、前夜にスーパーで買えばよかったのだが、この時は思い至らなかった。
九商フェリーの「くまもとフェリー」は大型船。入船の時、シャトルバスの整理券をもらった。熊本港から駅まで、無料バスが出ているのだ。
乗船客は意外に多かった。私は優雅に朝食を摂る。旅先では日頃のウサを少しだけ忘れることができる。ただの食事でもこよなく美味いのである。
私はデッキに出るが、九州とはいえ冬の朝は寒い。心にもすきま風が吹いていたので、早々に客席に戻った。
09時35分、定刻に着。すぐにシャトルバス乗り場に向かうが、バスはライトバン、客は私も含めて5人だった。
今日も天気はよい。歩道では、中学生と思しき団体が、マラソンをしていた。その脇では関係者が声援を送っていた。実にいい光景である。そんな中クルマですっ飛ばすのは申し訳ない気がする。
中学生はどこまで行ってもパラパラと走っている。先頭とビリの差が大きいのもマラソンの特長で、私の中学生の時は、ビリに近いほうだった。
定刻よりかなり早く、バスは熊本駅に着いた。だが、ふだん利用している駅の裏側に着いたようだ。玄関口には早くも門松が飾られていた。年末のこの雰囲気が私は好きである。
構内に入ってなんとなく迷っていると、ヴォランティアと思しき女性が表側の改札を教えてくれた。熊本城や水前寺公園に向かう旨を告げると、市電の1日乗車券は施設の割引もあるから便利だと教えてくれた。
「えきマチ1丁目」なる施設があったが、今日も意外に時間がなく、素通りせざるを得なかった。
駅前から健軍町行きの市電に乗る。乗車して、熊本市電1日乗車券を買った。500円だから3回乗れば元が取れるが、微妙なところだ。
発車してすぐ、志村けんのアナウンスがあり、沿線の観光名所を紹介していた。…が、よく聞くとおかしい。これはコロッケの声帯模写だった。そういえば、コロッケ氏が熊本復興のため、このアナウンスを無料で引き受けた、の記事を読んだことがある。
辛島町で下りてみる。対角の敷地ではクリスマスイベントをやっている。昨年も見たやつだ。…が、渡ってみると、まだ開会前だった。
かなり抵抗があるが、熊本城に向かう。今まで何度も天守閣に登る機会があったのに見送っていたら、登る機会が失われてしまった…。
大通りをしばらく歩くと、熊本城天守閣が遠くに見えた。異常があるようには見えないが、壁が茶色っぽい。そして何よりその横に組まれた足場が、この天守閣が修復中であることを物語っていた。
(22日につづく)