現金2,000円だけを持って、ホテルを出た。ガストまでは3分ほどの距離である。
店は2階にあったが、1階の壁には「やわらか生牛肉ステーキ」の幟が立っていた。
店に入ると、この時間にしてはけっこうな客が入っていた。各テーブルの上にメニューが立てられ、ここにも同様のメニューが大書されていた。このメニューを頼め、という店の指令である。
だからこれを頼んだが、これにライスととうもろこしのポタージュスープのセットを加えると、かなりの額になった。しかも夜10時を過ぎているので、深夜料金10%が加算される可能性が高い。
計算すると1,541円になった。私としてはけっこうな出費で、ガストに入ったことを軽く後悔した。
運ばれてきたステーキは、あれっ? と思うくらい肉が小さかった。メニューの写真と乖離がありすぎるのだ。
しかしここで文句を言うわけにもいかない。とりあえず食すが、ガストといえば棋友の同席が当たり前だったから、なんとなくさみしい。とりあえず完食したが、会計はやはり1,542円だった。しかもTカードへのポイント積算が可能だったが、私はカードを置いてきていた。
これはまずい展開である。前回のよい思い出は吹っ飛び、この先の旅が不安になってきた。
ホテルに戻り、翌日の宿泊地を検討する。今回は島原半島を通って熊本―博多のルートだが、島原半島の付け根の諫早に泊まるか、島原港の近くにするか、一考を要する。
決めきれずに、寝てしまった。
翌17日(土)。今日は年に1度のお楽しみ、川棚でマジックを愉しむ。
まず、スマホから今夜のホテルを予約した。島原港近くのビジネスホテルで、素泊まり3,000円は価格破壊だ。こんな値段になるから、ユースホステルは衰退の一途をたどってしまう。
しばし時間があるので、周辺を散策しながら長崎駅へ向かう。
まず、ホテルの裏側に向かうと、そこがオランダ坂だった。オランダ坂は命名の妙の代表格で、訪れてみればただの坂だが、つい記念写真を撮りたくなる。
天気は曇りだが、今日はほとんど関係ない。私は引き返し駅方向に向かう。ちょっと右に逸れたようで、長崎新地の中華街に出た。その手前に中国風の門を模したような広場があり、何かのイヴェントに使えそうだった。
中華街に入るが、まだ朝なので店は開いていない。しかしこの雰囲気は中華街のそれで、ぶらぶら歩くだけでも楽しい。
駅方向に軌道を修正すると、路面電車の通りに出た。長崎は路面電車の街である。乗車料金は120円と安く乗ってみたいが、路面電車は見るものである。
路線は細い道に入った。出島和蘭商館跡の資料館の裏手にあたるところで、ここは何度も訪れている。狭い道の中央を路面電車が通り、電車マニアには堪らない区間だ。
長くは待たせず、電車が通る。私は慎重に写真を撮った。誰に見せるわけでもない自己満足の世界である。
出島資料館はまたもパスして駅に向かう。古風な建物が見えてきたが、文明堂総本店である。ここでカステラを買うのが本筋だが、まだお土産を買うのは早い。
長崎駅に着いた。長崎での朝食は吉野家の牛丼と決まっている。私は歩道橋を渡って吉野家へ入る。牛丼はもちろん旨かった。
長崎駅構内に入ると、広場では何かのイヴェントが始まるふうだった。この時期の風物詩で、確か去年も一部観覧しているはずである。しかし今日はその時間はなく、券売機で切符を買い、改札を抜けた。
10時発の快速シーサイドライナーは気動車だが、車体は青いボディーの車両と、昭和風のデザインの車両の4両編成で、私は後者の車両に乗った。
進行方向左手に座った。しばらくすると、隣のホームにラッピング車両が入線してきた。Kis-My-Ft2のようだ。何人かが記念写真を撮っていた。
私の列車は定刻に発車。空は晴れ間が出てきて、まぶしいくらいだ。
私の後ろの客は小さな子供3人を含む4人旅のようだ。子供の発する言葉が新鮮で楽しい。
沿線は何かの工事の真っ最中。長崎新幹線の工事だろうか。
喜々津でハッとする美人が乗ってきた。旅ではモデルと見紛う美人に遭遇することがある。彼女が東京在住だったらそれなりの職業に就いているだろう。
しばらく走ると、左手に大村湾が見渡せた。車窓を愛でる。これが列車旅の醍醐味である。
11時11分、川棚下車。12時の予約には十分すぎる時間である。あんでるせんを一瞥したあと、私は近くのスーパーに向かう。ここで廉価の缶コーヒーを買うのが定跡である。近くをぶらぶらすることで、テンションを高める意味もある。
スーパーでは缶コーヒー3本と、スナック菓子2袋を買った。
駅前に戻り、あんでるせん向かいのバス待合所で休憩。12時の5分前になったのでいよいよ表に出るが、近くに同好の士が全然いない。
ついに12時を過ぎた。…おかしい。どうして人がいないのだ?
店の前に行くと、「本日満席です」の札が掛けてあった。しばらく逡巡したが、私は2階に上がってみる。思い切ってドアを開けると、信じられない光景が広がっていた。
(13日につづく)
店は2階にあったが、1階の壁には「やわらか生牛肉ステーキ」の幟が立っていた。
店に入ると、この時間にしてはけっこうな客が入っていた。各テーブルの上にメニューが立てられ、ここにも同様のメニューが大書されていた。このメニューを頼め、という店の指令である。
だからこれを頼んだが、これにライスととうもろこしのポタージュスープのセットを加えると、かなりの額になった。しかも夜10時を過ぎているので、深夜料金10%が加算される可能性が高い。
計算すると1,541円になった。私としてはけっこうな出費で、ガストに入ったことを軽く後悔した。
運ばれてきたステーキは、あれっ? と思うくらい肉が小さかった。メニューの写真と乖離がありすぎるのだ。
しかしここで文句を言うわけにもいかない。とりあえず食すが、ガストといえば棋友の同席が当たり前だったから、なんとなくさみしい。とりあえず完食したが、会計はやはり1,542円だった。しかもTカードへのポイント積算が可能だったが、私はカードを置いてきていた。
これはまずい展開である。前回のよい思い出は吹っ飛び、この先の旅が不安になってきた。
ホテルに戻り、翌日の宿泊地を検討する。今回は島原半島を通って熊本―博多のルートだが、島原半島の付け根の諫早に泊まるか、島原港の近くにするか、一考を要する。
決めきれずに、寝てしまった。
翌17日(土)。今日は年に1度のお楽しみ、川棚でマジックを愉しむ。
まず、スマホから今夜のホテルを予約した。島原港近くのビジネスホテルで、素泊まり3,000円は価格破壊だ。こんな値段になるから、ユースホステルは衰退の一途をたどってしまう。
しばし時間があるので、周辺を散策しながら長崎駅へ向かう。
まず、ホテルの裏側に向かうと、そこがオランダ坂だった。オランダ坂は命名の妙の代表格で、訪れてみればただの坂だが、つい記念写真を撮りたくなる。
天気は曇りだが、今日はほとんど関係ない。私は引き返し駅方向に向かう。ちょっと右に逸れたようで、長崎新地の中華街に出た。その手前に中国風の門を模したような広場があり、何かのイヴェントに使えそうだった。
中華街に入るが、まだ朝なので店は開いていない。しかしこの雰囲気は中華街のそれで、ぶらぶら歩くだけでも楽しい。
駅方向に軌道を修正すると、路面電車の通りに出た。長崎は路面電車の街である。乗車料金は120円と安く乗ってみたいが、路面電車は見るものである。
路線は細い道に入った。出島和蘭商館跡の資料館の裏手にあたるところで、ここは何度も訪れている。狭い道の中央を路面電車が通り、電車マニアには堪らない区間だ。
長くは待たせず、電車が通る。私は慎重に写真を撮った。誰に見せるわけでもない自己満足の世界である。
出島資料館はまたもパスして駅に向かう。古風な建物が見えてきたが、文明堂総本店である。ここでカステラを買うのが本筋だが、まだお土産を買うのは早い。
長崎駅に着いた。長崎での朝食は吉野家の牛丼と決まっている。私は歩道橋を渡って吉野家へ入る。牛丼はもちろん旨かった。
長崎駅構内に入ると、広場では何かのイヴェントが始まるふうだった。この時期の風物詩で、確か去年も一部観覧しているはずである。しかし今日はその時間はなく、券売機で切符を買い、改札を抜けた。
10時発の快速シーサイドライナーは気動車だが、車体は青いボディーの車両と、昭和風のデザインの車両の4両編成で、私は後者の車両に乗った。
進行方向左手に座った。しばらくすると、隣のホームにラッピング車両が入線してきた。Kis-My-Ft2のようだ。何人かが記念写真を撮っていた。
私の列車は定刻に発車。空は晴れ間が出てきて、まぶしいくらいだ。
私の後ろの客は小さな子供3人を含む4人旅のようだ。子供の発する言葉が新鮮で楽しい。
沿線は何かの工事の真っ最中。長崎新幹線の工事だろうか。
喜々津でハッとする美人が乗ってきた。旅ではモデルと見紛う美人に遭遇することがある。彼女が東京在住だったらそれなりの職業に就いているだろう。
しばらく走ると、左手に大村湾が見渡せた。車窓を愛でる。これが列車旅の醍醐味である。
11時11分、川棚下車。12時の予約には十分すぎる時間である。あんでるせんを一瞥したあと、私は近くのスーパーに向かう。ここで廉価の缶コーヒーを買うのが定跡である。近くをぶらぶらすることで、テンションを高める意味もある。
スーパーでは缶コーヒー3本と、スナック菓子2袋を買った。
駅前に戻り、あんでるせん向かいのバス待合所で休憩。12時の5分前になったのでいよいよ表に出るが、近くに同好の士が全然いない。
ついに12時を過ぎた。…おかしい。どうして人がいないのだ?
店の前に行くと、「本日満席です」の札が掛けてあった。しばらく逡巡したが、私は2階に上がってみる。思い切ってドアを開けると、信じられない光景が広がっていた。
(13日につづく)