11月28日(火)は久しぶりに蕨将棋教室に行った。同教室は講師が植山悦行七段で、月2回開講。曜日は不定期だが日曜日が多い。参加費は大人2,500円。開講時間は午後6時~8時だが、毎回自然延長し、9時過ぎに終わる。最近は藤井聡太四段効果で子供たちの参加も多く、植山七段もてんてこまいというところ。28日は火曜日なので生徒の参加も少ないと考え、蕨に出向いたわけだった。
午後から職安に行き、今回も1社手続きをし、1駅先近くにある「小諸そば」で二枚もりを手繰り、京浜東北線に乗って蕨着。駅前の「ぱるる」に入った。
と、1階のエレヴェーター前でFuj氏とバッタリ。Fuj氏に会うのはけっこう久しぶりだ。
しかし私のようなプーはともかく、一流企業に勤めるFuj氏がこの時間ここにいるのがよく分からず、アンタ、ホントに仕事してるのか?と質したくなった。
「室谷さん(由紀女流二段)との将棋は快勝でしたね」
とFuj氏。
「いやそうでもない。あれは時間切れ引き分け」
あれは私がすっぱり決めなければいけなかった。
私が入室すると、W氏は珍客に驚く。実に3月12日以来である。
Fuj氏も続いて入室し、W氏が苦笑い。Fuj氏は最近のプロの指し手を、さっそくW氏に示す。さすがは将棋バカのFuj氏だと、私は呆れるばかりであった。
植山七段はTahah氏、子供3人に指導対局中。すぐ女の子が来たが、W氏の勧めで、私とFuj氏が指すことになった。
Fuj氏との対戦成績は私の14勝18敗。私は棋友との正確な勝敗数は把握しないが、対Fuj戦のそれが分かるのは、Fuj氏が一時期、私との対戦成績を呪文のように唱えていたからである。
そのたびに私が大幅に負け越しているので奮起したら、何とか勝ち星が付くようになった。
ターニングポイントは私の14勝15敗で迎えた30局目で、この将棋、最終盤は私の必勝形だったのに、何と時間が切れて、負け。これに勝てばイーブンだったのに、まったくバカなことをした。
後日の2局も連敗し再び星が開いてきたが、内容的に押された気はサラサラなく、今日も必勝の気構えで臨んだ。
私の先手で、▲7六歩△8四歩。私が矢倉を志向すれば、Fuj氏は急戦で来そう。それで▲5六歩とし、以下中飛車に振った。
△1四歩には挨拶せず、別の手を指す。Fuj氏は△1五歩。まあそうであろう。
私は▲4六銀から▲6七金型に組む。何となく大野流(源一九段)を目指したのだが、ヘボがマネするべきではない。Fuj氏に銀交換され、私のみがその銀を盤上に置くことになり、つまらない展開にしてしまった。
「この時間から濃い戦いだねー」と、自分でカードを作っておきながら、W氏が苦笑した。
第1図以下の指し手。△4五銀▲同銀△同金▲5四歩△5六歩▲同金△6七銀▲4五金△5八銀成▲同金△7七角成▲6四歩△8八飛(第2図)
第1図からFuj氏は△4五銀と打った。形勢はともかく、相手も銀を投入してくれたので、気分的にラクになった。
▲4五同銀△同金は後手の注文通りだが、▲5四歩が期待の一手。歩成を受けるのは利かされだから、Fuj氏は△5六歩と角道を通しつつ金取り。
以下▲5六同金に△6七銀。この進行はFuj氏も読み筋だったろうが私も望むところで、ノータイムで▲4五金と金を取った。以下△5八銀成▲同金となり、この進行は二枚換えで先手も戦えると思った。
だがFuj氏の△7七角成も大きな手で、私は次の△6五飛を防いで▲6四歩を入れねばならず、冷静に考えると先手がわるかった。
第2図以下の指し手。▲5三歩成△5八飛成▲6二と△3三桂▲4六金△4五桂打▲4九金△3七桂成▲同桂△9八竜▲4一銀△3一金▲5二と(第3図)
ここで▲4九金は△5二歩あるいは△8二飛で先手がわるい。私の▲5三歩成は勝負手で、△8二飛なら▲5九歩が生じる。
よってFuj氏も△5八飛成と強く戦い、私も飛車を取る。しかしと金がソッポに行ったのは痛い。
Fuj氏は△3三桂から△4五桂打。私は角を差し上げねばならないが、これでは駒得の利も消え、主張がなくなった。
▲4一銀にも△3一金が冷静な手で、私の▲5二とは冴えないが、銀を助けるにはこれしかない。
次、ある手を指されたら投了級だと思った。
第3図以下の指し手。△4四香▲4二銀△4一金▲同と△4六香▲5二飛(途中図)
△3二金▲4六歩△4七銀▲5八歩△3八銀成▲同金△8九竜(第4図)
第3図では△6六馬を気にしていた。△3九角以下の詰めろだから受けなければならないが、▲5八歩は△同竜で無効。よって▲4八桂ぐらいだが、ここに桂を手放すようでは後手玉へ迫る手段が乏しくなってしまう。
本譜、Fuj氏はさらに駒得を図って△4四香と打ったが、そんなわけで私はホッとした。
私は▲4二銀と絡んだが、Fuj氏は数手後に△4六香と駒得を実現した。
だがここで▲5二飛(途中図)が自慢の一手。5筋の補強をするとともに▲3三銀成以下の詰みを見ている。
Fuj氏も考え△3二金と一枚入れたが、そこで私の▲4六歩が甘かったか。もっと相手玉に迫る手を模索するべきだったかもしれない。
△4七銀の厳しさがよく分からないが、これには▲5八歩がピッタリ。このあたり、Fuj氏が微妙に攻めあぐねていると思った。
第4図以下の指し手。▲3一と△4九銀▲3二と△1三玉▲3九金打△3八銀成▲同玉(第5図)
第4図で▲3一とも好手と思う。ここ▲3一銀不成は王手で一瞬気持ちがいいが、△1三玉で安全地帯に逃げられてしまう。織り込み済みとはいえ端の位が大きく、私は相当うまく指さないと、後手玉を仕留められないのだ。
△4九銀に▲3二と。Fuj氏はノータイムで△1三玉。やはりこの手が切り札だが、今度は私も金を取っているので、バランスは取れている。
▲3九金打△3八銀成に▲同玉。形は▲同金だが、△2九金からバラされてトン死する。ここは私もよく読んでいた。
第5図以下の指し手。△6五角▲5六桂△6六馬▲5七銀△同馬▲同歩△5八銀▲4九香△7八竜(第6図)
Fuj氏は相当考えて△6五角。しかし▲5六桂と受けて、この交換は先手がトクをしたのではないか? よく分からないが、別のいい手があったと思う。
続く△6六馬(ミエミエの詰めろ)には▲5七香の予定。私の持駒が「金金銀銀」となれば相手玉が詰むからカナケは温存したかったのだが、考えているうちに気が変わり、つい▲5七銀と先手を取ってしまった。
Fuj氏も後手は引けないので勢い△同馬と切ったが、▲同歩に次の手が問題だ。
Fuj氏は△5八銀と打った。これは△4七金▲2七玉△3七金▲同玉△3九竜以下の詰めろ。だがいかにも薄い。私は△5八銀で△2七銀を恐れていて、▲同玉△3九竜は先手も相当寒い。以下▲2八金の予定だったが、後手にも△4七金や△5六角▲同歩△3五桂の手段があり、とても生きた心地がしない。やはり▲5七銀は危険だった。
本譜、私は▲4九香。これが当然ながらいい受けで、あれだけ苦戦していた将棋が、いつの間にか先手が勝ちになっている。なんだかキツネにつままれたようだった。
Fuj氏は△7八竜。ここで次の手が明暗を分けた。
(つづく)
午後から職安に行き、今回も1社手続きをし、1駅先近くにある「小諸そば」で二枚もりを手繰り、京浜東北線に乗って蕨着。駅前の「ぱるる」に入った。
と、1階のエレヴェーター前でFuj氏とバッタリ。Fuj氏に会うのはけっこう久しぶりだ。
しかし私のようなプーはともかく、一流企業に勤めるFuj氏がこの時間ここにいるのがよく分からず、アンタ、ホントに仕事してるのか?と質したくなった。
「室谷さん(由紀女流二段)との将棋は快勝でしたね」
とFuj氏。
「いやそうでもない。あれは時間切れ引き分け」
あれは私がすっぱり決めなければいけなかった。
私が入室すると、W氏は珍客に驚く。実に3月12日以来である。
Fuj氏も続いて入室し、W氏が苦笑い。Fuj氏は最近のプロの指し手を、さっそくW氏に示す。さすがは将棋バカのFuj氏だと、私は呆れるばかりであった。
植山七段はTahah氏、子供3人に指導対局中。すぐ女の子が来たが、W氏の勧めで、私とFuj氏が指すことになった。
Fuj氏との対戦成績は私の14勝18敗。私は棋友との正確な勝敗数は把握しないが、対Fuj戦のそれが分かるのは、Fuj氏が一時期、私との対戦成績を呪文のように唱えていたからである。
そのたびに私が大幅に負け越しているので奮起したら、何とか勝ち星が付くようになった。
ターニングポイントは私の14勝15敗で迎えた30局目で、この将棋、最終盤は私の必勝形だったのに、何と時間が切れて、負け。これに勝てばイーブンだったのに、まったくバカなことをした。
後日の2局も連敗し再び星が開いてきたが、内容的に押された気はサラサラなく、今日も必勝の気構えで臨んだ。
私の先手で、▲7六歩△8四歩。私が矢倉を志向すれば、Fuj氏は急戦で来そう。それで▲5六歩とし、以下中飛車に振った。
△1四歩には挨拶せず、別の手を指す。Fuj氏は△1五歩。まあそうであろう。
私は▲4六銀から▲6七金型に組む。何となく大野流(源一九段)を目指したのだが、ヘボがマネするべきではない。Fuj氏に銀交換され、私のみがその銀を盤上に置くことになり、つまらない展開にしてしまった。
「この時間から濃い戦いだねー」と、自分でカードを作っておきながら、W氏が苦笑した。
第1図以下の指し手。△4五銀▲同銀△同金▲5四歩△5六歩▲同金△6七銀▲4五金△5八銀成▲同金△7七角成▲6四歩△8八飛(第2図)
第1図からFuj氏は△4五銀と打った。形勢はともかく、相手も銀を投入してくれたので、気分的にラクになった。
▲4五同銀△同金は後手の注文通りだが、▲5四歩が期待の一手。歩成を受けるのは利かされだから、Fuj氏は△5六歩と角道を通しつつ金取り。
以下▲5六同金に△6七銀。この進行はFuj氏も読み筋だったろうが私も望むところで、ノータイムで▲4五金と金を取った。以下△5八銀成▲同金となり、この進行は二枚換えで先手も戦えると思った。
だがFuj氏の△7七角成も大きな手で、私は次の△6五飛を防いで▲6四歩を入れねばならず、冷静に考えると先手がわるかった。
第2図以下の指し手。▲5三歩成△5八飛成▲6二と△3三桂▲4六金△4五桂打▲4九金△3七桂成▲同桂△9八竜▲4一銀△3一金▲5二と(第3図)
ここで▲4九金は△5二歩あるいは△8二飛で先手がわるい。私の▲5三歩成は勝負手で、△8二飛なら▲5九歩が生じる。
よってFuj氏も△5八飛成と強く戦い、私も飛車を取る。しかしと金がソッポに行ったのは痛い。
Fuj氏は△3三桂から△4五桂打。私は角を差し上げねばならないが、これでは駒得の利も消え、主張がなくなった。
▲4一銀にも△3一金が冷静な手で、私の▲5二とは冴えないが、銀を助けるにはこれしかない。
次、ある手を指されたら投了級だと思った。
第3図以下の指し手。△4四香▲4二銀△4一金▲同と△4六香▲5二飛(途中図)
△3二金▲4六歩△4七銀▲5八歩△3八銀成▲同金△8九竜(第4図)
第3図では△6六馬を気にしていた。△3九角以下の詰めろだから受けなければならないが、▲5八歩は△同竜で無効。よって▲4八桂ぐらいだが、ここに桂を手放すようでは後手玉へ迫る手段が乏しくなってしまう。
本譜、Fuj氏はさらに駒得を図って△4四香と打ったが、そんなわけで私はホッとした。
私は▲4二銀と絡んだが、Fuj氏は数手後に△4六香と駒得を実現した。
だがここで▲5二飛(途中図)が自慢の一手。5筋の補強をするとともに▲3三銀成以下の詰みを見ている。
Fuj氏も考え△3二金と一枚入れたが、そこで私の▲4六歩が甘かったか。もっと相手玉に迫る手を模索するべきだったかもしれない。
△4七銀の厳しさがよく分からないが、これには▲5八歩がピッタリ。このあたり、Fuj氏が微妙に攻めあぐねていると思った。
第4図以下の指し手。▲3一と△4九銀▲3二と△1三玉▲3九金打△3八銀成▲同玉(第5図)
第4図で▲3一とも好手と思う。ここ▲3一銀不成は王手で一瞬気持ちがいいが、△1三玉で安全地帯に逃げられてしまう。織り込み済みとはいえ端の位が大きく、私は相当うまく指さないと、後手玉を仕留められないのだ。
△4九銀に▲3二と。Fuj氏はノータイムで△1三玉。やはりこの手が切り札だが、今度は私も金を取っているので、バランスは取れている。
▲3九金打△3八銀成に▲同玉。形は▲同金だが、△2九金からバラされてトン死する。ここは私もよく読んでいた。
第5図以下の指し手。△6五角▲5六桂△6六馬▲5七銀△同馬▲同歩△5八銀▲4九香△7八竜(第6図)
Fuj氏は相当考えて△6五角。しかし▲5六桂と受けて、この交換は先手がトクをしたのではないか? よく分からないが、別のいい手があったと思う。
続く△6六馬(ミエミエの詰めろ)には▲5七香の予定。私の持駒が「金金銀銀」となれば相手玉が詰むからカナケは温存したかったのだが、考えているうちに気が変わり、つい▲5七銀と先手を取ってしまった。
Fuj氏も後手は引けないので勢い△同馬と切ったが、▲同歩に次の手が問題だ。
Fuj氏は△5八銀と打った。これは△4七金▲2七玉△3七金▲同玉△3九竜以下の詰めろ。だがいかにも薄い。私は△5八銀で△2七銀を恐れていて、▲同玉△3九竜は先手も相当寒い。以下▲2八金の予定だったが、後手にも△4七金や△5六角▲同歩△3五桂の手段があり、とても生きた心地がしない。やはり▲5七銀は危険だった。
本譜、私は▲4九香。これが当然ながらいい受けで、あれだけ苦戦していた将棋が、いつの間にか先手が勝ちになっている。なんだかキツネにつままれたようだった。
Fuj氏は△7八竜。ここで次の手が明暗を分けた。
(つづく)