この11日から、第31期竜王戦・羽生善治竜王と広瀬章人八段の七番勝負が始まった。羽生竜王が防衛すれば、前人未到のタイトル100期。負ければ1991年3月以来の無冠となる。
無冠について一般人は、「ああそうですか」という程度の反応だろうが、将棋ファンにとっては結構な「事件」である。何しろ羽生竜王のタイトル保持は27年半続いている。よって30代後半までの将棋ファンは、羽生竜王の肩書はタイトル名しか知らないのだ。
その羽生竜王が無冠になったら、どんな肩書になるのだろう。
それを考える前に、タイトルを多く獲った大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人が無冠になった際はどうだったのだろう。
大山十五世名人は1973年2月20日、49歳の時に最後のタイトル・王将を失冠。この時点で、タイトルは通算69期だった。名人を失ったのが前年だから、まだ1ヶ月は「前名人」は名乗れたが、潔く「九段」を名乗った。
だが同年秋に毎日新聞社と日本将棋連盟が協議し、10月31日より「永世王将」を名乗ることを許された。当時の山本光春社長は大山永世王将に「これで功成り名とげた心境になられては困る。将棋界の発展のため、今後ますます勝負の道に励んでいただきたい」とハッパをかけたとされる。
大山永世王将は翌年1月8日に十段、8月9日に棋聖と奪還。タイトル保持中の1976年11月17日に、「十五世名人」を襲位した。最終的なタイトル数は80期。
いっぽう中原十六世名人は1982年と1988年に無冠になったが、いずれも「前名人」を名乗り、その期間中にタイトルを獲った。
しかし中原十六世名人は1993年5月21日、またも最後のタイトル・名人を失う。時に45歳で、タイトルは通算64期だった。この時も「前名人」を名乗ることになったが、翌年の4月までに戴冠ならず、日本将棋連盟と話し合いが持たれた。そこで中原十六世名人は「永世十段は、十段戦が発展的解消でなくなったから使ってもいいかな」と、「永世十段」を名乗った。
また、十六世名人の襲位は現役時代の2007年11月17日で、60歳の時だった。
というわけでやっと、羽生竜王が無冠になったら、の検討である。
まず、「前竜王」は名乗らないと思う。それに、現在この称号は廃止されたらしい(追記:廃止されてなかったらしい)。よって、現行の永世称号から名乗ることが考えられる。すなわち、
・永世竜王
・永世名人(十九世名人)
・永世王位
・名誉王座
・永世棋王
・永世王将
・永世棋聖
である。永世位は原則的に引退後に名乗るが、名誉王座は現役でも、満60歳で名乗れる。ただし前述の通り、永世称号のほうも、60歳になったら名乗るのが慣例になっている。
個別に調べていく。永世竜王は、「初代」の渡辺明棋王がいるのに、先んじて名乗ることはしないだろう。
永世名人も同様の理由で、有資格者の谷川浩司十七世名人と森内俊之十八世名人がただの九段なのに、2人飛ばして自分が名乗ることはできまい。
また永世棋王、永世棋聖は、ほかにも有資格者がいるので、やはり名乗りづらいと思われる。
残るは永世王位、名誉王座、永世王将だが、永世王将は昔ならいざ知らず、現在は序列が7位に落ちており、ややプレミアム感に欠ける。
残る2つで考えられるのは名誉王座だ。羽生竜王の王座獲得は、19連覇と5連覇を合わせて24期。名誉王座をほぼ5回獲っている計算だ。3-0のストレート勝ちは13回もあり、ことに第53期から58期までは6期連続である。もはや王座戦の申し子で、手がつけられない。
このまま行けば真っ先に名乗れるのが名誉王座でもあるし、それが12年ほど前倒しになったと考えればよい。
では「名誉王座」が私の答えかと問われれば、応えは「否」である。
実は、最有力の肩書は「九段」だと思う。つまり、タダの九段からまっさらな気持ちで、再びタイトルを目指すのだ。そのほうが羽生竜王らしいと思うのだが、どうだろうか。
無冠について一般人は、「ああそうですか」という程度の反応だろうが、将棋ファンにとっては結構な「事件」である。何しろ羽生竜王のタイトル保持は27年半続いている。よって30代後半までの将棋ファンは、羽生竜王の肩書はタイトル名しか知らないのだ。
その羽生竜王が無冠になったら、どんな肩書になるのだろう。
それを考える前に、タイトルを多く獲った大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人が無冠になった際はどうだったのだろう。
大山十五世名人は1973年2月20日、49歳の時に最後のタイトル・王将を失冠。この時点で、タイトルは通算69期だった。名人を失ったのが前年だから、まだ1ヶ月は「前名人」は名乗れたが、潔く「九段」を名乗った。
だが同年秋に毎日新聞社と日本将棋連盟が協議し、10月31日より「永世王将」を名乗ることを許された。当時の山本光春社長は大山永世王将に「これで功成り名とげた心境になられては困る。将棋界の発展のため、今後ますます勝負の道に励んでいただきたい」とハッパをかけたとされる。
大山永世王将は翌年1月8日に十段、8月9日に棋聖と奪還。タイトル保持中の1976年11月17日に、「十五世名人」を襲位した。最終的なタイトル数は80期。
いっぽう中原十六世名人は1982年と1988年に無冠になったが、いずれも「前名人」を名乗り、その期間中にタイトルを獲った。
しかし中原十六世名人は1993年5月21日、またも最後のタイトル・名人を失う。時に45歳で、タイトルは通算64期だった。この時も「前名人」を名乗ることになったが、翌年の4月までに戴冠ならず、日本将棋連盟と話し合いが持たれた。そこで中原十六世名人は「永世十段は、十段戦が発展的解消でなくなったから使ってもいいかな」と、「永世十段」を名乗った。
また、十六世名人の襲位は現役時代の2007年11月17日で、60歳の時だった。
というわけでやっと、羽生竜王が無冠になったら、の検討である。
まず、「前竜王」は名乗らないと思う。それに、現在この称号は廃止されたらしい(追記:廃止されてなかったらしい)。よって、現行の永世称号から名乗ることが考えられる。すなわち、
・永世竜王
・永世名人(十九世名人)
・永世王位
・名誉王座
・永世棋王
・永世王将
・永世棋聖
である。永世位は原則的に引退後に名乗るが、名誉王座は現役でも、満60歳で名乗れる。ただし前述の通り、永世称号のほうも、60歳になったら名乗るのが慣例になっている。
個別に調べていく。永世竜王は、「初代」の渡辺明棋王がいるのに、先んじて名乗ることはしないだろう。
永世名人も同様の理由で、有資格者の谷川浩司十七世名人と森内俊之十八世名人がただの九段なのに、2人飛ばして自分が名乗ることはできまい。
また永世棋王、永世棋聖は、ほかにも有資格者がいるので、やはり名乗りづらいと思われる。
残るは永世王位、名誉王座、永世王将だが、永世王将は昔ならいざ知らず、現在は序列が7位に落ちており、ややプレミアム感に欠ける。
残る2つで考えられるのは名誉王座だ。羽生竜王の王座獲得は、19連覇と5連覇を合わせて24期。名誉王座をほぼ5回獲っている計算だ。3-0のストレート勝ちは13回もあり、ことに第53期から58期までは6期連続である。もはや王座戦の申し子で、手がつけられない。
このまま行けば真っ先に名乗れるのが名誉王座でもあるし、それが12年ほど前倒しになったと考えればよい。
では「名誉王座」が私の答えかと問われれば、応えは「否」である。
実は、最有力の肩書は「九段」だと思う。つまり、タダの九段からまっさらな気持ちで、再びタイトルを目指すのだ。そのほうが羽生竜王らしいと思うのだが、どうだろうか。