一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

富岡八段の新橋解説会(第31期竜王戦第1局)・1

2018-10-17 01:11:09 | 将棋イベント
第31期竜王戦七番勝負の開始に伴い、今年も東京・新橋で無料の解説会が行われることになった。原則的に2日目の午後6時からである。
通常仕事をしていれば見に行けない時間帯で、もちろん私もそれを覚悟していたが、何と就職活動が長引いて、今年も見に行けることになってしまった。この皮肉をどう捉えたらいいのだろう。まあとりあえず、今期も新橋に向かったのであった。
新橋にはちょっと早めに着いた。近くに小諸そばがあるので、入る。小諸そばといえば、数ヶ月前に御○町店に入った時、二枚もりを頼んだのに、店側と客の間違いで私が大もりを食べさせられる不運があった。それ以来その店には入らず、しかもその間、値上げもあった。その後小諸そばには別の店舗で、2~3回利用しただけだった。食い物の怨みは恐ろしいのである。
今回も二枚もりを頼んだが、出てきたそれは、大もり程度の量だった。たぐってみると、そばが伸びている。これは茹で置きしているからやむを得ないが、大ざるにあった最後の量が大もり程度しかなかったものを、二枚もりとして提供したように思われた。
……どうも小諸そばとは、縁が切れたようである。
解説会場に行くと、椅子席はほぼ満席になっていた。あたりの景色は春の名人戦の時と変わらず、東京在住なのに懐かしく感じる。
6時になって、どこからか汽笛が鳴った。ここは鉄道発祥の地、新橋である。定刻を5分過ぎたころ、解説の3人が現れた。
「みなさんこんばんは。富岡英作八段です」
「ええっ、自分で段位言うんですか?」
と藤森哲也五段が驚く。「藤森哲也五段です」
じゃあ私も、という感じで、「藤森奈津子(女流)四段です」
「藤森奈津子さんと私が大内延介九段門下で、藤森さんが妹弟子になりますかね」
と富岡八段。藤森女流四段は、
「藤森哲也五段は塚田泰明九段の弟子なので、私とはおいの関係になります」
と言う。実の親子なのに、妙な表現になった。
さて、早速解説である。私の最終確認では、実戦は105手目▲6四角成まで進んでいた。

於:東京都渋谷「セルリアンタワー能楽堂」
▲竜王 羽生善治
△八段 広瀬章人

初手からの指し手。▲2六歩△8四歩▲7六歩△8五歩▲7七角△3四歩▲6八銀△3二金▲7八金△7七角成▲同銀△2二銀▲3八銀△6二銀▲4六歩△4二玉▲4七銀△7四歩▲3六歩△6四歩▲3七桂△6三銀▲6八玉△7三桂(第1図)

竜王戦は持ち時間8時間で夕食休憩なしなので、名人戦より進行が早い。現局面はすでに終盤戦なので、記譜並べも速い。
「△2二銀では△4二銀もありましたが、最近は△2二銀が多いですね」
と富岡八段。この辺の理由は、私たちには高度すぎて分からない。

第1図以下の指し手。▲4八金△6二金▲2九飛△6五歩▲1六歩△1四歩▲9六歩△9四歩▲2五歩△3三銀▲5六銀△8一飛(第2図)

富岡八段「▲4八金ですね。昔は▲5八金がふつうだったんですが、ここ2~3年で指され始めて、流行しています。今は主流派になりましたね。
▲2九飛。この形が角打ちのスキを消して、受けに強い」
なお今回も「懸賞次の一手」があり、当選者1名には豪華賞品を用意しているという。

第2図以下の指し手。▲6六歩△同歩▲同銀△5四銀▲5八玉△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8一飛▲7五歩△8四飛▲7四歩△同飛(第3図)

「▲6六歩と積極的に行きましたね」
と藤森五段。本局も藤森五段が、聞き手の役回りだ。
▲5八玉に一同が唸る。富岡八段「これが最近の角換わりの特徴なんですね。バランス型で、どちらから攻められてもいいようにしてるんです」
そういえば春の名人戦で、佐藤天彦名人が居玉で戦い、解説の鈴木大介九段が、「攻められた逆側に逃げるようにしている」と述べていた。

本譜▲7五歩には、△7六角(参考1図)があるように見える。しかし富岡八段は
「△7六角には▲4七玉の味がいいんですね」
と言う。「以下△8七角成で飛車先が突破できそうですが、そこで▲8二歩が好手。△8二同飛▲7一角に△7二飛は▲6二角成~▲8七金があります」
しかしこの手順は、▲6二角成△同飛▲8七金の時、△6六飛で後手もやれる気がする。
となれば△7六角に飛び込みたい気もするがそこはそれ、2日制の持ち時間8時間なので、早期の決戦は避けたいのだろう。似たようなことが、名人戦でもあった。果たして本譜も、穏やかに△8四飛だった。
羽生竜王は▲7四飛と取り込むが、△同飛が金当たり。これはこれで、先手も忙しい。

第3図以下の指し手。▲7六歩△同飛▲6七銀△7四飛▲8三角△8四飛▲5六角成△8三角▲同馬△同飛▲7四歩△6五桂▲6四角△8二歩(第4図)

「この辺は、角は換わってますが相掛かりの将棋に似ています」
と富岡八段。
第3図で羽生竜王の答えは、▲7六歩の打ち捨てだった。△同飛に▲6七銀。
富岡八段「不思議な手順ですねえ。1歩損して、(銀を引くことで)1手損している」
しかし羽生竜王は5六に馬を作った。広瀬八段は△8三角と馬を消しに来たが、△7四角なら▲同馬△同飛▲8三角で、千日手も考えられた。富岡八段は、
「7四に打ったら羽生竜王はどうしたのかネ」
と訝る。「でも広瀬八段も、この辺は羽生さんの真意を測りかねていたと思います」
△8二歩まで進み、次の手を富岡八段が並べようとしたところで、大盤周辺の電気が消えた。スタッフが慌ててどこかへ駆けて行く。しかしいつまで経っても電機は復旧せず、解説者の3人は手持無沙汰である。
私はといえばイライラしてきて、もう帰っちゃおうと思った。

(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする