今年も長崎県川棚の「あんでるせん」に行くつもりだ。現在私は無職の身。もはや行く資格はない気もするが、とりあえず予約だけしようと思った。
行く日は毎年、12月の第3土曜と決めている。今年は12月15日だ。予約は2ヶ月前から可能なので10月15日に電話を掛ける手もあったが、あまりスムーズに行き過ぎてカウンター席を取れてしまったら、ほかの客に申し訳ない。あの特等席は、お初の人が楽しむべきなのだ。それで、翌16日に電話をした。だがこれが繋がらない。翌17日に掛けても同じだった。
あんでるせんには2つ電話があって、ひとつは喫茶店、ひとつは自宅?と思う。私は自宅に掛けていたのではないか。現在は喫茶店でパフォーマンス中だから、それなら電話には出られない。
もうひとつの電話番号をスマホに入れてなかったので、ネットで調べた。
フッ……。1999年から毎年お邪魔しているのに、素人みたいなことをしている。
とあるブログに引っ掛かった。これがイラスト付きの紹介で、すこぶる分かりやすい。
ここに電話番号が紹介されていて、私が掛けたのとは別のナンバーだった。
だがこのブログには、「予約は2ヶ月前の1日から」ともあった。つまり12月15日希望なら、10月1日から予約が可能、ということだろうか。私が知らなかった情報で、これが本当なら、私は相当出遅れたことになる。
早速あんでるせんに掛けてみる。コールが10回目になり、さすがに切ろうとしたら、出た。相手はママさんで、たぶんマスターの奥さんだろう。12月15日の予約をお願いすると、満席、とのことだった。アチャー。
だが出遅れたとはいえ、私はほぼ2ヶ月前に電話している。それでこの事態は、初めてだった。
「あのー、何とかなりませんか」
「無理ですねえ。今年はほぼ埋まっています。24日なら空いてますよ」
24日って、クリスマスイブじゃないか。まあその日にマジックを堪能するのも悪くはないが、私は「12月の第3土曜」と決めているのだ。それに、飛行機はマイルの特典航空券で行くと決めている。24日はさすがに適用されないだろう。「あとは来年の1月ですね。こちらは(たぶん)カウンターで観られますよ」
ママさんは散文的に言う。
「いや私、15日に見たいんです。だから2ヶ月前から予約したんですけど、あの、2ヶ月前の1日からに変わったみたいですね」
「あぁ……ウン、そうなんですよ、もう毎日電話を取るのが面倒で、1日の朝8時からにしたんです。当日は電話が鳴りっ放しですよ」
キャアー、という歓声が電話口の向こうから聞こえた。今日は10月17日の水曜日。週の真ん中でも、たぶんお客は満席なのだ。
「……。そうですか知らなくて…………。この時期は何回か伺ってるんですが…………」
「やっぱり週末はすぐ埋まちゃうんですよね」
「はあ…………」
私は電話を切らない。妙なところでしつこいのである。
「…………お客さんはひとりですか」
「はい、私だけです」
「そうですか。13、14、15、16……33、34…。じゃあおひとりだけ入れましょう」
「ありがとうございます!」
若干自己嫌悪はあったが、粘り勝ちだ。
「当日は12時ごろまでに入ってください。終わるのも5時半過ぎになりますけど、大丈夫ですか」
「はい、何度か伺ってますから。川棚駅前の西肥バスセンターの向かいですよね。11時に伺えればそれがいちばんいいんですよね」
自然と、弁舌が軽くなった。
氏名とケータイ番号を告げて、電話を切った。
マスターはよく、客があんでるせんに行く日は運命づけられているという。とすれば、今年は24日が私の運命だった気もする。今回はそれに逆らってしまった形だが、どうなのだろう。
それはともかく、改めてこの人気である。繰り返すが、以前はもう少し余裕があった。
マジックはここ数年2回公演だったが、例のブログには「1回」と記してあった。あるいは昨年も、1回だったかもしれない。だがこれが本当なら、予約数は半分に減ったわけだから、1回のみの公演がすぐ定員になるのは、やむを得ないことだった。
ちなみに私が1999年に伺った当時は日に3回公演で、3回目は、客が私を含めて3人しかいなかった。あれは何だったのだろう。
何はともあれ、今年もあんでるせん行きが決まった。問題は飛行機の手配である。
行く日は毎年、12月の第3土曜と決めている。今年は12月15日だ。予約は2ヶ月前から可能なので10月15日に電話を掛ける手もあったが、あまりスムーズに行き過ぎてカウンター席を取れてしまったら、ほかの客に申し訳ない。あの特等席は、お初の人が楽しむべきなのだ。それで、翌16日に電話をした。だがこれが繋がらない。翌17日に掛けても同じだった。
あんでるせんには2つ電話があって、ひとつは喫茶店、ひとつは自宅?と思う。私は自宅に掛けていたのではないか。現在は喫茶店でパフォーマンス中だから、それなら電話には出られない。
もうひとつの電話番号をスマホに入れてなかったので、ネットで調べた。
フッ……。1999年から毎年お邪魔しているのに、素人みたいなことをしている。
とあるブログに引っ掛かった。これがイラスト付きの紹介で、すこぶる分かりやすい。
ここに電話番号が紹介されていて、私が掛けたのとは別のナンバーだった。
だがこのブログには、「予約は2ヶ月前の1日から」ともあった。つまり12月15日希望なら、10月1日から予約が可能、ということだろうか。私が知らなかった情報で、これが本当なら、私は相当出遅れたことになる。
早速あんでるせんに掛けてみる。コールが10回目になり、さすがに切ろうとしたら、出た。相手はママさんで、たぶんマスターの奥さんだろう。12月15日の予約をお願いすると、満席、とのことだった。アチャー。
だが出遅れたとはいえ、私はほぼ2ヶ月前に電話している。それでこの事態は、初めてだった。
「あのー、何とかなりませんか」
「無理ですねえ。今年はほぼ埋まっています。24日なら空いてますよ」
24日って、クリスマスイブじゃないか。まあその日にマジックを堪能するのも悪くはないが、私は「12月の第3土曜」と決めているのだ。それに、飛行機はマイルの特典航空券で行くと決めている。24日はさすがに適用されないだろう。「あとは来年の1月ですね。こちらは(たぶん)カウンターで観られますよ」
ママさんは散文的に言う。
「いや私、15日に見たいんです。だから2ヶ月前から予約したんですけど、あの、2ヶ月前の1日からに変わったみたいですね」
「あぁ……ウン、そうなんですよ、もう毎日電話を取るのが面倒で、1日の朝8時からにしたんです。当日は電話が鳴りっ放しですよ」
キャアー、という歓声が電話口の向こうから聞こえた。今日は10月17日の水曜日。週の真ん中でも、たぶんお客は満席なのだ。
「……。そうですか知らなくて…………。この時期は何回か伺ってるんですが…………」
「やっぱり週末はすぐ埋まちゃうんですよね」
「はあ…………」
私は電話を切らない。妙なところでしつこいのである。
「…………お客さんはひとりですか」
「はい、私だけです」
「そうですか。13、14、15、16……33、34…。じゃあおひとりだけ入れましょう」
「ありがとうございます!」
若干自己嫌悪はあったが、粘り勝ちだ。
「当日は12時ごろまでに入ってください。終わるのも5時半過ぎになりますけど、大丈夫ですか」
「はい、何度か伺ってますから。川棚駅前の西肥バスセンターの向かいですよね。11時に伺えればそれがいちばんいいんですよね」
自然と、弁舌が軽くなった。
氏名とケータイ番号を告げて、電話を切った。
マスターはよく、客があんでるせんに行く日は運命づけられているという。とすれば、今年は24日が私の運命だった気もする。今回はそれに逆らってしまった形だが、どうなのだろう。
それはともかく、改めてこの人気である。繰り返すが、以前はもう少し余裕があった。
マジックはここ数年2回公演だったが、例のブログには「1回」と記してあった。あるいは昨年も、1回だったかもしれない。だがこれが本当なら、予約数は半分に減ったわけだから、1回のみの公演がすぐ定員になるのは、やむを得ないことだった。
ちなみに私が1999年に伺った当時は日に3回公演で、3回目は、客が私を含めて3人しかいなかった。あれは何だったのだろう。
何はともあれ、今年もあんでるせん行きが決まった。問題は飛行機の手配である。