26日(金)は埼玉県和光市「長照寺」で、「第2回大いちょう寄席」があった。これは和光市在住の湯川博士・恵子夫妻が発起人になり、地元の人に笑いを届けようという趣旨のもと(たぶん)、昨年より始まったものである。なお「大いちょう」とは、敷地内にある樹齢700年のそれを指している。
今年は早々と6月に案内をいただいたのだが、昨年はともかく、今年は私も就職を決めているだろうから、寄席に参加するつもりは毛頭なかった。だから開催日も忘れていたくらいなのだが、就職活動はかくのごとくで、図らずも参加の運びになったのである。
池袋から東武東上線に乗り、和光市下車。まずはランチだが、昨年も入った「CoCo壱番屋」に再び入った。
こういう時、私はベーシックのカレーで十分なのだが、ビーフカレーが597円でちょいと高い。いろいろ迷ってスクランブルエッグカレー(638円)にしたのだが、後で見たらベーシックとして、ポークカレー(484円)がしっかり記載されていた。154円の追加出費は微妙に大きかったが、カレー自体は、抜群に美味かった。
昨年は長照寺までバスを利用したが、意外に近かった。よって今年は徒歩で行く。
長照寺には13時ジャストに着いた。開場ピッタリである。受付には昨年と同様、岡松三三さんがいた。昨年は受付にずいぶん時間がかかったが、今年は予め名簿が用意され、スムーズだ。木戸銭は500円、さらに任意で懇親会がある(1,000円)。これは迷ったが、とりあえずお金だけ払った。
記念品の、銀杏の実をいただく。銀杏はもちろん、境内の大いちょうから獲れたものだ。
客殿に入ると、恵子さんがいた。
「あらあ、今年は来ないと思ってた。ブログ読んだけど」
「……」
それは私の求職が長引いているからで、返す言葉がない。
二間ぶち抜きの和室の中央には、見慣れぬゆるキャラがいた。その名も「わこうっち」で、関係者と記念写真を撮っている。それはいいが、昨年はこの時間で満員だった。今年はずいぶん空席が目立つ。
博士氏にも会う。
「おおゥ、あそこに美馬君が来てるから、横に座ってよ」
見ると、客席の前から二番目の右端に、美馬和夫氏が座っていた。私ごときがアマ強豪の隣でいいのかと思うが、お言葉に甘えさせてもらう。
「今年は来ないかと思ってましたよ」
と美馬氏。
皆さん、当ブログを読んでくださっているのだが、私の行動をお見通しなのが不思議な気がする。
「この間の竜王戦第1局ね」
と美馬氏。「▲4九銀がいい手だったみたいですよ」
「おおそうですか。私なんかは、あそこに銀を打つようじゃダメだと思ったんですけど」
素人の読みはまったく当てにならない。「でも▲5九桂は変だったでしょう?」
「あれは予定変更だったらしいね。記録係は○○三段だったけど、羽生さんが慌てた感じで打ったって言ってた」
さすがにトップアマ強豪で、奨励会員とも交流があるようだ。それにしても、あまりにもマニアックな会話である。
その前後にも、美馬氏は前後の知己の人とおしゃべりをしている。どれだけ顔が広いんだ、と思う。
開演の13時半になった。本日も昨年同様、第1部が松尾芭蕉の構成吟「奥の細道」、第2部が落語である。司会は恵子さんが務める。
まずは寺元俊篤・若住職の法話。
「今年も大いちょう寄席を開くことができました。これは関係者の皆さん、落語家さんのひとりが欠けても、できませんでした。
本当は私たち、埼玉スーパーアリーナで、数万人規模でやりたいという目標はあるんですけども、なかなか難しいです。ましてや観客の人数が少ないから止めようなんて、とても言える状況ではありません。皆さんの一人ひとりの拍手が大事なのです」
先日の沢田研二の件を皮肉る、粋な法話?だった。
続いて鳥飼ガクショウ・実行委員会代表の挨拶。
「今回の松尾芭蕉構成吟は、奥の細道の後半です。山形から日本海を下り、新潟まで参ります」
要するに昨年が前半で、今年はその後半というわけだ。
いよいよ第1部・松尾芭蕉構成吟「奥の細道」後半の開演である。
ナレーターの女性の語りによって、松尾芭蕉の紀行の様子が語られる。一段落すると、吟者が吟じるのである。
「古池や。芭蕉。ふるいけやァ~~~ かわずこびこむ~ みずのおと~ かわずとびこむ みずのおと~~~」
再びナレーターの語り。「芭蕉の紀行は苦難を伴う時もあり、時には厩で寝泊まりすることもありました。しかし芭蕉はそれさえも軽快に詠みます」
吟者。「蚤虱。芭蕉。のみしらみ~~~ うまのばり(尿)する まくらもと~~……」
吟者は年配の方ばかりなのだが、実に若々しい声である。
ナレーター「最上川が流れる山形県大石田では、支援者の家に泊まることもありました……」
私は何年か前の冬にこの大石田を訪れ、雄大な最上川と手打ち蕎麦を堪能したものだ。この同じ景色を見て、芭蕉は詠んだ。
「さみだれを~~~ あつめてはやし~~ もがみがわ~~~」
私は、みちのくを紀行している気分になった。
構成吟も終盤に入ろうとしている。新たな吟者がマイクに向かう。しかし足元は覚束なく、いまにも前につんのめりそうに屈んでいる。大丈夫か、この方。
氏がマイクの前に立った。
……エッ!?
(つづく)
今年は早々と6月に案内をいただいたのだが、昨年はともかく、今年は私も就職を決めているだろうから、寄席に参加するつもりは毛頭なかった。だから開催日も忘れていたくらいなのだが、就職活動はかくのごとくで、図らずも参加の運びになったのである。
池袋から東武東上線に乗り、和光市下車。まずはランチだが、昨年も入った「CoCo壱番屋」に再び入った。
こういう時、私はベーシックのカレーで十分なのだが、ビーフカレーが597円でちょいと高い。いろいろ迷ってスクランブルエッグカレー(638円)にしたのだが、後で見たらベーシックとして、ポークカレー(484円)がしっかり記載されていた。154円の追加出費は微妙に大きかったが、カレー自体は、抜群に美味かった。
昨年は長照寺までバスを利用したが、意外に近かった。よって今年は徒歩で行く。
長照寺には13時ジャストに着いた。開場ピッタリである。受付には昨年と同様、岡松三三さんがいた。昨年は受付にずいぶん時間がかかったが、今年は予め名簿が用意され、スムーズだ。木戸銭は500円、さらに任意で懇親会がある(1,000円)。これは迷ったが、とりあえずお金だけ払った。
記念品の、銀杏の実をいただく。銀杏はもちろん、境内の大いちょうから獲れたものだ。
客殿に入ると、恵子さんがいた。
「あらあ、今年は来ないと思ってた。ブログ読んだけど」
「……」
それは私の求職が長引いているからで、返す言葉がない。
二間ぶち抜きの和室の中央には、見慣れぬゆるキャラがいた。その名も「わこうっち」で、関係者と記念写真を撮っている。それはいいが、昨年はこの時間で満員だった。今年はずいぶん空席が目立つ。
博士氏にも会う。
「おおゥ、あそこに美馬君が来てるから、横に座ってよ」
見ると、客席の前から二番目の右端に、美馬和夫氏が座っていた。私ごときがアマ強豪の隣でいいのかと思うが、お言葉に甘えさせてもらう。
「今年は来ないかと思ってましたよ」
と美馬氏。
皆さん、当ブログを読んでくださっているのだが、私の行動をお見通しなのが不思議な気がする。
「この間の竜王戦第1局ね」
と美馬氏。「▲4九銀がいい手だったみたいですよ」
「おおそうですか。私なんかは、あそこに銀を打つようじゃダメだと思ったんですけど」
素人の読みはまったく当てにならない。「でも▲5九桂は変だったでしょう?」
「あれは予定変更だったらしいね。記録係は○○三段だったけど、羽生さんが慌てた感じで打ったって言ってた」
さすがにトップアマ強豪で、奨励会員とも交流があるようだ。それにしても、あまりにもマニアックな会話である。
その前後にも、美馬氏は前後の知己の人とおしゃべりをしている。どれだけ顔が広いんだ、と思う。
開演の13時半になった。本日も昨年同様、第1部が松尾芭蕉の構成吟「奥の細道」、第2部が落語である。司会は恵子さんが務める。
まずは寺元俊篤・若住職の法話。
「今年も大いちょう寄席を開くことができました。これは関係者の皆さん、落語家さんのひとりが欠けても、できませんでした。
本当は私たち、埼玉スーパーアリーナで、数万人規模でやりたいという目標はあるんですけども、なかなか難しいです。ましてや観客の人数が少ないから止めようなんて、とても言える状況ではありません。皆さんの一人ひとりの拍手が大事なのです」
先日の沢田研二の件を皮肉る、粋な法話?だった。
続いて鳥飼ガクショウ・実行委員会代表の挨拶。
「今回の松尾芭蕉構成吟は、奥の細道の後半です。山形から日本海を下り、新潟まで参ります」
要するに昨年が前半で、今年はその後半というわけだ。
いよいよ第1部・松尾芭蕉構成吟「奥の細道」後半の開演である。
ナレーターの女性の語りによって、松尾芭蕉の紀行の様子が語られる。一段落すると、吟者が吟じるのである。
「古池や。芭蕉。ふるいけやァ~~~ かわずこびこむ~ みずのおと~ かわずとびこむ みずのおと~~~」
再びナレーターの語り。「芭蕉の紀行は苦難を伴う時もあり、時には厩で寝泊まりすることもありました。しかし芭蕉はそれさえも軽快に詠みます」
吟者。「蚤虱。芭蕉。のみしらみ~~~ うまのばり(尿)する まくらもと~~……」
吟者は年配の方ばかりなのだが、実に若々しい声である。
ナレーター「最上川が流れる山形県大石田では、支援者の家に泊まることもありました……」
私は何年か前の冬にこの大石田を訪れ、雄大な最上川と手打ち蕎麦を堪能したものだ。この同じ景色を見て、芭蕉は詠んだ。
「さみだれを~~~ あつめてはやし~~ もがみがわ~~~」
私は、みちのくを紀行している気分になった。
構成吟も終盤に入ろうとしている。新たな吟者がマイクに向かう。しかし足元は覚束なく、いまにも前につんのめりそうに屈んでいる。大丈夫か、この方。
氏がマイクの前に立った。
……エッ!?
(つづく)