5日、東京・新橋には午後5時45分ごろに着いた。もちろん辺りはすっかり暗い。まずは駅前の小諸そばに入り、二枚もりを注文する。もりの量は前回に比べて少な目だったが、これは誤差の範囲なので構わない。今日も美味しくいただいた。
SL広場には、大盤が設置されている。客は、椅子席はほぼ満席だったが立ち見は意外に少なく、私がその最前列に来られた。今は師走で、みんな忙しいのだろう。それなのに、自分は本屋回りをしているのが情けなかった。人間のクズだ。
6時になって汽笛が鳴り、スタッフより第31期竜王戦第5局解説会の開会が宣言された。すぐに解説の富岡英作八段、藤森哲也五段、聞き手の藤森奈津子女流四段が登場した。お三方が「こんばんは」と挨拶し、富岡八段が今七番勝負の流れを簡単に説明した。要するにここまで2勝2敗だ。
藤森女流四段「三番勝負になりましたね」
富岡八段「勝った方が竜王に王手をかける大一番です」
藤森女流四段「これから毎週あるんですね」
第3局から第5局までいくらか間が空いたが、来週と再来週は、第6局と第7局があるらしい。
早速指し手が並べられた。
▲竜王 羽生善治
△八段 広瀬章人
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀△6二銀▲2六歩△3二金▲2五歩△7四歩▲7八金△8五歩▲5六歩△4一玉▲7九角(第1図)
第5局は、3手目▲6八銀に驚いた。△3四歩にも▲7七銀である。
富岡八段「今期の竜王戦は角換わりシリーズと言われていたんですね。それも▲4八金-▲2九飛、△6二金-△8一飛の形で。だけど本局は違いました」
羽生竜王は9手目、早くも▲2五歩と伸ばす。「このあたりは、3年くらい前までは▲2五歩と突かなかったんですね。だけど最近は早めの攻撃が流行ってるんですね」
藤森五段「▲7七銀とかも(珍しい)ですね」
藤森女流四段「そういえば昔は飛車先の歩が▲2七歩の時もありましたよね。歩の位置がだんだん下がってきて」
富岡八段「そうですね。▲2六歩で留めて▲2五桂と跳ねる余地を作るとか……」
▲2五歩と早く突くのは、升田、大山時代まで遡ると思う。歴史は繰り返すのである。
富岡八段「その前の△3二金でも普通は△4二銀なんだけど、飛車先の歩交換は許すんですね。じゃあ先手が交換すればいいかといえば、微妙なところでして」
現代は▲7七銀を咎めるべく、後手が急戦に来るわけだ。これは藤森五段の得意戦法で、その著書もある。富岡八段が「得意戦法で我田引水かな……」と茶化した。
まだまだ序盤の解説が続きそうなのだが、調整役の藤森五段が「矢倉の歴史をやっていますが、現局面が詰むか詰まないかをやっていますので、先に進みましょう」と促した。

第1図以下の指し手。△6四歩▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲6八角△6三銀▲4八銀△7三桂▲6九玉△4二銀▲3六歩△5四歩▲3七銀△5五歩▲同歩△同角(第2図)
藤森女流四段がたんたんと指し手を読み上げる。オールドファンには堪らないひと時である。
△6四歩~△6三銀で広瀬八段の作戦がハッキリした。「今風の急戦矢倉ですね」と富岡八段。羽生竜王も▲3七銀と出て、こちらも早い戦いを目論んでいる。もはや矢倉とはとても言えず、プロ間で「相矢倉」は絶滅したと言ってよい。
△5五歩▲同歩△同角に、「ここがポイントの局面です」と富岡八段が解説した。

第2図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲2五歩△6五歩▲2四歩△2二歩▲7九玉△4四歩▲3五歩△同歩▲同角△4三銀▲4六角△同角▲同銀△8一飛(第3図)
「羽生さんは▲2四歩△同歩▲2五歩の継ぎ歩を選びました」
と、富岡八段。そこで広瀬八段は△6五歩。AbemaTVの解説では伊藤真吾五段が、「この位置には△6五桂と跳びたい」と解説していたが、富岡八段は「これもおもしろい手だな……。びっくりしました」と続けた。
羽生竜王▲3五歩。「▲2四歩△2二歩の形が大きいので、羽生さんが若干得をしていると思います。」
と、富岡八段。以下、角交換となった。「▲4六同銀のところで、▲同歩と取ってはいけません。ここは▲同銀が形です」
広瀬八段は△8一飛と引く。「ここがまた2つ目のポイントです」
と、富岡八段。
藤森五段「結局角換わりのような将棋になるんですね」
富岡八段「そう、△6二金-△8一飛の形になるんだね。ここで羽生さんがすごい手を指すんですね」
みんなもったいぶって先に進まない。さて、羽生竜王が指したその手とは。

(つづく)
SL広場には、大盤が設置されている。客は、椅子席はほぼ満席だったが立ち見は意外に少なく、私がその最前列に来られた。今は師走で、みんな忙しいのだろう。それなのに、自分は本屋回りをしているのが情けなかった。人間のクズだ。
6時になって汽笛が鳴り、スタッフより第31期竜王戦第5局解説会の開会が宣言された。すぐに解説の富岡英作八段、藤森哲也五段、聞き手の藤森奈津子女流四段が登場した。お三方が「こんばんは」と挨拶し、富岡八段が今七番勝負の流れを簡単に説明した。要するにここまで2勝2敗だ。
藤森女流四段「三番勝負になりましたね」
富岡八段「勝った方が竜王に王手をかける大一番です」
藤森女流四段「これから毎週あるんですね」
第3局から第5局までいくらか間が空いたが、来週と再来週は、第6局と第7局があるらしい。
早速指し手が並べられた。
▲竜王 羽生善治
△八段 広瀬章人
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀△6二銀▲2六歩△3二金▲2五歩△7四歩▲7八金△8五歩▲5六歩△4一玉▲7九角(第1図)
第5局は、3手目▲6八銀に驚いた。△3四歩にも▲7七銀である。
富岡八段「今期の竜王戦は角換わりシリーズと言われていたんですね。それも▲4八金-▲2九飛、△6二金-△8一飛の形で。だけど本局は違いました」
羽生竜王は9手目、早くも▲2五歩と伸ばす。「このあたりは、3年くらい前までは▲2五歩と突かなかったんですね。だけど最近は早めの攻撃が流行ってるんですね」
藤森五段「▲7七銀とかも(珍しい)ですね」
藤森女流四段「そういえば昔は飛車先の歩が▲2七歩の時もありましたよね。歩の位置がだんだん下がってきて」
富岡八段「そうですね。▲2六歩で留めて▲2五桂と跳ねる余地を作るとか……」
▲2五歩と早く突くのは、升田、大山時代まで遡ると思う。歴史は繰り返すのである。
富岡八段「その前の△3二金でも普通は△4二銀なんだけど、飛車先の歩交換は許すんですね。じゃあ先手が交換すればいいかといえば、微妙なところでして」
現代は▲7七銀を咎めるべく、後手が急戦に来るわけだ。これは藤森五段の得意戦法で、その著書もある。富岡八段が「得意戦法で我田引水かな……」と茶化した。
まだまだ序盤の解説が続きそうなのだが、調整役の藤森五段が「矢倉の歴史をやっていますが、現局面が詰むか詰まないかをやっていますので、先に進みましょう」と促した。

第1図以下の指し手。△6四歩▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲6八角△6三銀▲4八銀△7三桂▲6九玉△4二銀▲3六歩△5四歩▲3七銀△5五歩▲同歩△同角(第2図)
藤森女流四段がたんたんと指し手を読み上げる。オールドファンには堪らないひと時である。
△6四歩~△6三銀で広瀬八段の作戦がハッキリした。「今風の急戦矢倉ですね」と富岡八段。羽生竜王も▲3七銀と出て、こちらも早い戦いを目論んでいる。もはや矢倉とはとても言えず、プロ間で「相矢倉」は絶滅したと言ってよい。
△5五歩▲同歩△同角に、「ここがポイントの局面です」と富岡八段が解説した。

第2図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲2五歩△6五歩▲2四歩△2二歩▲7九玉△4四歩▲3五歩△同歩▲同角△4三銀▲4六角△同角▲同銀△8一飛(第3図)
「羽生さんは▲2四歩△同歩▲2五歩の継ぎ歩を選びました」
と、富岡八段。そこで広瀬八段は△6五歩。AbemaTVの解説では伊藤真吾五段が、「この位置には△6五桂と跳びたい」と解説していたが、富岡八段は「これもおもしろい手だな……。びっくりしました」と続けた。
羽生竜王▲3五歩。「▲2四歩△2二歩の形が大きいので、羽生さんが若干得をしていると思います。」
と、富岡八段。以下、角交換となった。「▲4六同銀のところで、▲同歩と取ってはいけません。ここは▲同銀が形です」
広瀬八段は△8一飛と引く。「ここがまた2つ目のポイントです」
と、富岡八段。
藤森五段「結局角換わりのような将棋になるんですね」
富岡八段「そう、△6二金-△8一飛の形になるんだね。ここで羽生さんがすごい手を指すんですね」
みんなもったいぶって先に進まない。さて、羽生竜王が指したその手とは。

(つづく)