一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

鈴木九段の新橋解説会(第31期竜王戦第7局)・1

2018-12-23 02:43:29 | 将棋イベント

第2図以下の指し手。△8六歩▲同歩△2七角成▲7四歩△2六馬▲3八飛△1七香成▲7三歩成△同金▲5八金△2七成香▲3九飛△2八成香▲6九飛△4四歩▲8五桂△6三金▲7三歩(第3図)

解説の鈴木大介九段は、▲7五歩に△6三銀と引く変化をやっていた。現局面が逼迫しているので、ここは例外的に現局面を並べるのもアリかとも考えたが、やはり初手から並べたようである。
大盤後方のSL・C11 292はクリスマス仕様で、雪(綿)が積もっている。しかし私はクリスマスを楽しんだことがないので、無関係だ。それに今日もこの時期にしては、暖かい。
鈴木九段は△4四歩の変化にも触れ、「▲7四歩△4五歩▲7三歩成△同金▲4四桂」を示す。
この順は面白くないので、羽生善治竜王は△8六歩と反撃に転じた。
「この△8六歩がどうだったんでしょうか」
と梶浦宏孝四段。
「ほう、じゃあ梶浦君の見解はどうなの?」
「ここは後手持ちです」
数手進んで△7三同金まで。ここで広瀬章人八段の封じ手となった。
鈴木九段「ここはいろいろありますが、今風は▲2八歩ですか」
封じ手は▲5八金だった。質駒を避け、金を玉に近づける味のいい一手だ。
しかし羽生竜王の成香がヒタヒタ迫り、広瀬八段の飛車は6九に追いやられた。
鈴木九段「飛車が逃げているようですけど、▲6五歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛の捌きを見ています」
本譜は▲8五桂△6三金と進む。鈴木九段「さっき梶浦君が言った△8六歩の突き捨てを逆用した形です。でも▲8五桂自体は厳しくないと思うんです。△6三金に▲5五銀は、△4五歩▲5四銀の時、△同金の味が抜群にいい。だから広瀬さんは▲7三歩と垂らしたんですが……」

第3図以下の指し手。△7一歩▲6五歩△2五馬▲3六歩△6二金▲6四歩△4五歩▲1二歩△3六馬▲4七金△1四馬▲3六歩△2二玉(第4図)

羽生竜王は△7一歩と打った。しかしいかにも利かされで、飛車の横利きはなくなるわ、△7七歩の反撃もなくなるわ、という辛抱の手だ。果たして鈴木九段も「この手には異議あり、です」と語った。「ここは△8二飛ですね」。以下数手を並べたが、後手も十分戦える。
「あのー……」と鈴木九段。「広瀬さんは歩が5枚あるうちから1枚使いましたよね。使用率20%です。だけど羽生さんは2枚から1枚を引いて、50%使いました。これが大きいんですよ」
妙な譬えだが、言わんとすることは分かる。△7一歩は、女流王座戦第3局・清水市代女流六段の「▲3八歩」を見るかのようで、これは未来がないと思った。
梶浦四段「でも羽生さんが打ったということは――」
鈴木九段「局面に自信があったんでしょう。だけど、うーん」
さらに数手進む。鈴木九段「ほう、こう進んだんですか。実は私今日、年末の挨拶回りに行ってまして、この辺の手順を見てなかったんですよ」
理事はいろいろ大変なのだ。
羽生竜王は△4五歩と桂を取る。鈴木九段「この辺りは、先手の左側が立派(厚い)なんで、負けづらい形なんですよ」
鈴木九段は先手持ちのようだ。
△1四馬には、
「▲1一歩成△4六歩の時、▲1五歩でどうでしょう。▲6八飛を支持したひとが多かったみたいですけど」
と鈴木九段。実戦は広瀬八段が▲3六歩と穏やかに受けた。羽生竜王は△2二玉と上がる。

第4図以下の指し手。▲4一角△3一金▲7四角成△1二玉▲4五銀△6七歩▲5四銀△同歩▲6七飛△5五桂▲6六飛△4七桂成▲同馬△7五金▲6八飛△2七成香(第5図)

広瀬八段は▲4一角と打った。鈴木九段「これが急所ですよね。皆さんも矢倉で、ここに角を打つようオススメします」
しかし▲6三歩成からの二枚換えはせず、じっと▲7四角成とした。この落ち着きがさすがで、将棋は勝ち急いではいけない、と教えられる。
羽生竜王もまた△1二玉と、歩を払いつつ戦場から遠ざかる。鈴木九段「羽生さんはグリグリグリッという感じだったそうですね」。鈴木九段の見解は、後手持ちになったのだろうか。
広瀬八段は▲4五銀と出た。鈴木九段「ここで通常は△6七歩▲同飛△4五銀▲同歩△5八銀なんだけど、▲7四馬がいて4七に利いてるんですね」
広瀬八段は△6七歩の垂れ歩を取る。鈴木九段「これは思い切った手です。なぜなら△5五桂があるから」。さっきは△5八銀があったが、桂で金を取れれば事情が違うようだ。
羽生竜王△7五金。鈴木九段「ここで△7五金ねえ……。ここは△7五銀と打ちたいんです。だけど▲6五飛で、△7六歩が打てない。(もし打ったら二歩で、)逆の意味で歴史に残っちゃう」
広瀬八段は▲6八飛と引き、これが△2八成香取りである。これを取らせるわけにはいかぬから、羽生竜王は△2七成香と引くしかない。しかし一手パスのような手だ。鈴木九段も、「痛いですね」と同調した。「もっとも先手も、▲7六歩と打ちたいが打てない」
だが次の手が、本局一の好手だったのではと個人的には思う。

(つづく)
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