最終4回戦の相手は「ドラの穴A」。A、ということはエース級を集めているわけで、強敵である。メンバー構成はもちろん若手だが、私の相手は小学生っぽかった。
駒を並べて、開始まで待つ。しかし相手の盤側に「チップスター」が載っており、すごくイヤな予感がした。
私の先手で、対局開始。礼をすると、相手がチップスターを食べ始めた。
!?!?!?
プロ棋戦の夜戦で、棋士が栄養補給にお菓子を摂ることはある。しかしこの対抗戦では、さっき昼食があったばかりだ。まだ栄養補給の必要はあるまい。
隣を見ると、副将君はラムネの袋を持っている。……このチーム、対局中の軽食がアリなのか?
将棋は▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩の進行で、相手の三間飛車。私は急戦で向かう。
第1図以下の指し手。▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀△5四銀▲5五銀△同銀▲同角△4三金▲7七角△4五歩▲5五銀△4四銀▲同銀△同金▲2四歩△同歩(第2図)
今のご時世、小学生が昭和の定跡を知っているとも思えないが、案に相違で、ドラA君は正確に応じてくる。しかも私の考慮中は隣の将棋を覗き込み、私が指すとノータイムでペシッ。あなたの指し手は全部分かってますよ、という按配で、これも私をカチンとさせた。
第2図以下の指し手。▲2五歩(第3図)
第2図で△1四歩が突いていなければ、▲2三歩△同飛▲3二銀△2二飛▲2一銀成△2三飛▲1五桂△2一飛▲4五桂△5一角▲4四角で激戦が続く。しかし現実的には△1四歩が突いてある。ドラA君、よそ見して指していても、無駄な手は指していないのであった。
しかし勝負はここからである。私は▲2五歩の変化球。ここでドラA君が「ウン?」と初めて声を発した。ドラA君も、ここから未知の局面ということだ。
第3図以下の指し手。△4三金▲2四歩△7七角成▲同桂△5二飛▲5三歩△同飛▲3二角△2七歩▲1八飛△4二金▲2一角成△5一飛▲6五馬(第4図)
ドラA君は△4三金と引いて大捌きを狙ってくる。△5二飛と中央に転換されて居飛車が指しづらいが、私の▲5三歩~▲3二角が勝負手である。5三の飛車が動けば金が取れる仕掛けだ。ドラA君は△4二金からこの角をどかしにきたが、私は手順に▲6五馬と中央に据え、ずいぶん盛り返したと思った。
第4図以下の指し手。△5七歩▲同銀△5六歩▲同銀△2九角▲5四歩△1八角成▲同香△2八飛▲6八銀△1八飛成▲4五桂△8四香(第5図)
ドラA君は△5七歩から攻めてきたが、こちらは歩が入るから歓迎である。
△2九角には▲5四歩とし、飛車角交換になった。半分遊んでいる飛車を取ってくれたのだから私は大儲け。ずいぶん形勢がよくなったようで、私はキツネにつままれたようだった。
第5図以下の指し手。▲7五歩△2八歩成▲4六角△6四銀▲7六馬△3八と▲5三歩成△同金▲同桂成△同飛▲5五歩△4八と▲5七金(第6図)
第5図の△8四香が油断ならない手で、△8九銀▲同玉△8七香成▲8八歩△5八竜▲同金△7八金の狙いがある。それで▲7五歩と馬筋を通し△8七香成を防いだのだが、これは馬が釘づけになってよくなかった。しかし▲7九桂では▲7四桂の楽しみがなくなってしまう。ここは難しいところだった。
▲4六角に△6四銀。ここで▲同角△同歩▲同馬が金取りになって妙に味良く思えたのだが、私は駒損を恐れて▲7六馬とひるんでしまう。
ドラA君はと金を寄せて間に合わせてきた。▲5七金では、サッパリと▲4八同金と清算してしまうのだったか。というのも、次の手を完全に見落としていたからだ。
第6図以下の指し手。△5八歩▲6五桂△5一飛▲7四歩△同歩▲6六桂△6二桂▲5四歩△5九歩成▲7九金△5八と寄(第7図)
△5八歩の垂らしを完全に見落としていた。歩だけの攻めだから受けようがない。
私は▲6五桂から急攻したが、後手陣は厚く、ちょっと届かない感じ。▲6六桂と据えてまだまだと思ったら、△6二桂と受けられてクサッタ。桂があったのか!
△5八と寄でいよいよまずい。しかし投了もできず、秒に追われた私は。泣きの一手を指す。
第7図以下の指し手。▲2八金△1九竜▲5八金△同と▲5三歩成△6八と▲同玉△5五歩▲6二と△5七銀▲7八玉(第8図)
▲2八金が泣きの一手。しかし△1九竜と逃げられて、▲2九歩は二歩で打てない。これじゃあ▲2八金が泣いてしまった。
私はボロボロ駒損して、ダメである。それでも▲6二ととし、かなり迫ったと思ったのだが……。
第8図以下の指し手。△6六銀成▲7二と△同金▲6六歩△7五桂▲8八銀△5六歩▲7三歩△6七銀▲同馬△同桂成▲同玉△5七歩成(投了図)
まで、ドラの穴A君の勝ち。
△6六銀成と桂を外され、大勢決した。以下△5七歩成まで投了。
感想戦。第5図の△8四香には、ドラA君は、▲7九桂と手堅く受けられるのがイヤだったという。
また▲4六角△6四銀には、▲同角△同歩▲同馬(参考図)で、▲7四桂と▲4二馬を見られて、指す手に困ったという。このあたり、私もかすかに読んだのだが、捨ててしまった。
まあ参考図も△7六角があるから難しいが、いずれにしても私は優勢の将棋を落とし、ガックリ。ほかの2人も終わり、今回はShin氏が負け、Kaz氏が勝った。ということは、私が勝っていれば、チーム3勝1敗で、入賞できたのだ! 個人成績でも2人が3勝1敗だったのに私だけ指し分けで、足を引っ張ってしまった。なかなかに神様は公平だ。ふだんたるんだ生活をしている者には、勝利の女神は微笑まなかった。
チーム2勝2敗では入賞はない。ということで、もう帰る一手である。私たちは大野教室に向かうが、Todチームは打ち上げに行くらしい。私もそちらに合流したかったが、何となく、川口に向かった。
駒を並べて、開始まで待つ。しかし相手の盤側に「チップスター」が載っており、すごくイヤな予感がした。
私の先手で、対局開始。礼をすると、相手がチップスターを食べ始めた。
!?!?!?
プロ棋戦の夜戦で、棋士が栄養補給にお菓子を摂ることはある。しかしこの対抗戦では、さっき昼食があったばかりだ。まだ栄養補給の必要はあるまい。
隣を見ると、副将君はラムネの袋を持っている。……このチーム、対局中の軽食がアリなのか?
将棋は▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩の進行で、相手の三間飛車。私は急戦で向かう。
第1図以下の指し手。▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀△5四銀▲5五銀△同銀▲同角△4三金▲7七角△4五歩▲5五銀△4四銀▲同銀△同金▲2四歩△同歩(第2図)
今のご時世、小学生が昭和の定跡を知っているとも思えないが、案に相違で、ドラA君は正確に応じてくる。しかも私の考慮中は隣の将棋を覗き込み、私が指すとノータイムでペシッ。あなたの指し手は全部分かってますよ、という按配で、これも私をカチンとさせた。
第2図以下の指し手。▲2五歩(第3図)
第2図で△1四歩が突いていなければ、▲2三歩△同飛▲3二銀△2二飛▲2一銀成△2三飛▲1五桂△2一飛▲4五桂△5一角▲4四角で激戦が続く。しかし現実的には△1四歩が突いてある。ドラA君、よそ見して指していても、無駄な手は指していないのであった。
しかし勝負はここからである。私は▲2五歩の変化球。ここでドラA君が「ウン?」と初めて声を発した。ドラA君も、ここから未知の局面ということだ。
第3図以下の指し手。△4三金▲2四歩△7七角成▲同桂△5二飛▲5三歩△同飛▲3二角△2七歩▲1八飛△4二金▲2一角成△5一飛▲6五馬(第4図)
ドラA君は△4三金と引いて大捌きを狙ってくる。△5二飛と中央に転換されて居飛車が指しづらいが、私の▲5三歩~▲3二角が勝負手である。5三の飛車が動けば金が取れる仕掛けだ。ドラA君は△4二金からこの角をどかしにきたが、私は手順に▲6五馬と中央に据え、ずいぶん盛り返したと思った。
第4図以下の指し手。△5七歩▲同銀△5六歩▲同銀△2九角▲5四歩△1八角成▲同香△2八飛▲6八銀△1八飛成▲4五桂△8四香(第5図)
ドラA君は△5七歩から攻めてきたが、こちらは歩が入るから歓迎である。
△2九角には▲5四歩とし、飛車角交換になった。半分遊んでいる飛車を取ってくれたのだから私は大儲け。ずいぶん形勢がよくなったようで、私はキツネにつままれたようだった。
第5図以下の指し手。▲7五歩△2八歩成▲4六角△6四銀▲7六馬△3八と▲5三歩成△同金▲同桂成△同飛▲5五歩△4八と▲5七金(第6図)
第5図の△8四香が油断ならない手で、△8九銀▲同玉△8七香成▲8八歩△5八竜▲同金△7八金の狙いがある。それで▲7五歩と馬筋を通し△8七香成を防いだのだが、これは馬が釘づけになってよくなかった。しかし▲7九桂では▲7四桂の楽しみがなくなってしまう。ここは難しいところだった。
▲4六角に△6四銀。ここで▲同角△同歩▲同馬が金取りになって妙に味良く思えたのだが、私は駒損を恐れて▲7六馬とひるんでしまう。
ドラA君はと金を寄せて間に合わせてきた。▲5七金では、サッパリと▲4八同金と清算してしまうのだったか。というのも、次の手を完全に見落としていたからだ。
第6図以下の指し手。△5八歩▲6五桂△5一飛▲7四歩△同歩▲6六桂△6二桂▲5四歩△5九歩成▲7九金△5八と寄(第7図)
△5八歩の垂らしを完全に見落としていた。歩だけの攻めだから受けようがない。
私は▲6五桂から急攻したが、後手陣は厚く、ちょっと届かない感じ。▲6六桂と据えてまだまだと思ったら、△6二桂と受けられてクサッタ。桂があったのか!
△5八と寄でいよいよまずい。しかし投了もできず、秒に追われた私は。泣きの一手を指す。
第7図以下の指し手。▲2八金△1九竜▲5八金△同と▲5三歩成△6八と▲同玉△5五歩▲6二と△5七銀▲7八玉(第8図)
▲2八金が泣きの一手。しかし△1九竜と逃げられて、▲2九歩は二歩で打てない。これじゃあ▲2八金が泣いてしまった。
私はボロボロ駒損して、ダメである。それでも▲6二ととし、かなり迫ったと思ったのだが……。
第8図以下の指し手。△6六銀成▲7二と△同金▲6六歩△7五桂▲8八銀△5六歩▲7三歩△6七銀▲同馬△同桂成▲同玉△5七歩成(投了図)
まで、ドラの穴A君の勝ち。
△6六銀成と桂を外され、大勢決した。以下△5七歩成まで投了。
感想戦。第5図の△8四香には、ドラA君は、▲7九桂と手堅く受けられるのがイヤだったという。
また▲4六角△6四銀には、▲同角△同歩▲同馬(参考図)で、▲7四桂と▲4二馬を見られて、指す手に困ったという。このあたり、私もかすかに読んだのだが、捨ててしまった。
まあ参考図も△7六角があるから難しいが、いずれにしても私は優勢の将棋を落とし、ガックリ。ほかの2人も終わり、今回はShin氏が負け、Kaz氏が勝った。ということは、私が勝っていれば、チーム3勝1敗で、入賞できたのだ! 個人成績でも2人が3勝1敗だったのに私だけ指し分けで、足を引っ張ってしまった。なかなかに神様は公平だ。ふだんたるんだ生活をしている者には、勝利の女神は微笑まなかった。
チーム2勝2敗では入賞はない。ということで、もう帰る一手である。私たちは大野教室に向かうが、Todチームは打ち上げに行くらしい。私もそちらに合流したかったが、何となく、川口に向かった。