3日はなかなかに将棋三昧の一日だったので、この日放送されたNHK杯将棋トーナメントは、後日観た。対局者は森内俊之九段と三枚堂達也六段。
森内九段はいわずとしれた十八世名人。しかし2017年にA級から陥落し、それをもってフリークラスに転出した。
そのフリークラスは、
・C級2組からの陥落者の場。
・真剣勝負はひとまず置き、普及活動に軸足を移す。
というイメージがある。
当然勝率も悪いイメージがあり、格が将棋を決めてしまうのか、森内九段も、フリークラスでの成績は良くなかった。加えて現在、森内九段は日本将棋連盟専務理事の要職にあり、将棋に割く時間が少ないのも痛い。
もっとも森内九段は成績に波があり、名人時代にも年度勝率3割台、なんて時があった。
片や三枚堂六段は気鋭の若手で、毎年勝率もよい。九段と六段の戦いなれど、私は三枚堂六段の勝ちと予想しながら、対局を観たのである。
将棋は▲三枚堂六段の片雁木、△森内九段の矢倉となった。放送時解説は木村一基九段で、相変わらずうまい。
その後、三枚堂六段の巧妙な指し回しに、森内九段の金銀がバラバラになった。アマ同士なら確実に先手勝ちで、いや本局だって、とても後手勝利の形が見えなかった。
その後も三枚堂六段は華麗な攻めを続け、第1図の▲6一飛が痛打。これはあと数手で森内九段が投げると思った。
ところが……。
第1図以下の指し手。△3七歩成▲6三飛成△2八銀▲4三竜△2九銀成▲4四竜△3四歩▲2七桂△3九飛(第2図)
金取りを受けずに△3七歩成が理解不能の手。まあ△6三金を助けようとすると却って面倒だが、それにしたってここでじっと△3七歩成は、私レベルでは絶対に指せない。その発想が浮かばない。
だが▲6三飛成に△2八銀となってみると、何となく飛車が取れそうである。ここまで全然見えなかった先手玉だが、飛車が入れば事情が違う。これ、結構勝負になったんじゃないかと思った。
そして▲4四竜の王手に△3四歩。歩合で間に合うのか! これも歩成の恩恵である。
いやはやこのあたり、私は森内九段のマジックを見るようで、唸るばかりであった。
そして△3九飛とお返しの王手。この手が現実になった。
第2図以下の指し手。▲5九金△5八金▲7九玉△2七と▲同角△5九飛成▲8八玉△1九成銀(投了図)
まで、森内九段の勝ち。
第2図で▲5九金打は先手が切れる。よって▲5九金と引くよりないが、これではつらい。
森内九段は△5八金を利かして△2七と。そもそも先の▲2七桂が△3七との利きに打ったから、この手自体がどうだったんだ、という疑問は残るが、もう他に指す手がなかったのだろう。
△1九成銀で、先手の切れ筋が確定。ここで三枚堂六段が静かに投げた。
う~む!
森内九段鉄板流の受けに、私は再び唸った。森内九段、堂々の準決勝進出なる!
実は今年度も森内九段の成績はパッとしないのだが、映像は何よりも雄弁で、将棋ファンはNHK杯での活躍がすべて、と見るところがある。本局は森内九段、久々の鉄板流の勝利だった。このまま優勝してもらいたい。
森内九段はいわずとしれた十八世名人。しかし2017年にA級から陥落し、それをもってフリークラスに転出した。
そのフリークラスは、
・C級2組からの陥落者の場。
・真剣勝負はひとまず置き、普及活動に軸足を移す。
というイメージがある。
当然勝率も悪いイメージがあり、格が将棋を決めてしまうのか、森内九段も、フリークラスでの成績は良くなかった。加えて現在、森内九段は日本将棋連盟専務理事の要職にあり、将棋に割く時間が少ないのも痛い。
もっとも森内九段は成績に波があり、名人時代にも年度勝率3割台、なんて時があった。
片や三枚堂六段は気鋭の若手で、毎年勝率もよい。九段と六段の戦いなれど、私は三枚堂六段の勝ちと予想しながら、対局を観たのである。
将棋は▲三枚堂六段の片雁木、△森内九段の矢倉となった。放送時解説は木村一基九段で、相変わらずうまい。
その後、三枚堂六段の巧妙な指し回しに、森内九段の金銀がバラバラになった。アマ同士なら確実に先手勝ちで、いや本局だって、とても後手勝利の形が見えなかった。
その後も三枚堂六段は華麗な攻めを続け、第1図の▲6一飛が痛打。これはあと数手で森内九段が投げると思った。
ところが……。
第1図以下の指し手。△3七歩成▲6三飛成△2八銀▲4三竜△2九銀成▲4四竜△3四歩▲2七桂△3九飛(第2図)
金取りを受けずに△3七歩成が理解不能の手。まあ△6三金を助けようとすると却って面倒だが、それにしたってここでじっと△3七歩成は、私レベルでは絶対に指せない。その発想が浮かばない。
だが▲6三飛成に△2八銀となってみると、何となく飛車が取れそうである。ここまで全然見えなかった先手玉だが、飛車が入れば事情が違う。これ、結構勝負になったんじゃないかと思った。
そして▲4四竜の王手に△3四歩。歩合で間に合うのか! これも歩成の恩恵である。
いやはやこのあたり、私は森内九段のマジックを見るようで、唸るばかりであった。
そして△3九飛とお返しの王手。この手が現実になった。
第2図以下の指し手。▲5九金△5八金▲7九玉△2七と▲同角△5九飛成▲8八玉△1九成銀(投了図)
まで、森内九段の勝ち。
第2図で▲5九金打は先手が切れる。よって▲5九金と引くよりないが、これではつらい。
森内九段は△5八金を利かして△2七と。そもそも先の▲2七桂が△3七との利きに打ったから、この手自体がどうだったんだ、という疑問は残るが、もう他に指す手がなかったのだろう。
△1九成銀で、先手の切れ筋が確定。ここで三枚堂六段が静かに投げた。
う~む!
森内九段鉄板流の受けに、私は再び唸った。森内九段、堂々の準決勝進出なる!
実は今年度も森内九段の成績はパッとしないのだが、映像は何よりも雄弁で、将棋ファンはNHK杯での活躍がすべて、と見るところがある。本局は森内九段、久々の鉄板流の勝利だった。このまま優勝してもらいたい。