2月13日は、第12期マイナビ女子オープン本戦トーナメント準決勝・里見香奈女流四冠VS礒谷真帆女流初段の一戦があった。
里見女流四冠の実績は言うまでもないが、礒谷女流初段は昨年11月プロデビューの新人である。それも今回この棋戦での活躍が認められ、特例でプロになったものだ。
ところでこのマイナビ女子オープンは、「シンデレラ棋戦」の一面がある。2011年~12年の第5期では、新人の長谷川優貴女流2級があれよあれよという間に勝ち上がり、挑戦者決定戦では清水市代女流六段を破って五番勝負に登場した。
また2014~15年の第8期では、和田あき女流2級が挑戦者決定戦に勝ち上がった。
長谷川女流二段も和田女流初段も、上田初美女流四段に負けて長蛇を逸したのだが、どちらも鮮烈な印象を残した。本局の礒谷女流初段もそのチャンスが巡ってきたわけだが、相手は天下の里見女流四冠である。勝敗はともかく、いい将棋が見られればいいと思った。
将棋は後手番里見女流四冠のゴキゲン中飛車に、礒谷女流初段の超速▲3七銀戦法となった。
私のスマホでは無料中継が見られない環境だったので、中継ブログをたまに見た。
すると、礒谷女流初段が大健闘している、という雰囲気だった。
そして▲7四桂の王手!
第1図以下の指し手。△8一玉▲5五角△3二金▲3三歩△4二金▲3四桂△4一金▲4四歩(第2図)
周知のとおり、里見女流四冠は元奨励会三段である。この前までアマチュアだった礒谷女流初段とは実力の差が大きくあるはずだが、ここまでは礒谷女流初段が堂々と指し回している。里見女流四冠の戦型が予想でき、居飛車側が無駄を削ぎ落とした急戦で挑めば、そこそこ勝負になる、という証左でもある。木村義徳九段著「弱いのが強いのに勝つ法」でも、弱者は強者に急戦で挑むべし、と説いていた気がする。
さて局面、△7四同歩は▲5五角の王手金取りで先手勝ち。そこで里見女流四冠は△8一玉と引いたが、これは金or銀で詰む形だから、なかなかに度胸の要る手だ。少なくとも、元奨励会三段が余裕を持って戦っている図ではなかった。明らかに先手が押していた。
ここから糸谷哲郎八段の読みは▲5五角以下▲4四歩。これでどうでもカナ駒を取って先手勝ち、という読みだ。
すると礒谷女流初段もそう指し、これは礒谷女流初段、大殊勲の金星か、と色めきだった。
第2図以下の指し手。△2七角▲4七飛△6三角成▲3二歩成△7四馬(第3図)
ところが、△2七角が振り飛車らしい反撃。先手はここで有効な一手を指したかったが、礒谷女流初段は黙って▲4七飛。しかし△6三角成が厚い。振り飛車はこの筋に馬を作ると、かなりヤル気が出てくるものなのだ。
礒谷女流初段はスピードをつけて▲3二歩成だが、里見女流四冠は△7四馬と桂を外す。これが大きな手で、私が居飛車だったら戦意喪失しているところである。
戻って▲5五角以降、先手は何かもう一つ工夫できなかったものか。たとえば△2七角に▲4七飛はほぼ一手パスで、後手は一手で△6三角成としたに等しい。この辺りで何かなかったのか。
それでも礒谷女流初段はその後も頑張った。だが形勢は振り飛車ペースで、もう居飛車に勝ち目はないと思った。
最終盤、礒谷女流初段は▲6四銀と迫る(第4図)。ところがここでは先手玉に、△5八竜▲同玉△5六香の詰めろが掛かっていたらしい。
しかし里見女流四冠は△8三金打。一回は見逃してくれた。
ただこの局面、藤井聡太七段ならノータイムで詰ましていた。藤井七段は相手玉に詰みがあるかどうか、常にアンテナを張り巡らしている。藤井七段に限らず、ここが男性棋士と女流棋士の厳しさの違いかと思う。
結局、132手まで礒谷女流初段が投了した。ネットでは、礒谷女流初段の健闘を称える声が多かった。私もむろんその一人だが、健闘を称えたって勝敗がひっくり返るわけではなし、礒谷女流初段には何の慰めにもならないだろう。礒谷女流初段が今回の悔しさをバネにして、もっともっと強くなるしかない。
そして挑戦者決定戦は、里見女流四冠と加藤桃子奨励会初段の顔合わせとなった。つまりこの本戦トーナメント表が出来上がった時から予想できたカードで、それが実現してしまっては、もはや白けるしかない。
女流棋士がツイッターなどでリア充をアピールするのもいいが、そんな暇があったらもっと将棋の勉強をしないと、ごくごく一握りの女流棋士しかタイトル戦に出なくなってしまうぞ。
里見女流四冠の実績は言うまでもないが、礒谷女流初段は昨年11月プロデビューの新人である。それも今回この棋戦での活躍が認められ、特例でプロになったものだ。
ところでこのマイナビ女子オープンは、「シンデレラ棋戦」の一面がある。2011年~12年の第5期では、新人の長谷川優貴女流2級があれよあれよという間に勝ち上がり、挑戦者決定戦では清水市代女流六段を破って五番勝負に登場した。
また2014~15年の第8期では、和田あき女流2級が挑戦者決定戦に勝ち上がった。
長谷川女流二段も和田女流初段も、上田初美女流四段に負けて長蛇を逸したのだが、どちらも鮮烈な印象を残した。本局の礒谷女流初段もそのチャンスが巡ってきたわけだが、相手は天下の里見女流四冠である。勝敗はともかく、いい将棋が見られればいいと思った。
将棋は後手番里見女流四冠のゴキゲン中飛車に、礒谷女流初段の超速▲3七銀戦法となった。
私のスマホでは無料中継が見られない環境だったので、中継ブログをたまに見た。
すると、礒谷女流初段が大健闘している、という雰囲気だった。
そして▲7四桂の王手!
第1図以下の指し手。△8一玉▲5五角△3二金▲3三歩△4二金▲3四桂△4一金▲4四歩(第2図)
周知のとおり、里見女流四冠は元奨励会三段である。この前までアマチュアだった礒谷女流初段とは実力の差が大きくあるはずだが、ここまでは礒谷女流初段が堂々と指し回している。里見女流四冠の戦型が予想でき、居飛車側が無駄を削ぎ落とした急戦で挑めば、そこそこ勝負になる、という証左でもある。木村義徳九段著「弱いのが強いのに勝つ法」でも、弱者は強者に急戦で挑むべし、と説いていた気がする。
さて局面、△7四同歩は▲5五角の王手金取りで先手勝ち。そこで里見女流四冠は△8一玉と引いたが、これは金or銀で詰む形だから、なかなかに度胸の要る手だ。少なくとも、元奨励会三段が余裕を持って戦っている図ではなかった。明らかに先手が押していた。
ここから糸谷哲郎八段の読みは▲5五角以下▲4四歩。これでどうでもカナ駒を取って先手勝ち、という読みだ。
すると礒谷女流初段もそう指し、これは礒谷女流初段、大殊勲の金星か、と色めきだった。
第2図以下の指し手。△2七角▲4七飛△6三角成▲3二歩成△7四馬(第3図)
ところが、△2七角が振り飛車らしい反撃。先手はここで有効な一手を指したかったが、礒谷女流初段は黙って▲4七飛。しかし△6三角成が厚い。振り飛車はこの筋に馬を作ると、かなりヤル気が出てくるものなのだ。
礒谷女流初段はスピードをつけて▲3二歩成だが、里見女流四冠は△7四馬と桂を外す。これが大きな手で、私が居飛車だったら戦意喪失しているところである。
戻って▲5五角以降、先手は何かもう一つ工夫できなかったものか。たとえば△2七角に▲4七飛はほぼ一手パスで、後手は一手で△6三角成としたに等しい。この辺りで何かなかったのか。
それでも礒谷女流初段はその後も頑張った。だが形勢は振り飛車ペースで、もう居飛車に勝ち目はないと思った。
最終盤、礒谷女流初段は▲6四銀と迫る(第4図)。ところがここでは先手玉に、△5八竜▲同玉△5六香の詰めろが掛かっていたらしい。
しかし里見女流四冠は△8三金打。一回は見逃してくれた。
ただこの局面、藤井聡太七段ならノータイムで詰ましていた。藤井七段は相手玉に詰みがあるかどうか、常にアンテナを張り巡らしている。藤井七段に限らず、ここが男性棋士と女流棋士の厳しさの違いかと思う。
結局、132手まで礒谷女流初段が投了した。ネットでは、礒谷女流初段の健闘を称える声が多かった。私もむろんその一人だが、健闘を称えたって勝敗がひっくり返るわけではなし、礒谷女流初段には何の慰めにもならないだろう。礒谷女流初段が今回の悔しさをバネにして、もっともっと強くなるしかない。
そして挑戦者決定戦は、里見女流四冠と加藤桃子奨励会初段の顔合わせとなった。つまりこの本戦トーナメント表が出来上がった時から予想できたカードで、それが実現してしまっては、もはや白けるしかない。
女流棋士がツイッターなどでリア充をアピールするのもいいが、そんな暇があったらもっと将棋の勉強をしないと、ごくごく一握りの女流棋士しかタイトル戦に出なくなってしまうぞ。