一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2018年長崎旅行・3

2019-02-20 00:09:16 | 旅行記・九州編
あんでるせん「あるある」で、散会の際に客とマスターが一言二言会話をするのだが、感極まって泣く女性が意外に多い。マスターの講話をおのが人生に照らしてしまうのだろう。私などは人生醒めているから涙も出ないが、女性客の中にはその手合いがあるのである。
ただ今回はマジックの最中であって、そこで泣き出すのは珍しい。しかも娘さんは待っている最中スマホに夢中で、マジックに関心はなさそうだったのだ。
どうもマスターの「客室乗務員」「人に尽くす仕事がいい」のキーワードが、彼女の琴線を刺激したようだ。女心は不思議である。
マスターのマジックは続く。500円玉に紙を巻き、3番席の女性に、その上から爪楊枝を刺してもらう。この紙が豆腐をイメージし、それなら貫通できるでしょう、というわけだ。
実際彼女の爪楊枝は、紙の上から硬貨を貫通してしまった。
続いては、千円札に50円玉を通す。野口英世の眉毛あたりにとまって、「サンバイザー」とか言う、鉄板のギャグとなる。
千円札にはボールペンも刺してしまう。ボールペンが下にズレるが、千円札には穴が開いていない。私たちは悲鳴を上げるのである。
「これは繊維がこうあって、その隙間を動いているのです」
マスターは、理論的にできるのだ、みたいな口調で言うが、そういうものではないと思う。
今度はさっきのガラス瓶の口を拡げ、硬貨を落とした。
次は5円玉の穴に輪ゴムを通す。つまり、鎖状に繋がったというわけだ。
「スターに逢わせますよ」と言って、輪ゴムをゴチャゴチャやる。すると輪ゴムは、星型になった。
マスターが五寸釘を出した。私に渡されたが、曲がるわけがない。それをマスターは簡単に曲げてしまう。
マジックは最終盤となり、今度はスプーンが出てくる。マスターはこのスプーンも齧ってしまう。マスターが言うには、このおたまの部分が美味しいのだそうだ。そんなバカな。
さらにスプーンをぐにゃぐにゃ曲げる。おたまの部分が取れてしまったが、これは珍しい。というのもマスターは、「スプーンの柄とたまの部分を切ることはできますが、それは人道上できないのです」と語っていたからだ。
そしてマスターは、柄の中途のところに、そのおたまをくっ付けてしまった。
……こんな感じで、マスターのすべてのマジックが終わった。時刻は午後5時をとうに過ぎ、マジックだけで3時間オーバーの長丁場だった。これだけ楽しめてお代はナシ。というか、飲食代だけだ。このマジックは「余興」という位置づけなので、客からカネは取らない。そこがあんでるせん最大の魅力でもあるのだ。
マスターはぐにゃぐにゃに曲げたスプーンをインテリアとして販売しているので(300円)、みなはそれを買う。昨年は客の全員が購入したが、今年は8割程度だった。
スプーンには自分の名前を書いてもらえるので、各自名前を言う。私の番になった。
「今年も楽しかったです。カ・ズ・キ・ミです」
「カズキミさん、オオサワカズキミさん……」
「はい」
「モノを作る仕事がいい。物を造る仕事!!」
今回まさに、私が聞きたかった質問の答えだった。
しかしこれは妙な会話である。なぜなら私くらいの風貌なら、どこかに勤めていると考えるのが自然だ。しかるにマスターは、私が選ぶべき仕事内容を言った。まさかマスターは、私が求職中なのを見抜いていたのだろうか。
それはともかく、「モノを造る仕事」とはなあ……。まさに私の前職で、それならこの仕事を辞めなければよかった、ということになる。私はまたも凹むのだった。



川棚駅に入る。まだ宿は決まっていないが、明日の観光のイメージは島原半島ではなく、松浦半島である。だが起点の佐世保駅周辺の宿がない。昼に東横INN佐世保を予約しておけば良かったが、もう遅い。
早岐にホテルが何軒かあったので、検討する。駅から徒歩数分の「ビジネス旅館 海潮荘」が素泊まり4,100円なので、そこを予約した。
となれば、自動券売機で切符を買わなければならない。早岐までは280円だ。私は「はやとの風」の、未使用オレンジカードを出した。オレカは、東京近郊ではもう使えないが、それでもJR九州や北海道ではまだ使える。
私はカード類をコレクションするのが好きだが、日本の一部でしか使えないことは、カードの価値を著しく下げると思う。だからコレクションをやめ、順次使用することにしたのだ。
だがオレカを挿入して280円区間を押したら、券売機がフリーズしてしまった。
「やっぱり!」と私は嘆く。なぜなら昨年もこの駅で、オレカが使えない、という話を聞いた(2017-12-28の記事参照)。その故障をちゃんと直していない、と直感したのだ。
昨年は実年の男性駅員だったが、今年は若い女性が勤務していた。私は一応文句を述べるが、相手が女性では勝手が違う。
女性駅員は券売機を見てくれたが、意外に手間がかかっている。私は18時08分の列車に乗りたいが、微妙な情勢になってきた。
女性駅員がオレカを取り出したが、カードにパンチが空いていない。それでもう一度券売機に通すと、「このカードは使えません」という声とともに、戻ってしまった。
よく分からぬが、このポンコツ券売機を通したせいで磁気に不都合が生じ、カードが不良になってしまったらしい。
私は駅員に、このカードの払い戻しを要求した。だが女性駅員は、「でも280円の切符は出ています」と言う。だからこの切符も破棄して、私は1,000円を貰いたいのだが、駅員は私の主張に納得がいかないようだ。
つまり彼女は、この券売機に異常があるのではなく、私のカードに不信感を持っているのだ。まあその気持ちも分かる。
だが私は、この券売機の「前科」を知っている。
だいぶ昔のことになるが、自宅の最寄りの地下鉄で、いつも調子の悪い券売機があった。確かメトロカードを受け付けなかったと思う。私(たち)はその都度駅員に言い、駅員も応急処置を施すが、不具合は残った。つまりこれは機械自体がダメであって、本体を丸ごと交換しないとダメなのである。
川棚の券売機もまさにその手合いだが、それを女性駅員に納得してもらうのは面倒だった。それにこの間も上りや下り列車が到着し、駅員はその対応もしていた。
「分かりました。じゃあ今回はこの切符を使います。それでこのオレカももう使いません」
私は吐き捨てた。
次は18時30分の列車になった。待っている間、さっきの我が言葉が、ずいぶんヒトのいい譲歩に思えてきた。悪いのはこの川棚駅のクソ券売機であって、私が泣き寝入りする理由はまったくない。あの駅員に男気を見せたところで、こちらは何の得にもなっていないのだ。
それで、このオレカの買取を改めて要求しようと思った。が、今からでは言い掛かりにも思えてくる。「またその話ですか?」と眉でも顰められたら、私が逆上しそうである。
18時30分の上りが来た。私は釈然としないまま乗車し、18時45分、早岐に着いた。
念のため、ここの券売機にも先程のオレカを通してみる。しかしやっぱり、戻ってきてしまった。
ダメだ。完全に、磁気を破壊された……。
(つづく)
コメント
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