一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2018年長崎旅行・2

2019-02-19 00:09:47 | 旅行記・九州編
マスターのマジックに私たちは驚きっぱなし。しかも今年は仙台氏のリードで、さっきから断続的に拍手が起こっている。こっちは拍手を強制されて?ややしんどい。しかしマジックはここからが本番である。
マスターが、箸で当たった女性に任意のカードを選ばせる。マスターは女性に質問し、そのカードを、客の「ノー」という言葉だけで当ててしまう。
次は男性の引いたカードを、「ジェフ」という小さなおもちゃの犬が、カードの匂いを嗅いで当ててしまった。これはマスターがすごいのか、ジェフがすごいのか。
続いては「好きな人当て」である。私は客参加型のマジックにたいてい絡んだことがあるが、これだけはない。今回は9名の男性芸能人のブロマイドが出され、女性客が好みの順に1位から5位まで選ぶ。マスターはその順位を当てるのだ。
女性が外れで順位づけをする。マスターは5位から2位まですべて当て、1位の名前は、財布の中に用意されていた。全問正解の確率、15,120分の1。とても勘では当たらないということだ。
マスターが女性客に選ばせたカードの端を、ちぎる。それを壁に掛けてある額縁に叩くと、それの切れ端が額縁の中に入り込んでしまう。
マスターが男性客に、カードの任意の数字を言わせる。これはかつて私もやったことがあり、不思議とスペードの7が浮かぶのだ。その時のカードは果たして、スペードの7だった。
今回男性は「ハートの5」と言った。が、マスターは「違うと思う」と言い、男性に念を送る。ここで彼が「スペードの7」と言い直し、男性がカードの中から任意の1枚を引く。それはまさに「スペードの7」。しかも残りのカードは、真っ白だった。
さらにマスターは、トランプのカードの配列を数秒で憶え、客が指定した枚数の数字を当てた。
続いてはルービックキューブである。まずはバラバラの色のそれを、マスターは「こうなるまで、39手かかっています」と言い、初形の6色に戻す。ここまではまあ、達人ならできるかもしれない。
だが次、マスターは手元を見ずに、数秒で6色揃えてしまう。
また、バラバラになった配色を記憶し、もうひとつのルービックキューブを、それと同じ配色にしてしまう。
将棋で言うと、ある中盤戦の局面を一瞥し、初手からその局面にしてしまうということだ。
ルービックキューブを中空にポン、と投げる。一瞬でそれは6色揃う。
この辺り、文章で記すとまだるっこしい。実際に見た方が早い。
客がルービックキューブを適当に動かす。マスターは瞬時に、それと同じ配色にしてしまう。
続いては硬貨である。私は出せる機会はないと思ったのだが、100円を出せた。だがほかにも100円玉を出した人は2人いた。これだと100円の所有者が誰だか分からなくなる。ただ私は、平成29年だか30年だかの、ピカピカのを出した。
マスターが100円玉を齧る。その100円は部分的に無くなっている。マスターがフッ、と息をかけると、それは元に戻った。
もう1枚の100円玉には、ボールペンを貫通させてしまう。ボールペンが抜けると、100円玉に丸い穴が空いていた。これももちろん、すぐに塞がれる。
「100円玉が綺麗になった!」とみなが驚いたが、それは私の100円だからではないか?
今度は100円玉を、あるガラス瓶の底から貫通させ、中に入れてしまった。
「100円玉を(カウンターに」出したのは誰ですか?」
私を含め3人が挙手した。「じゃああなたのを使いましょう」
とマスターが女性を見る。マスターが、100円玉をペロン、と曲げた。あの100円玉、ピカピカだったから私のだと思うが、これは元の形状に戻さず、そのまま女性に渡した。これは彼女にとって、いいプレゼントになっただろう。
今度は10円玉をガラス瓶の中に入れたいが、口が小さくて入らない。マスターは10円玉を小さくし、入れる。その10円玉は瓶の中で、元の大きさに戻った。
さらに、コーラの500mlペットボトルに念を入れて捻ると、ロゴの入ったカバーが、ペットボトルの中に入ってしまった。
「さ、今日のお客様の中に、宿命を背負った人がいますよ」
とマスター。今回、その宿命の人は女性だった。まず、女性に任意の絵を描かせた。その後マスターが、カウンターに置かれた財布から紙を取り出す。2枚を照らすとまったく同じ、「たれパンダ」もどきの絵が描かれていた。
「2018年12月15日午前7時15分、蓬山さん来店予定、と書いてあります。だからあなたは今日、万全を繰り合わせて、あなたはここに来る宿命でした」
女性の名字は「蓬田」で外れたが、マスターが受けたイメージに若干のズレがあったらしい。ともあれ女性は感激の面持ちである。
今度は誕生日当てである。箸が当たったのは、例の母娘の娘さんのほうだった。彼女の誕生日を、カウンターの6人が電卓を使って当てるのだ。私はこれで2度誕生日を当てられ、また当てる側に回ったこともあった。
いろいろやって、娘さんの誕生日はもちろん当たった。だが今回は西暦まで入らず、月日まで、だった。
「あなたは客室乗務員がいい。人に尽くす仕事が向いています」
と言った。マスターは紙に何事かの格言を書き、彼女に記念品として渡す。これもかなりのお宝だ。
そしてマスターは、ボートの父子の笑い話をした。これも毎年聞くやつである。
「……この話はいろいろ取り方があります。ひとつは、お父さんは偉そうにしていても、子供と同じ、能力に大差はないんだよ、ということ。
もうひとつは、お父さんも子供も能力の差はほとんどないんだから、子供がちょっと努力すれば、お父さんを越えられるんだよ、ということ。
私たちは40歳になったら、30歳が若かったと思う。50歳になったら、40歳が若かったと思う。60歳になったら、50歳が若かったと思う。人生その繰り返しですね。
だけど10年前に戻れる方法がありますよ。10年先の自分を想像して現在のことを考えたら、10年前に戻っていますね。そう思ったら、もううかうかしてられないですね。やることがいっぱいある」
マスターはマジックの合間に講話を挟むのだが、私が最も耳が痛いのが、この話である。
私はこの話を、19年前から聞いていた。しかし私はプレス加工の仕事に就いてからもまったく努力せず、趣味の将棋とブログの更新に傾注し、その怠惰を父に見透かされ、しまいには2017年にこの仕事を廃業するハメになったのだ。
私がマスターの言葉をしっかり受け止めていれば、少なくとも現在の惨状にはなっていなかったと思う。これも私が怠惰だからで、私のようなクズはそういないと思う。
マスターは中村久子さんの話をする。生まれつき四肢がなかった方である。
「中村久子さんは、周りから手足がなくて不自由でしょう、と聞かれると、泥棒しなくて済みますから、と笑って答えたそうです。これを陽転思考といいます」
気が付くと、さっきの娘さんが泣いていた。横の母親も涙ぐんでいた。
一体、何があったのか!?
(つづく)
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