一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

鈴木九段と梶浦四段の新橋解説会(第77期名人戦第1局の4)

2019-04-16 00:08:24 | 将棋イベント

会場は豊島将之二冠の指し手を待っている。
「▲8一飛の他には▲7二飛もありますね。しかしこれは△同金▲4二歩成に△6一玉でダメ」
と鈴木大介九段。やはり▲8一飛が有力である。
「糸谷(哲郎)八段とか離席が多いですよね。私もかなり多いんですよ」
もう話すこともないので、鈴木九段が雑談を始めた。「私が勝勢の時に、相手に逆転の手とか指されたらビックリするじゃないですか。盤見てるのが恐いんですよ。考えてもみない手を指されると、森内九段みたいに飛び上がっちゃうんですよ。
だけど席を離れていて、戻ってきて指されているなら、驚きが少ない」
梶浦宏孝四段「私は席を離れる気にはなりません。(でも勝ちになったら)席を外します」
梶浦四段も「中原流」はやるわけだ。
鈴木九段「まあ▲8一飛で投了と思いますね。でもそう指さないかもしれないし。ヒトの指し手は当たらないんですよ」
将棋はそれだけ手が広いということである。
そこに「▲8一飛と指しました」と、藤森奈津子女流四段が告げた。
「これで決まりですね」
すぐ抽選会が行われたが、正解者多数。男性3人に当たった。鈴木九段は、なるべく女性に当たるよう祈って解答用紙を引くらしいが、今回は叶わなかった。私も外れた。
「今の将棋界は、誰が三冠を最初に獲るかなんですね。私は広瀬(章人)竜王と思ってたんですが、棋王戦で負けちゃった。
今回の名人戦は、佐藤(天彦)一冠対豊島二冠の対戦と思っています。佐藤名人は前年度勝率6割越え、銀河戦も優勝しているんですけど、今期の挑戦者も強い。豊島二冠が奪取すると三冠ですね。
梶浦君も勉強してよ。勝ち方知らないみたいだし」
「勉強します」
梶浦四段も十分強いのだが、相手が師匠では、タジタジだ。
話は高見泰地叡王に移る。「高見叡王は、渡辺(明)さんが竜王戦に初登場した時とイメージがダブるんです。あの時は竜王が森内(俊之)九段で、予想では森内4勝0敗とも思われていた。
だけど渡辺さんが奪取して防衛して、力を付けていきました」
とはいえ今期の叡王戦は、高見叡王が第1局を負け、相当苦しいと思うのだが……。
「さて▲8一飛に△7一銀は▲同飛成△同金▲4二歩成△6一玉▲6三成桂でしたね。ここで△7二金ならどうしますか」
「▲6二銀(参考7図)」

すかさず梶浦四段が答えた。
「おお! 梶浦君強くなったねー。△6二同金▲5二角成△7一玉▲6二馬△8一玉▲7二馬△9二玉▲8三金まで。最後▲8三金で▲8二金は、△同角でいけません」
また解説のネタがなくなり、叡王戦の台湾対局の話になった。梶浦四段はその時の、記録係だったらしい。
「梶浦君はパスポート持ってなかったんだって?」
「はい。でも1時間くらいで作ってもらいました」
「今はできるのが早いんだねー。でも5年有効のにするのが消極的だよな。10年有効のにすればいいのに」
「連盟の経費でそれはできません」
梶浦四段のマジメな人柄が垣間見える。
台湾には鈴木九段も常務理事として同行したが、いろいろ笑い話があったようだ。中でも「三浦フトン事件」が出色らしいが、鈴木九段らは「またの機会に」と、話してくれなかった。
「私も引退したら中国へ麻雀を打ちに行きたいんですよ」
と鈴木九段。その話もまだまだ先だ。
「投了しました」
と藤森女流四段が告げた。会場の緊張が一瞬緩み、そこかしこで拍手が鳴った。

第11図以下の指し手。▲8一飛(投了図)
まで、73手で豊島二冠の勝ち。

「じゃあ軽く本局を振り返りましょう」
2人は局面を序盤に戻す。
「(▲3六歩に)ここで(△7六飛と)横歩を取るのが流行ってるんですね。
それで△7四飛(A図)とぶつける。ここで梶浦君ならどうするの?」

「▲同飛と取ります」
「ボクはそう指せないんですよ。▲3五飛と逃げちゃう。▲同飛は相手の術中に陥る気がして。だから飛車もぶつけない。
あのー、飛車は交換するものじゃなくて、切るものなんですよ」
何だか中田功八段もそんなことを言っていた。久保利明九段や菅井竜也七段も、よろこんで飛車を切るイメージがある。これが振り飛車党のココロなのだろう。
「△8六歩に▲6五桂は、△8七歩成▲同金△8九飛▲8八角です。それで▲8八歩に△6四角と打ったと。
この辺りはコンピューターが指したんだよね? ここは、考えて同じ手を指すにしても、コンピューターが指したという知識があるほうが有利です。メンタル的に、不安にならない。
そして△8二銀ですよね。これが、勝てば勝着、負ければヒドイという手でした」
「コンピューターはここで、△2四飛成でした」
と、梶浦四段が情報を開示した。
「私は、2年前だったら△3五歩と指してますね。だけどそれは後に▲4五桂がある。△3五歩▲6五桂△6四角▲4八金の進行かな。もう▲4五桂と跳ばせてしまったら(私は)引退ですよ」
鈴木九段の弁舌は冴えわたる。「そして▲5九銀(B図)がいい手。これでもう後手が悪いでしょう。ここで梶浦君ならどう指す?」

「△3一金でしょうか。でも▲2三桂と打たれちゃいますか」
「▲2三桂△3二金▲1一桂成? ここで言っときましょう。1一に成香とか成桂があって、勝った人はいません。勝率2割減」
これは、鈴木九段の新説が出た。「これは本当です。今まで10万局の記譜を並べてきた私は言うんだから間違いありません。例えば1一に成桂がいて▲2一飛と打つ。これはダメです。こう指すくらいなら、▲1二成桂~▲2二成桂と活用したほうがいい」
なるほど、私も角落ちの下手で▲8三桂と打って隅に成るのが好きだが、幸せになった試しがない。
「そして△2六歩(C図)ですね。名人の勝負手だったけど、敗着でしょう。この手、蒲田ではどうなんです?」

「ノーコメントで……。でも、桂が跳ねてくるのを狙っている将棋なんですね」
「竜角交換後の△4四歩(D図)が辛い手でしたね。▲4五桂を防いだ手だけど、それでも何かの時に▲4五桂があるんですよ。△同歩は▲4四桂がある。今はその桂がないけど、その桂は2一にある。つまり後手は2一桂を取られてもマズく、玉が2つある状態になっちゃったんです」

この場合の玉はライフではなく、危険な存在、ということだ。「▲3四角に△5一玉が敗着でしょう。やっぱり△4三桂だったかな。今頃感想戦では、ここをやってますよ」
何だか敗着がいっぱい出てくるが、佐藤名人が精彩を欠いたということか。だが私のようなアマチュアから見れば、豊島二冠の指し回しが見事に思え、こちらを讃えたい。
「そして▲5五銀ですね。佐藤名人は、知ってました、と言うかもしれないけど、やはり厳しかった。そして▲5三桂成ね。私は▲5三桂不成が第一感だったんで、これを次の一手にしたらあぶなかったですね」
でも私は▲5三桂成を予想したので、私はこちらを次の一手にしてもらいたかった。
以上、鈴木九段、梶浦四段、藤森女流四段の解説が終わった。お三方とも本音のトークで、とても楽しかった。ありがとうございました。
第2局の解説会はお休み。よって次回は第3局2日目の5月8日(水)となる。
私は行きたいけど、行きたくない。
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