明けて11日(月・祝)。今日は夕方に大通公園でゴスペルとチアのライヴがあるので、それまでは自由行動である。よって、ちょっと遠出したい。
それで前夜にいろいろ考えた末、定山渓温泉に行くことにした。
定山渓温泉は札幌から南に26キロ行ったところにある温泉街である。もちろんバスが通じており観光にはうってつけだが、私はこれまで、訪れたことがなかった。
定山渓にはかつて、森林鉄道や民間鉄道(定山渓鉄道)が通じていた。しかし前者は1967年、後者は1969年に廃止された。すなわち今年は定山渓鉄道廃止50年にあたる。伺うにはちょうどいい機会だと思った。
朝は早めに起きて朝食を摂る。無料で摂れるのはありがたいが、飲食スペースが狭いので、それなりの争奪戦はある。無料は無料で大変なのだ。
ホテルをチェックアウトして、札幌駅前バスターミナルに向かう。札幌駅はJR北海道の一大拠点だが、バスターミナルからも各地に行けるので、こちらのニーズも高い。
定山渓行きの窓口に行って切符を求めると、往復バスに温泉街での入浴券がついたセット券を勧められた。2,000円で、定山渓温泉の往復は1,540円だから、温泉利用者は確実にトクをする。これを買った。
が、09時30分発の「かっぱライナー号」は満席だった。これは前日午後5時までの予約が必要で、それはうっすらと認識していたのだが、当日でもラクに乗れるとフンでいたが甘かった。
乗り場には今も外国人が列を作っているが、ここでも外国人に占拠されてしまったようだ。だが、インバウンド消費があるのはありがたいことだ。私にはまったく関係ない話だけれど。
かっぱライナーが出発し、次は10時発だが、09時35分発の普通バスは10時発より早く着くとのことで、そちらに乗った。
バスは国道230号を走る。この近くに定山渓鉄道の鉄路があったはずだが、それは国道に呑み込まれてしまったのか、あるいは1本中に入った道にあるのか、いずれにしても、痕跡を見つけるのは難しい。
今日もいい天気だ。バスは緩やかに傾斜地を登り、定山渓に入った。そして鳥居の見えるバス停で、多くの観光客が降りた。私は終点まで乗り過ごすつもりである。
バスは小道に入り、ぐるっと大回りしてまた国道に出た。10時58分、終点・定山渓車庫前着。ここまでの乗客は私だけだった。
車庫内にはバスが数台並び、この空き地がいかにも定山渓駅跡っぽいが、それらしい案内がない。となれば、廃線跡探訪はこれで終了である。
残る目的は温泉だが、どこに入ればいいのか。
1日乗り放題きっぷには、「くわしくはパンフレットをごらんください」と書いてあるが、窓口でそんなものはもらわなかった。
どんな仕事も惰性でやっていると、どこかで手抜きがでてくるものだ。オバチャン、しっかりしてくれよ。
私も就職したら自戒したい。
国道を戻ると、観光案内所があった。入って、パンフレット一式をもらう。念のため定山渓鉄道の痕跡を聞くと、ない、とのことだった。
「あそこの○○ホテルの裏側の駅舎があったあたりに、今は石碑があるだけです」
と係氏。その場所もここからではよく分からないので、向かうのは止めた。
小道を引き返すと、そこはすり鉢状になっていて、先ほどの鳥居前にはすぐ着いた。ここで観光客が降りたのだから観光地のはずだが、神社はまだ奥にありそうで、私は登っていく気力がない。一瞥して、また引き返す。
湯の滝、という小公園に入る。あたりには小川が流れているが、これが近くの豊平川にそそぐのだろうか。「美泉定山之像」なるものがある。案内を読むと、美泉定山は岡山の出で、病に悩むアイヌ民族を、ここの湯で治そうと努めたらしい。ということは、定山渓は人の名ということか?
近くに温泉まんじゅうが売られていたので、中に入ってみる。むかしある観光地で温泉まんじゅうを1個所望したら、箱売り専門で、断られたことがあった。
それを見かねた地元客が1個おすそ分けしてくれたのだが、まあそんなわけで、私は温泉まんじゅうを買う時、慎重になる。
店のおばちゃんに聞くとバラ売り可で、しかも@65円だったので、2個買った。ついでにオススメの立ち寄り湯を聞くと、「ほらそこ」と、近くにそびえる「定山渓万世閣ホテルミリオーネ」(1,500円)を勧めてくれた。
ただし営業時間が12時からで、まだ時間がある。入泉料に関係ないならと「定山渓ビューホテル」(1,600円)も勧めてくれた。
この2つは、観光案内所でもらった日帰り入浴施設一覧表のトップに載っていた。それで、ビューホテルに行った。
ホテルは巨大でビックリした。受付を済ませ、新館16階に上る。客室はどこも広く、私が泊まるビジネスホテルとは大違いだ。これは私が来るところではないと思った。
大浴場の入泉料は高いと思ったが、水の王国「ラグーン」(プール)も利用できるらしい。もっとも、私はそちらはパスである。
脱衣所を抜けると、階上の露天風呂に繋がる螺旋階段があったが、まずは室内である。
大風呂は私しかおらず、貸し切りだった。頭と体を洗って湯船につかると殿様気分になったが、湯船が若干深い。つまりそのまま腰を沈めると、おぼれる深さだ。立膝になってちょうどいいくらいだが、その入り方はちょっとおかしいと思う。設計者は、客がどの態勢で入るのをベストとして作ったのだろう。
露天風呂を愉しもうと階段に行くと、看板が立っていた。何と、12時30分から女性専用で、上がれなくなっていた。まったく気付かなかったが、露天風呂は男女交代制だったのだ。
これなら最初から露店風呂に行っとけば……。私の人生、手順前後の失敗がよくある。そして、物事を軽視することもしょっちゅうだ。私の半生、感想戦をやったら、悪手の連続だろう。結局私がバカなんだと思う。
窓から眺める定山渓の街並みは綺麗だった。
広々とした休憩室で一休みする。今宵の宿を決めたいが、東横INNのHPを見たら、「札幌すすきの南」に空きがあった。禁煙室3,840円はお値打ちで、予約した。これで最後の宿も決まり、一安心である。
さて昼食を摂りたいが、ホテルの前に「紅葉亭」という和食処があったので、入る。
昼時だったが、店内は広いので、私は余裕で座れた。私は定番の大もりを頼む(700円)。
店内には外国人が多く、また一家族入ってきた。
外国の方が店の人に注文をするが、店の人は英語が堪能ではないようだ。それで別の日本人客が、通訳を買って出た。私が表を歩いていて必要と痛感するもの、それは地理と英語である。とくにこうした場に遭遇する時、私はおのが無学を恥じる。
外国人客に注文の品がきた。食べる前にスマホで写真を撮るのは、いまや常識であろう。
日本料理は、盛り付けが美しいのも特徴のひとつだと思う。食べたら同じなのに、盛り付けに工夫する。ここに日本人の美意識がある。
私の大もりは更級で、蕎麦は細め。つゆは若干辛めで、喉越しがよかった。ただもう少し、蕎麦に香りが感じられると、なおよかった。
(つづく)
それで前夜にいろいろ考えた末、定山渓温泉に行くことにした。
定山渓温泉は札幌から南に26キロ行ったところにある温泉街である。もちろんバスが通じており観光にはうってつけだが、私はこれまで、訪れたことがなかった。
定山渓にはかつて、森林鉄道や民間鉄道(定山渓鉄道)が通じていた。しかし前者は1967年、後者は1969年に廃止された。すなわち今年は定山渓鉄道廃止50年にあたる。伺うにはちょうどいい機会だと思った。
朝は早めに起きて朝食を摂る。無料で摂れるのはありがたいが、飲食スペースが狭いので、それなりの争奪戦はある。無料は無料で大変なのだ。
ホテルをチェックアウトして、札幌駅前バスターミナルに向かう。札幌駅はJR北海道の一大拠点だが、バスターミナルからも各地に行けるので、こちらのニーズも高い。
定山渓行きの窓口に行って切符を求めると、往復バスに温泉街での入浴券がついたセット券を勧められた。2,000円で、定山渓温泉の往復は1,540円だから、温泉利用者は確実にトクをする。これを買った。
が、09時30分発の「かっぱライナー号」は満席だった。これは前日午後5時までの予約が必要で、それはうっすらと認識していたのだが、当日でもラクに乗れるとフンでいたが甘かった。
乗り場には今も外国人が列を作っているが、ここでも外国人に占拠されてしまったようだ。だが、インバウンド消費があるのはありがたいことだ。私にはまったく関係ない話だけれど。
かっぱライナーが出発し、次は10時発だが、09時35分発の普通バスは10時発より早く着くとのことで、そちらに乗った。
バスは国道230号を走る。この近くに定山渓鉄道の鉄路があったはずだが、それは国道に呑み込まれてしまったのか、あるいは1本中に入った道にあるのか、いずれにしても、痕跡を見つけるのは難しい。
今日もいい天気だ。バスは緩やかに傾斜地を登り、定山渓に入った。そして鳥居の見えるバス停で、多くの観光客が降りた。私は終点まで乗り過ごすつもりである。
バスは小道に入り、ぐるっと大回りしてまた国道に出た。10時58分、終点・定山渓車庫前着。ここまでの乗客は私だけだった。
車庫内にはバスが数台並び、この空き地がいかにも定山渓駅跡っぽいが、それらしい案内がない。となれば、廃線跡探訪はこれで終了である。
残る目的は温泉だが、どこに入ればいいのか。
1日乗り放題きっぷには、「くわしくはパンフレットをごらんください」と書いてあるが、窓口でそんなものはもらわなかった。
どんな仕事も惰性でやっていると、どこかで手抜きがでてくるものだ。オバチャン、しっかりしてくれよ。
私も就職したら自戒したい。
国道を戻ると、観光案内所があった。入って、パンフレット一式をもらう。念のため定山渓鉄道の痕跡を聞くと、ない、とのことだった。
「あそこの○○ホテルの裏側の駅舎があったあたりに、今は石碑があるだけです」
と係氏。その場所もここからではよく分からないので、向かうのは止めた。
小道を引き返すと、そこはすり鉢状になっていて、先ほどの鳥居前にはすぐ着いた。ここで観光客が降りたのだから観光地のはずだが、神社はまだ奥にありそうで、私は登っていく気力がない。一瞥して、また引き返す。
湯の滝、という小公園に入る。あたりには小川が流れているが、これが近くの豊平川にそそぐのだろうか。「美泉定山之像」なるものがある。案内を読むと、美泉定山は岡山の出で、病に悩むアイヌ民族を、ここの湯で治そうと努めたらしい。ということは、定山渓は人の名ということか?
近くに温泉まんじゅうが売られていたので、中に入ってみる。むかしある観光地で温泉まんじゅうを1個所望したら、箱売り専門で、断られたことがあった。
それを見かねた地元客が1個おすそ分けしてくれたのだが、まあそんなわけで、私は温泉まんじゅうを買う時、慎重になる。
店のおばちゃんに聞くとバラ売り可で、しかも@65円だったので、2個買った。ついでにオススメの立ち寄り湯を聞くと、「ほらそこ」と、近くにそびえる「定山渓万世閣ホテルミリオーネ」(1,500円)を勧めてくれた。
ただし営業時間が12時からで、まだ時間がある。入泉料に関係ないならと「定山渓ビューホテル」(1,600円)も勧めてくれた。
この2つは、観光案内所でもらった日帰り入浴施設一覧表のトップに載っていた。それで、ビューホテルに行った。
ホテルは巨大でビックリした。受付を済ませ、新館16階に上る。客室はどこも広く、私が泊まるビジネスホテルとは大違いだ。これは私が来るところではないと思った。
大浴場の入泉料は高いと思ったが、水の王国「ラグーン」(プール)も利用できるらしい。もっとも、私はそちらはパスである。
脱衣所を抜けると、階上の露天風呂に繋がる螺旋階段があったが、まずは室内である。
大風呂は私しかおらず、貸し切りだった。頭と体を洗って湯船につかると殿様気分になったが、湯船が若干深い。つまりそのまま腰を沈めると、おぼれる深さだ。立膝になってちょうどいいくらいだが、その入り方はちょっとおかしいと思う。設計者は、客がどの態勢で入るのをベストとして作ったのだろう。
露天風呂を愉しもうと階段に行くと、看板が立っていた。何と、12時30分から女性専用で、上がれなくなっていた。まったく気付かなかったが、露天風呂は男女交代制だったのだ。
これなら最初から露店風呂に行っとけば……。私の人生、手順前後の失敗がよくある。そして、物事を軽視することもしょっちゅうだ。私の半生、感想戦をやったら、悪手の連続だろう。結局私がバカなんだと思う。
窓から眺める定山渓の街並みは綺麗だった。
広々とした休憩室で一休みする。今宵の宿を決めたいが、東横INNのHPを見たら、「札幌すすきの南」に空きがあった。禁煙室3,840円はお値打ちで、予約した。これで最後の宿も決まり、一安心である。
さて昼食を摂りたいが、ホテルの前に「紅葉亭」という和食処があったので、入る。
昼時だったが、店内は広いので、私は余裕で座れた。私は定番の大もりを頼む(700円)。
店内には外国人が多く、また一家族入ってきた。
外国の方が店の人に注文をするが、店の人は英語が堪能ではないようだ。それで別の日本人客が、通訳を買って出た。私が表を歩いていて必要と痛感するもの、それは地理と英語である。とくにこうした場に遭遇する時、私はおのが無学を恥じる。
外国人客に注文の品がきた。食べる前にスマホで写真を撮るのは、いまや常識であろう。
日本料理は、盛り付けが美しいのも特徴のひとつだと思う。食べたら同じなのに、盛り付けに工夫する。ここに日本人の美意識がある。
私の大もりは更級で、蕎麦は細め。つゆは若干辛めで、喉越しがよかった。ただもう少し、蕎麦に香りが感じられると、なおよかった。
(つづく)