1日に日本将棋連盟から、第46回将棋大賞受賞者が発表された。
◎最優秀棋士賞…豊島将之王位・棋聖(初)
◎優秀棋士賞…渡辺明棋王・王将(6回目)
◎敢闘賞…広瀬章人竜王(2回目)
◎新人賞…大橋貴洸四段(初)
◎最多対局賞…広瀬章人竜王 64局(初)
◎最多勝利賞…佐々木大地五段 46勝(初)
◎勝率1位賞…藤井聡太七段 0.849(45勝8敗)(2回目)
◎連勝賞…渡辺明二冠 15連勝(初)
◎最優秀女流棋士賞…里見香奈女流王座・女流名人・女流王将・倉敷藤花(9回目)
◎優秀女流棋士賞…渡部愛女流王位(初)
◎女流最多対局賞…伊藤沙恵女流二段 36局(2回目)
◎東京将棋記者会賞…伊藤果八段
◎升田幸三賞…藤井聡太七段(第31期竜王ランキング戦5組・△7七同飛成)
◎升田幸三賞特別賞…丸山忠久九段(一手損角換わりをはじめとした角換わりの研究)
◎名局賞…第76期名人戦七番勝負第1局(佐藤天彦名人VS羽生善治竜王)
◎女流名局賞(新設)…第29期女流王位戦五番勝負 里見香奈女流王位VS渡部愛女流二段
◎名局賞特別賞…第45期女流名人戦リーグ 渡部愛女流二段VS上田初美女流四段
最優秀棋士賞の豊島二冠は、うれしい初受賞。選考会では議論が白熱したと思う。
優秀棋士賞は渡辺二冠で、「6回」というのがすごい。現行の規定になってから、今年で14回目なのに、である。ちなみに過去5回は、最優秀棋士賞はすべて羽生善治九段が受賞している。まさに目の上のタンコブといえるが、今回は気鋭棋士にさらわれた形となった。
ちなみに、受賞者一覧に羽生九段の名前がないのは15年ぶり。
最多勝利賞は45勝で藤井七段と佐々木五段が分け合ったと思ったが、佐々木五段が1勝を上乗せしたようである。佐々木五段はC級2組在籍ながら、見事な成績だった。
東京将棋記者会賞は伊藤八段が受賞。同賞は現役引退組から出るイメージがあるので、これは納得である。
ちょっと違和感を覚えたのが升田幸三賞の藤井七段「△7七同飛成」だ。これは第31期竜王ランキング戦5組決勝・石田直裕五段戦の終盤、▲7七歩の飛車取りに、△同飛成と突進した手である。
「終盤は駒の損得より速度」「風邪は引いても後手引くな」の格言はあるが、ここで△7七同飛成はプロでも指せないのではないか。事実将棋ソフトも考えなかったそうで、これで後手が一手勝ちとは驚きである。もう、私たちレベルとは思考のレベルが違いすぎて、ただただ感嘆するばかりだ。ただ相手の石田五段は、そう指される予感があったらしい。
いずれにしても「△7七同飛成」は、後世に語り継がれる名手・強手に違いない。
だが升田幸三賞は「序、中盤の優れた構想、またはその一手」と私は理解している。ちなみに2004年の第31回では、谷川浩司九段が「△7七銀成」の一手で受賞した。
しかし△7七銀成が中盤の妙手だったのに対し、藤井七段の△7七同飛成は、終盤の寄せである。ここに升田幸三賞のテイストは入らないと思うのだ。
強いて挙げるなら「谷川浩司賞」だが、そんな賞はない。だから私もこの手を予想から外したのだが、その一方で、選考委員が何かの賞をあげたくなる気持ちも分かるのだ。まあ、升田幸三賞のテイストを拡大解釈すれば、ここが適所といえなくもない。
また今回は、丸山忠久九段の「一手損角換わりをはじめとした角換わりの研究」が同賞特別賞となった。
丸山九段は一手損角換わりのスペシャリストだが、現在もこの戦法を指しているのは、丸山九段をはじめ数人である。
つまりこの戦法はとうに下火になっているし、そもそも淡路仁茂九段が第33回に、「後手番一手損角換わり」で升田幸三賞を受賞している。
それなのに何で今頃…? という感が否めない。たぶん、現在まで角換わりの研究を続けていた、というのが大きな理由なのだろう。ただ贈るのなら、升田幸三賞だったのではと思う。これならまだ、別の意味で納得がいったのだが……。
名局賞は、佐藤天彦名人VS羽生善治竜王の名人戦第1局が選ばれた。私が先日予想をした時、この一局が記憶からスポーンと抜けていたのだが、なるほどこの将棋は名局だった。さすがに将棋ファンはよく憶えている。
新設の女流名局賞は、女流王位戦の五番勝負「全局」。これもなかなかに異質だが、これは4局すべてが名局で絞り切れなかったのか、4局集めてやっと名局になったのか……。たぶん前者なのであろう。
渡部女流王位の優秀女流棋士賞を含め、数年前だったらLPSA所属の女流棋士が選ばれたかどうか疑わしく、その意味でも、渡部女流王位の受賞は感慨深かった。
◎最優秀棋士賞…豊島将之王位・棋聖(初)
◎優秀棋士賞…渡辺明棋王・王将(6回目)
◎敢闘賞…広瀬章人竜王(2回目)
◎新人賞…大橋貴洸四段(初)
◎最多対局賞…広瀬章人竜王 64局(初)
◎最多勝利賞…佐々木大地五段 46勝(初)
◎勝率1位賞…藤井聡太七段 0.849(45勝8敗)(2回目)
◎連勝賞…渡辺明二冠 15連勝(初)
◎最優秀女流棋士賞…里見香奈女流王座・女流名人・女流王将・倉敷藤花(9回目)
◎優秀女流棋士賞…渡部愛女流王位(初)
◎女流最多対局賞…伊藤沙恵女流二段 36局(2回目)
◎東京将棋記者会賞…伊藤果八段
◎升田幸三賞…藤井聡太七段(第31期竜王ランキング戦5組・△7七同飛成)
◎升田幸三賞特別賞…丸山忠久九段(一手損角換わりをはじめとした角換わりの研究)
◎名局賞…第76期名人戦七番勝負第1局(佐藤天彦名人VS羽生善治竜王)
◎女流名局賞(新設)…第29期女流王位戦五番勝負 里見香奈女流王位VS渡部愛女流二段
◎名局賞特別賞…第45期女流名人戦リーグ 渡部愛女流二段VS上田初美女流四段
最優秀棋士賞の豊島二冠は、うれしい初受賞。選考会では議論が白熱したと思う。
優秀棋士賞は渡辺二冠で、「6回」というのがすごい。現行の規定になってから、今年で14回目なのに、である。ちなみに過去5回は、最優秀棋士賞はすべて羽生善治九段が受賞している。まさに目の上のタンコブといえるが、今回は気鋭棋士にさらわれた形となった。
ちなみに、受賞者一覧に羽生九段の名前がないのは15年ぶり。
最多勝利賞は45勝で藤井七段と佐々木五段が分け合ったと思ったが、佐々木五段が1勝を上乗せしたようである。佐々木五段はC級2組在籍ながら、見事な成績だった。
東京将棋記者会賞は伊藤八段が受賞。同賞は現役引退組から出るイメージがあるので、これは納得である。
ちょっと違和感を覚えたのが升田幸三賞の藤井七段「△7七同飛成」だ。これは第31期竜王ランキング戦5組決勝・石田直裕五段戦の終盤、▲7七歩の飛車取りに、△同飛成と突進した手である。
「終盤は駒の損得より速度」「風邪は引いても後手引くな」の格言はあるが、ここで△7七同飛成はプロでも指せないのではないか。事実将棋ソフトも考えなかったそうで、これで後手が一手勝ちとは驚きである。もう、私たちレベルとは思考のレベルが違いすぎて、ただただ感嘆するばかりだ。ただ相手の石田五段は、そう指される予感があったらしい。
いずれにしても「△7七同飛成」は、後世に語り継がれる名手・強手に違いない。
だが升田幸三賞は「序、中盤の優れた構想、またはその一手」と私は理解している。ちなみに2004年の第31回では、谷川浩司九段が「△7七銀成」の一手で受賞した。
しかし△7七銀成が中盤の妙手だったのに対し、藤井七段の△7七同飛成は、終盤の寄せである。ここに升田幸三賞のテイストは入らないと思うのだ。
強いて挙げるなら「谷川浩司賞」だが、そんな賞はない。だから私もこの手を予想から外したのだが、その一方で、選考委員が何かの賞をあげたくなる気持ちも分かるのだ。まあ、升田幸三賞のテイストを拡大解釈すれば、ここが適所といえなくもない。
また今回は、丸山忠久九段の「一手損角換わりをはじめとした角換わりの研究」が同賞特別賞となった。
丸山九段は一手損角換わりのスペシャリストだが、現在もこの戦法を指しているのは、丸山九段をはじめ数人である。
つまりこの戦法はとうに下火になっているし、そもそも淡路仁茂九段が第33回に、「後手番一手損角換わり」で升田幸三賞を受賞している。
それなのに何で今頃…? という感が否めない。たぶん、現在まで角換わりの研究を続けていた、というのが大きな理由なのだろう。ただ贈るのなら、升田幸三賞だったのではと思う。これならまだ、別の意味で納得がいったのだが……。
名局賞は、佐藤天彦名人VS羽生善治竜王の名人戦第1局が選ばれた。私が先日予想をした時、この一局が記憶からスポーンと抜けていたのだが、なるほどこの将棋は名局だった。さすがに将棋ファンはよく憶えている。
新設の女流名局賞は、女流王位戦の五番勝負「全局」。これもなかなかに異質だが、これは4局すべてが名局で絞り切れなかったのか、4局集めてやっと名局になったのか……。たぶん前者なのであろう。
渡部女流王位の優秀女流棋士賞を含め、数年前だったらLPSA所属の女流棋士が選ばれたかどうか疑わしく、その意味でも、渡部女流王位の受賞は感慨深かった。