25日の第30期女流王位戦第1局は、里見香奈女流四冠が渡部愛女流王位を降し、幸先よい1勝を挙げた。
軽く振り返ると、戦型は先番里見女流四冠の中飛車に、渡部女流王位の穴熊だった。といっても香を上がったのは50手目で、これは固く囲うというより、玉の遠さ、手厚さを具現化したものだと思う。
中盤押したり引いたりの戦いは、前期女流王位戦の第3局を思い出した。
本譜に戻り、私が唸ったのは、73手目▲4六銀(第1図)の次の候補手である。
ここで控室の面々と、ツイッター解説の平藤眞吾七段は、△6六歩を予想していた。
この突き捨てが味わい深く、A▲6六同角なら△8六飛、B▲6六同歩なら△7六歩▲6八角△7七歩成▲同角△7四飛~△8八歩で、いずれも後手十分となる。
私レベルのアマから見て、いつも難しいと思うのが歩の突き捨てだ。例えば相矢倉で▲2四歩、という手がある。これは△2四同銀なら囲いが薄くなるし、△2四同歩は2三の地点に穴が空く。また捨て置いても▲2三歩成で、どう応じても形が乱れる。
つまりこの突き捨ては損がないのだが、実戦はそんな分かりやすい局面ばかりではない。それを私は見つけられず、いつも苦労するわけだ。
だが本局にも、その類型が隠れていたわけだ。驚いたのは、控室も平藤七段もこの手を真っ先に?指摘していたところで、プロには一目らしい。私はここに、プロの凄さを見るのである。
本譜渡部女流王位はたんに△7六歩と突いたため、手順に▲4四角と切られてしまった。
次に注目したのが87手目の局面(第2図)で、ここは△5五角打、△3五歩、△8二竜、△1三桂、△5六角、△5六桂など、候補手がいっぱい挙がった。ということは、後手に分があるということだ。
ここで渡部女流王位の指した手は△7五角打!! 飛車に狙いをつけつつ△4二角以下の清算を見た手だが、この手は控室の予想にもなく、やや変調である。つまり自陣を気にしているわけで、これは渡部女流王位が「形勢容易ならず」と見ていた証拠だ。
ここから▲2一銀成△同玉▲5六桂(第3図)と進んだ局面が本局のハイライトである。
ここ控室は△3七角成の一手と考えていて、A▲3七同金は△4八角成▲同金△5九竜▲4九歩△8八飛(参考図・詰めろ)。B▲3七同玉は△5五金で、いずれも互角以上の戦いだったようだ。
然るに渡部女流王位は△4二角!! やはり渡部女流王位の目は自陣を見ていた。悩みのタネだった成駒を一掃しようとしたのだ。
だが逸機だったようで、実戦は▲4二同と△同角▲4四桂△同金に▲6二角が痛打で、先手優勢。後手陣の薄さがクローズアップされてしまった。
また先手陣を見れば金銀4枚に飛車付きで、ウンザリ。私なら戦意を喪失して、投了しているところである。
結果論で書くわけではないが、ここはやはり△3七角成といくべきだったと思う。先の△7六歩を空振りさせた角切りと、同じ理屈である。
この局面、もし指導対局だったら、「よく分からないけど」と言って、バッサリいったと思う。またタイトル戦の対里見女流四冠戦でなかったら、やっぱり△3七角成といったと思う。
そういえば、24日の竜王戦4組・高見泰地叡王VS藤井聡太七段戦でも、高見叡王は△3七角成と切る手を躊躇して、結果逆転負けを喫した。
やはり勝利をもぎ取るためには、どこかで決断しないといけないのだ。
ただ渡部女流王位は、△3七角成でもわずかに足りないと読んだという。それが正しければ、この局面ですでに後手が悪かったことになる。
いずれにしても、渡部女流王位はいい将棋を落とした。タイトル防衛のためには、優位の将棋は勝ち切り、不利の将棋は逆転せねばならない。今回は前者のケースで落としたのが痛かった。
渡部女流王位は残り4局を3勝1敗で乗り切らねばならず、これは防衛に赤信号が灯った。
まあよい、第2局は渡部女流王位の地元、北海道・帯広で行われる。ここで反撃開始と行こうじゃないか。
軽く振り返ると、戦型は先番里見女流四冠の中飛車に、渡部女流王位の穴熊だった。といっても香を上がったのは50手目で、これは固く囲うというより、玉の遠さ、手厚さを具現化したものだと思う。
中盤押したり引いたりの戦いは、前期女流王位戦の第3局を思い出した。
本譜に戻り、私が唸ったのは、73手目▲4六銀(第1図)の次の候補手である。
ここで控室の面々と、ツイッター解説の平藤眞吾七段は、△6六歩を予想していた。
この突き捨てが味わい深く、A▲6六同角なら△8六飛、B▲6六同歩なら△7六歩▲6八角△7七歩成▲同角△7四飛~△8八歩で、いずれも後手十分となる。
私レベルのアマから見て、いつも難しいと思うのが歩の突き捨てだ。例えば相矢倉で▲2四歩、という手がある。これは△2四同銀なら囲いが薄くなるし、△2四同歩は2三の地点に穴が空く。また捨て置いても▲2三歩成で、どう応じても形が乱れる。
つまりこの突き捨ては損がないのだが、実戦はそんな分かりやすい局面ばかりではない。それを私は見つけられず、いつも苦労するわけだ。
だが本局にも、その類型が隠れていたわけだ。驚いたのは、控室も平藤七段もこの手を真っ先に?指摘していたところで、プロには一目らしい。私はここに、プロの凄さを見るのである。
本譜渡部女流王位はたんに△7六歩と突いたため、手順に▲4四角と切られてしまった。
次に注目したのが87手目の局面(第2図)で、ここは△5五角打、△3五歩、△8二竜、△1三桂、△5六角、△5六桂など、候補手がいっぱい挙がった。ということは、後手に分があるということだ。
ここで渡部女流王位の指した手は△7五角打!! 飛車に狙いをつけつつ△4二角以下の清算を見た手だが、この手は控室の予想にもなく、やや変調である。つまり自陣を気にしているわけで、これは渡部女流王位が「形勢容易ならず」と見ていた証拠だ。
ここから▲2一銀成△同玉▲5六桂(第3図)と進んだ局面が本局のハイライトである。
ここ控室は△3七角成の一手と考えていて、A▲3七同金は△4八角成▲同金△5九竜▲4九歩△8八飛(参考図・詰めろ)。B▲3七同玉は△5五金で、いずれも互角以上の戦いだったようだ。
然るに渡部女流王位は△4二角!! やはり渡部女流王位の目は自陣を見ていた。悩みのタネだった成駒を一掃しようとしたのだ。
だが逸機だったようで、実戦は▲4二同と△同角▲4四桂△同金に▲6二角が痛打で、先手優勢。後手陣の薄さがクローズアップされてしまった。
また先手陣を見れば金銀4枚に飛車付きで、ウンザリ。私なら戦意を喪失して、投了しているところである。
結果論で書くわけではないが、ここはやはり△3七角成といくべきだったと思う。先の△7六歩を空振りさせた角切りと、同じ理屈である。
この局面、もし指導対局だったら、「よく分からないけど」と言って、バッサリいったと思う。またタイトル戦の対里見女流四冠戦でなかったら、やっぱり△3七角成といったと思う。
そういえば、24日の竜王戦4組・高見泰地叡王VS藤井聡太七段戦でも、高見叡王は△3七角成と切る手を躊躇して、結果逆転負けを喫した。
やはり勝利をもぎ取るためには、どこかで決断しないといけないのだ。
ただ渡部女流王位は、△3七角成でもわずかに足りないと読んだという。それが正しければ、この局面ですでに後手が悪かったことになる。
いずれにしても、渡部女流王位はいい将棋を落とした。タイトル防衛のためには、優位の将棋は勝ち切り、不利の将棋は逆転せねばならない。今回は前者のケースで落としたのが痛かった。
渡部女流王位は残り4局を3勝1敗で乗り切らねばならず、これは防衛に赤信号が灯った。
まあよい、第2局は渡部女流王位の地元、北海道・帯広で行われる。ここで反撃開始と行こうじゃないか。