一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

羽生九段の振り飛車

2019-07-14 00:05:30 | 将棋雑記
12日(金)は第67期王座戦本戦準決勝・豊島将之名人と羽生善治九段の対局があった。
本局はAbemaTVで放送されたようなのだが、私は最近、仕事でいっぱいいっぱいで、まったく把握していなかった。後でネットを見ると、羽生九段が四間飛車を指したという。
羽生九段の振り飛車は5月14日の第60期王位戦・千田翔太七段戦以来。その前となると、2018年1月13日、第11回朝日杯で高見泰地五段、八代弥六段相手に四間飛車を指して以来だろうか(相振り飛車は除く)。
オールラウンダーの羽生九段ならではだが、羽生九段は基本、居飛車党だろう。王座戦準決勝は結構な大勝負で、そこに裏芸を持ってきたのが信じられなかった。
相居飛車の神経をすり減らす対局に疲れて、振り飛車を指す気になったのだろうか。いずれにしても、振り飛車好きの私にはうれしいことであった。

前述したように、羽生九段はオールラウンダーなので、振り飛車も器用に指しこなす。私が印象に残ったのは、1989年8月18日に指された、第15期棋王戦の、対青野照市九段戦である。
ちょっと、記譜を載せてみよう。

▲九段 青野照市
△五段 羽生善治

▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5八金右△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5六歩△8二玉▲6八銀△7二銀▲3六歩△5二金左▲5七銀左△4三銀▲6八金直△5四歩▲2五歩△3三角▲4六銀△1二香(第1図)

羽生五段が飛車を振ったのは、青野九段が対振り飛車急戦策の大家なので、それを勉強させてもらう腹積もりだったのだろう。
△1二香に次の一手は当然。

第1図以下の指し手。▲3五歩△3二飛▲1六歩△9四歩▲9六歩△6四歩▲3四歩△同銀▲3五歩△4三銀▲3七銀引△5一角▲3六銀(第2図)

▲3五歩の仕掛けは当然。こう指さなければ▲4六銀の意味がない。
△3四同銀に青野九段は▲3八飛を見送り、▲3七銀引~▲3六銀と穏やかに繰り替えた。

第2図以下の指し手。△5三金▲3八飛△7四歩▲4六歩△6三銀▲4五歩△7五歩▲4四歩△同銀▲4五歩△3三銀▲7五歩△7二飛▲6九玉△6五歩▲5七銀△7三角▲3七桂(第3図)

△5三金は4四の地点を強化しつつ、後の遠大な構想に沿った手。△6三銀~△7二飛の袖飛車がそれで、大山康晴十五世名人の専売特許を、18歳の青年が指したわけだ。

第3図以下の指し手。△5五歩▲同歩△6四金▲7四歩△同銀▲5四歩△同金▲3四歩△5六歩▲同銀△5五歩▲7五歩△6三銀(第4図)

△5五歩から△6四金がリズムのある攻めだ。
青野九段は▲5四歩と角道を通し、△同金に▲3四歩の銀取り。しかし羽生五段はノータイムで△5六歩と叩いた。私なら△2二銀や△3四同銀と応接しているところだが、羽生五段の目はもう敵陣しか見ていない。
青野九段も負けてはいられない。▲7五歩△6三銀に、次の手が強手だった。

第4図以下の指し手。▲6五銀△同金▲3三歩成△4九銀▲7七桂△7五金▲9七角(第5図)

青野九段は▲6五銀と捨て金をナナメに誘い、▲3三歩成と銀を取った。しかし△4九銀も厳しい。
青野七段は狙いの▲7七桂。しかし羽生五段は△7五金と躱し、冷静そのものだ。
▲9七角の金取りは継続手だが、これに羽生五段は次の手を2分で指した。もちろん攻め合いである。

第5図以下の指し手。△7六歩▲7五角△7七歩成▲同金△3八銀成▲7四歩△同銀▲3一角成(第6図)

ここでも△7六歩の攻め合いが好手。▲7五角には△7七歩成と桂を取り、後手の攻めのほうが厳しい。
ただ▲3一角成に、次の手で終わるとは思わなかった。

第6図以下の指し手。△5六歩(投了図)
まで、86手で羽生五段の勝ち。

△5六歩の突きだしが厳しい。次は△3七角成でなく、△4六角が狙いだろうか。
ここで▲6四金には、△6五桂で後手攻め合い勝ちだろう。青野九段も観念し、考慮1分ののち、投了してしまった。

本局、羽生五段の袖飛車は意外だったが、羽生五段は玉の薄い将棋を苦にしないので、空中戦の感覚で指していたのではないか。いずれにしても快勝で、羽生五段が生粋の振り飛車党に見えた。
令和の世、羽生九段が振り飛車採用を増やせば、棋界の戦法地図が変わるのではないだろうか。
コメント
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