一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

最後に愛は勝つ

2019-07-27 22:24:14 | 女流棋士
25日(木)は第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選・岡崎洋七段と渡部愛女流三段の一戦があった。渡部女流三段は現在平の「女流三段」だが、女流王位戴冠時の特典での出場である。
渡部女流三段は今年度女流王位を失冠し、女流棋戦も勝ったり負けたりの成績だ。しかし前年度は男性棋士から4勝を挙げて大健闘している。渡部女流三段は相手の棋力に合わせて実力を出すという、不思議な女流棋士なのだ。
岡崎七段は26歳で四段昇段した苦労人。しかし第18回全日本プロトーナメントでは決勝五番勝負に進出する活躍を見せた。順位戦もC級1組に昇級したが、その後は昇級の一番を負けたりして、勝負弱い面も見せた。
第76期順位戦ではC級2組で3つ目の降級点を取り、無念の降級。実力者の岡崎七段からすると考えられないことであるが、この好不調の激しさが岡崎七段らしいともいえる。
本局は午前10時からの対局だったが、私は無職になってしまいAbemaTVの中継を観られる状況にあった。何という皮肉であろうか。
序盤はやっぱり時間を使うので、双方の時間がなくなったあたりから見ることにした。
将棋は渡部女流三段の先番で、角換わり。お互い右金をまっすぐ上がって飛車を下段に引くという、いつもの形である。
渡部女流三段もよく戦っているように見えたが、第1図の△6七歩成が軽手。

▲6七同銀は△5七角成だし、▲6七同金は△8七歩成がある。私が対局していて精神的にドツボだったら投了もあるところで、これは渡部女流三段がマズくしたのではないかと思った。

第1図以下の指し手。▲6七同金△4五銀右▲同銀△同銀▲5五角△4四歩▲7六銀△8七桂▲6八玉△9九桂成▲7五銀△8七歩成(第2図)

▲6七同金はやむを得ないが、岡崎七段は△4五銀右。この桂得も大きいが、渡部女流三段も▲5五角と据えて戦える。そして▲7六銀と立ったのが好手で、角取りと同時に△8七歩成を受けている。これは渡部女流三段が持ち直したのではないか?
△8七桂にはもちろん▲6八玉。岡崎七段は△9九桂成と香を入手したが、桂を投資しているから、でかしていない気もする。
▲7五銀に△同歩と取り返している暇はない。岡崎七段は△8七歩成とスピードアップした。

第2図以下の指し手。▲2三歩△同金▲3五銀△3六香(途中図)▲2四銀△同金▲同飛△2三銀(第3図)

▲2三歩が待望の反撃である。△2三同金に▲3五銀と据え、次の▲2四銀を見る。しかし△3六香(途中図)が厳しく、私が対局者だったら、「やっぱりダメだったか」と肩を落とすところ。

渡部女流三段は▲2四銀と突撃したが、△同金から冷静に△2三銀と受けられては、手段に窮したように見えた。

第3図以下の指し手。▲3三歩成△同玉▲4四飛△4三歩▲4五飛△4四銀▲3六金△7五歩(第4図)

当ブログに何度も書いているが、渡部女流三段は現代の小太刀の名手と思う。△2三銀に私だったら▲2九飛と退散するか▲3三銀と突撃するが、渡部女流三段は軽く▲3三歩成と捨てた。
これが渡部女流三段らしい軽手で、△3三同桂なら▲4四飛で、▲4二飛成以下の詰めろと▲2四歩を見て先手勝ち。よって△3三同玉だが、▲4四飛と角の陰に飛車を寄ったのがまた好手。△4三歩にはボロッと銀を取り、△4四銀には▲3六金と香を外した。
いやはや、金取りに打った香まで取れた。攻めるは守るなり、とはよく言ったもので、私は魔法を見たかのように、ポカンとしてしまった。
これはさすがに、渡部女流三段が優勢になったのではないか?

第4図以下の指し手。▲5二銀△5四銀▲4四角△同歩▲4九飛△8九成桂▲3五金△7七と▲同金△5五角▲5一角△同飛▲同銀不成△6五桂(第5図)

第4図では俗に▲5二金と打ち、次の▲4二角~▲2四歩を見てどうかと思ったが、渡部女流三段は筋っぽく▲5二銀。しかし△5四銀に角を切って▲4九飛と引くようでは、ややヨリが戻った気がした。
岡崎七段は△8九成桂。成桂が9九のままだと敗戦確率が20%上がる、というのは鈴木大介九段の名言である。
▲3五金には△7七とが軽手のお返し。▲同金はやむを得ないが、岡崎七段は△5五角。私ならよろこんで△8八飛成と飛び込むが、それは味消しなのだろう。
▲5一角。ここに角を打つのなら、確かに「5二」は銀のほうがいい。△5一同飛に▲同銀不成が4二への脱出を防いでいる。
とはいえ△6五桂と跳び、これは詰めろ。後手玉は詰むのだろうか?

第5図以下の指し手。▲3四歩(投了図)
まで、渡部女流三段の勝ち。

第5図で▲2四銀打△同金▲同銀△同玉▲2二飛を考えたが、なんかダサイ手順で、詰みそうにない。
渡部女流三段は▲3四歩。ああそうか、これで簡単な詰みだった。これで岡崎七段が投了した。渡部女流三段、この将棋を勝った!
渡部女流三段、女性アマに負けることもあれば、男性棋士に勝つこともある。これが渡部女流三段の魅力である。

午後2時からは2回戦で、門倉啓太五段と対戦した。
私は外出していたのだが、「なか卯」でAbemaTVを見ると、後手番の渡部女流三段が▲5五桂を△同銀と取り駒損を甘受したところだった。しかし形勢は苦しそうで、これは渡部女流三段が勝てないと思った。
そして次に見た時は終わっていた。やはり、渡部女流三段が負けたようである。まあよい、男性棋士と公式戦を戦うことは、それだけで大きな財産になる。これからも勉強勉強である。
コメント
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