一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第九回 シモキタ名人戦(4)

2020-11-24 00:10:10 | 将棋イベント
ここで星合志保二段の新刊が紹介された。「13路盤で上達!基本戦術と手筋」である。「初志」の揮毫入りで、物販コーナーで販売しているという。先崎学九段は、19路より13路のほうがお好みらしい。「19路は長いです。13路は美しい手っていうのはあまりないんですけどね」



終わりの時間が迫ってきた。最後に質問コーナーである。まずは将棋を趣味にしている男性からで、今回のトークを聴いて、囲碁も始めたくなったという。そこで「囲碁に戦法はあるか」という質問だった。
星合二段いわく、囲碁はそういうものはあまりない、とのことだった。
先崎九段「(アマチュアは)どう打ってもいいんです」
最後に別の男性から、藤井聡太二冠の強さの秘密は? と寄せられた。
先崎九段「藤井君は終盤が強い。将棋は詰む詰まないが大事ですが、藤井君はそこが異常に強い。3手、5手前から強いんですよ。完成されてますね。
羽生さんや私の若いころはインターネットなんてなかったです。だから粗削りだったです。
でも基本は、終盤が強いほうが勝つんです。あと若いほう、勝利への執念が強いほうが勝ちます」
ここで下平憲治氏が登場し、表現者として今後どう活動していくか、と質問があった。
先崎九段「もう50を過ぎましたし、これからは楽しく生きようと思っています」
星合二段「AIに打ち手が似てきたので、自分ならどこに打つか、もう一度自分を見つめ直して打っていきたいです」
先崎九段と星合二段はこの打ちあわせのため、駅構内にある「将棋酒場」に寄っていたらしい。将棋酒場も将棋コーナーのひとつで、そのあたりでも将棋が指せたらしい。私は伺う機会がなかった。
下平氏「これでトークショーのプログラムは終わりです。ある国の調査によると、下北沢はクールな街の世界第2位だそうですね。鮮やかな街並みの中に飲食店その他がいっぱいあって、自慢できる街です。今後もいろいろなイベントを発信して、下北沢を盛り上げていきます」
このあとはグランドチャンピオン戦の決勝戦、表彰式があるようだ。そこまで粘るつもりはないが、指導対局コーナーに行くと、その途中に大盤が掲げられており、上村亘五段が解説を行っていた。現在決勝戦の最中で、対局者はその裏手にいるようだ。アシスタント氏が、タブレットから指し手を入手していた。



将棋は相振り飛車で、まだ序盤。その先に行くと、飯野健二八段、鈴木大介九段が指導対局を行っていた。





鈴木九段は新橋解説会での明快な解説でお馴染みである。また将棋ペンクラブの交流会でも、気軽に指導対局を行ってくれた。
鈴木九段のほうの対局者はひとりだった。あとの人はもう終わってしまったのだろうか。
ちょっと気になったのは、ネットで指導対局を予約した人は、100%現地に来たのだろうか。もし欠席があったなら、その場で対局を募ってもよかったと思うのだが。
将棋は鈴木九段が△4四銀とした局面(第1図)。二枚落ちのようだ。

第1図以下の指し手。▲7二竜△9三玉▲4四歩△7七桂打▲7九玉△8九桂成▲同玉△7七桂打▲8八玉△8九金▲9八玉△9九金▲同玉△9七香▲9八桂(投了図)
まで、男性氏の勝ち。

男性氏は一本王手をしたが、△9三玉に▲4四歩と銀を補充するしかなかった。
ここで上手の王手ラッシュが始まる。途中、△7七桂打に下手氏が何か言ったように見えたが―投了した?―そのまま対局は続けられた。
以下▲9八桂まで進み、鈴木九段投了。「詰まなかったか……」

ここから感想戦である。鈴木九段はサラサラと局面を戻す(部分図)。

「ここで▲4三銀と打ったけど、▲5一銀でしょう。△3一玉に▲4三歩成△同金▲2三飛成(参考図)。これは次に▲1二竜もあるし、やがて勝ちます。

本譜▲4三銀は△同金▲同歩成△同玉で、これは△4五銀と△5五銀が働いてきちゃうから損ですね。
そこで▲3六歩と打ったけど、これ詰めろになってないですよね。ここは▲2三飛成でしょう。こちらが何か受けたら▲1二竜として、これが詰めろ。いわゆる取りドクというやつです。▲1二竜では▲2一竜でも詰めろかな。
本譜は上手に追い上げられちゃいましたからね。こうやってこう取られて……取られ損というやつです」
鈴木九段は一手一手を丁寧に指南する。ほかに対局者はいないから、これは絶好の勉強の場である。私も自分が指導対局を受けているかのように、鈴木九段の講義を聞いた。
「あのね、皆さん勘違いされてるんですけど、下手が終盤まで1手違いで行ったとしますよね。そうしたら下手は2手違いに拡げて勝たないといけないんです。だって下手のほうが駒数が多いんですから。終盤はさらに有利になる手順があるということです。
だから2手違いだったのを1手違いにされて逃げ切る、というのはあまりよくない。本局は3手違いを2手、1手違いにされちゃったでしょ。これはよくないんです」
このあたりは、私たちギャラリーへの講義も兼ねている。ここに来て、いちばんためになる話を聞いてしまった。これで無料とは、私は大儲けをした気分である。
鈴木九段の感想戦はキッチリ終わり、気が付くとグランドチャンピオン戦の決勝戦も終わっていた。しかし私は表彰式を見ず、これで失礼することにする。
コロナ禍において、今年もシモキタ名人戦が行われたことはうれしかった。来年は例年通りの日程で行われることを願う。その中で私も、指導対局を受けられたらうれしい。
コメント (2)
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