1日は社団戦最終日だった。ここまで我が将棋ペンクラブは7勝1敗で2位につけていた。1位は一歩千金で同じ7勝1敗だが勝ち星が多い。今日大崩れするとも思えず、ペンクラブが優勝するには、3連勝が最低条件だった。
NHK杯を途中まで見て、産業貿易センター台東館に向かった。バスを二天門で降り、会場に着いたのが11時57分で、これはいつも通りである。
Kan氏や星野氏がいたので目礼する。木村晋介会長の姿もあった。以下徐々に選手が集まってきた。今日は最終日なのでペンクラブも選手が揃う。よって、私はフルには出られないと思う。今回の相手は天野チルドレン3、明治SAKI、丸紅OKI2だ。成績を見ると天野チルドレンは下位だ。私はKan監督に、1回戦は抜けるが、2回戦と3回戦は出させてもらうよう伝えた。
藤原父子も来ている。私は息子君に「頼むぞ」と言うと、彼は力強くうなずいた。ペンクラブで最も信用があるのが彼である。
1回戦は藤原息子君、藤宮氏、阿部氏、山野氏、木村会長の布陣だった。山野氏の相手は若い女性で、風貌から判断してはアレだが、たぶん勝てる。研修会員の藤原息子君も勝ちは計算できるし、藤宮氏も確かな将棋を指す。何とか3勝はできるのではないかと思った。
対局前に、関係者からコロナについてのコメントがあり、12時30分、対局開始。
私は千石ラーメンにラーメンを食べに行きたいのだが、さすがに応援せざるを得ない。
一通り見て回ると、天チル四将の女性は四間飛車。山野氏はイビアナに潜った。相手が女性でも容赦しないのである。
木村会長のところは相振り飛車。まだ戦いはこれからだ。
藤宮VS天チル副将戦は、天チル氏が先手で急戦矢倉。藤宮氏がやや作戦負けだ。
阿部氏のところは▲2五銀△1三角の形で、天チル三将氏が△3三桂。ここは▲3六銀と引きたいが、阿部氏は▲1四銀と出ようだ。天チル氏は△2四角と上がり、これが△1一香による銀取り。以下▲2五銀△同桂▲同飛で駒損となった。その後桂馬も損し、銀桂損。阿部氏はだいぶ苦しくなった。
藤原息子君は、飛銀交換の駒得で優勢。こころなしか、手つきに落ち着きが出てきた。彼は攻めッ気100%だったが、指し手も幅広くなってきたようである。まったく、子供の成長は早い。この将棋は勝つだろう。
12時45分、山野氏が勝ち名乗り。女性も頑張ったが、及ばなかった。55分、藤原息子君も勝った。彼と目が合うと、彼は力強くうなずいた。
これでチーム勝利まであと1勝だが、残り3局がいずれも劣勢だ。阿部氏と木村会長はともかく、藤宮氏の拙戦が意外である。
木村会長のところは天チル氏が寄せをもたつき、木村玉が上部へ逃げ出した。私は傍らの藤原父氏に、「ふつうなら木村会長優勢だけど、単騎の入玉を木村会長が指しこなせるかどうか」とマスク越しにつぶやいた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/ff/71eafb6421235e29325e55a1790aa51c.png)
藤宮戦を見る。第1図は▲9七角と覗かれた局面。△6四角、△6三銀、△4一玉の位置関係が悪いが、とにかくここは△7四飛と辛抱するところだろう。以下▲6四角△同飛(△同銀は▲6三角)▲8二角がイヤだが、そう進めるよりない。
だが局面はのっぴきならない方向に進んでいた。以下△7七飛成!▲同桂△5七歩▲6八金△7六歩▲6四角△同銀▲7一飛△5二玉▲6一角△6三玉▲7五歩(第2図)と進んだ。
△7七飛成は暴発の類だろう。せめて玉が△3一にいないと、飛車の王手がキツ過ぎる。
果たして▲7一飛に△5二玉。やむを得ないとはいえ、きつい。
▲7五歩は玉の逃げ道封鎖だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/58/6b3ea16d67a4276351c31ba2da7a5550.png)
すると第2図から△7七歩成??▲7二飛成まで、終局してしまった。
あっけない幕切れに私はあんぐりである。藤宮氏、敗勢とはいえ△7七歩成はないだろう。▲7二飛成で詰みなのに、なんで受けないのか。百歩譲ってこの手をうっかりしたとしても、飛角にこれだけ迫られていたら、本能的に△6二金と受けそうなものではないか。
感想戦で私が口を出すと、天チル氏は△6二金に▲4三角成を示した。それで先手勝勢は動かないが、△同金でまだ綾はあった。
ポイントゲッターの藤宮氏が負け、にわかに暗雲が漂ってきた。
木村会長は▲4五金と銀を取れるチャンスがあったが、玉の侵入を優先させる。だが▲2二飛・▲2四玉の局面で△1三角と打たれてしまった。以下▲3三玉△2二角▲同玉△1二飛と進み、相当あぶなくなった。
だが数手後、天チル氏は△2七竜!(第1図) これが悪手で、木村会長に大チャンスが巡ってきた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/47/ee1d571c32d68946fc5dbec635c61e20.png)
ところが、木村会長は▲5二と!? 以下△2五竜で投了したので、私は呆れてしまった。
「いやいや会長、なんで▲5二となんです!? ここは角打つ一手でしょう!!」
私は気色ばみ、真っ先に口を出した。
△2七竜には▲3六角打。以下△同竜▲同角△6三金左に▲2二歩(参考図)でどうか。先手は玉の守りを一手優先すれば、あとは持駒は飛金銀桂、▲4二にと金はあるし、5六に銀も落ちている。つまり▲3六角と打てば木村会長が勝勢だったのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/7d/b6f47d0d6793415c51886e1ee7304c89.png)
「入玉なんてやったことないから分からなくなっちゃったよ」
「……」
チームが勝ちを決めていない現状では、笑えない冗談である。入玉云々はともかく、▲3六角打くらい発見してもらわねば困る。
これで残りは阿部戦だ。しかしこちらも勝利期待度は低い。まして2勝2敗で阿部戦とくれば、いやでも9月の4回戦を思い出してしまう。あの時、阿部氏はまったく手が見えず、竜を歩でタダ取りされたうえ、金で飛車を取らずに香を取りにいったのだ。傍で見ていて、訳が分からなかった。
本局は天チル氏が寄せに入ったが、△7九金がやや重い。さらに△7八銀▲5六玉で、阿部玉が上部に逃げ出した。天チル氏は△4七の成銀で△5八成銀と金を取った(第1図)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/23/25eee483f4e99cf3501adcd776a05f7e.png)
しかしこれなら▲4九金と飛車を取れる。▲3三角や▲3三歩成も残って、先手にも楽しみが出るのではないか。
ところが阿部氏が「負けました」とつぶやいたので、私は自分の耳を疑った。
「投了……?」
はあああああ!? ふ、ふざけんじゃねえぞ!!
(つづく)
NHK杯を途中まで見て、産業貿易センター台東館に向かった。バスを二天門で降り、会場に着いたのが11時57分で、これはいつも通りである。
Kan氏や星野氏がいたので目礼する。木村晋介会長の姿もあった。以下徐々に選手が集まってきた。今日は最終日なのでペンクラブも選手が揃う。よって、私はフルには出られないと思う。今回の相手は天野チルドレン3、明治SAKI、丸紅OKI2だ。成績を見ると天野チルドレンは下位だ。私はKan監督に、1回戦は抜けるが、2回戦と3回戦は出させてもらうよう伝えた。
藤原父子も来ている。私は息子君に「頼むぞ」と言うと、彼は力強くうなずいた。ペンクラブで最も信用があるのが彼である。
1回戦は藤原息子君、藤宮氏、阿部氏、山野氏、木村会長の布陣だった。山野氏の相手は若い女性で、風貌から判断してはアレだが、たぶん勝てる。研修会員の藤原息子君も勝ちは計算できるし、藤宮氏も確かな将棋を指す。何とか3勝はできるのではないかと思った。
対局前に、関係者からコロナについてのコメントがあり、12時30分、対局開始。
私は千石ラーメンにラーメンを食べに行きたいのだが、さすがに応援せざるを得ない。
一通り見て回ると、天チル四将の女性は四間飛車。山野氏はイビアナに潜った。相手が女性でも容赦しないのである。
木村会長のところは相振り飛車。まだ戦いはこれからだ。
藤宮VS天チル副将戦は、天チル氏が先手で急戦矢倉。藤宮氏がやや作戦負けだ。
阿部氏のところは▲2五銀△1三角の形で、天チル三将氏が△3三桂。ここは▲3六銀と引きたいが、阿部氏は▲1四銀と出ようだ。天チル氏は△2四角と上がり、これが△1一香による銀取り。以下▲2五銀△同桂▲同飛で駒損となった。その後桂馬も損し、銀桂損。阿部氏はだいぶ苦しくなった。
藤原息子君は、飛銀交換の駒得で優勢。こころなしか、手つきに落ち着きが出てきた。彼は攻めッ気100%だったが、指し手も幅広くなってきたようである。まったく、子供の成長は早い。この将棋は勝つだろう。
12時45分、山野氏が勝ち名乗り。女性も頑張ったが、及ばなかった。55分、藤原息子君も勝った。彼と目が合うと、彼は力強くうなずいた。
これでチーム勝利まであと1勝だが、残り3局がいずれも劣勢だ。阿部氏と木村会長はともかく、藤宮氏の拙戦が意外である。
木村会長のところは天チル氏が寄せをもたつき、木村玉が上部へ逃げ出した。私は傍らの藤原父氏に、「ふつうなら木村会長優勢だけど、単騎の入玉を木村会長が指しこなせるかどうか」とマスク越しにつぶやいた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/ff/71eafb6421235e29325e55a1790aa51c.png)
藤宮戦を見る。第1図は▲9七角と覗かれた局面。△6四角、△6三銀、△4一玉の位置関係が悪いが、とにかくここは△7四飛と辛抱するところだろう。以下▲6四角△同飛(△同銀は▲6三角)▲8二角がイヤだが、そう進めるよりない。
だが局面はのっぴきならない方向に進んでいた。以下△7七飛成!▲同桂△5七歩▲6八金△7六歩▲6四角△同銀▲7一飛△5二玉▲6一角△6三玉▲7五歩(第2図)と進んだ。
△7七飛成は暴発の類だろう。せめて玉が△3一にいないと、飛車の王手がキツ過ぎる。
果たして▲7一飛に△5二玉。やむを得ないとはいえ、きつい。
▲7五歩は玉の逃げ道封鎖だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/58/6b3ea16d67a4276351c31ba2da7a5550.png)
すると第2図から△7七歩成??▲7二飛成まで、終局してしまった。
あっけない幕切れに私はあんぐりである。藤宮氏、敗勢とはいえ△7七歩成はないだろう。▲7二飛成で詰みなのに、なんで受けないのか。百歩譲ってこの手をうっかりしたとしても、飛角にこれだけ迫られていたら、本能的に△6二金と受けそうなものではないか。
感想戦で私が口を出すと、天チル氏は△6二金に▲4三角成を示した。それで先手勝勢は動かないが、△同金でまだ綾はあった。
ポイントゲッターの藤宮氏が負け、にわかに暗雲が漂ってきた。
木村会長は▲4五金と銀を取れるチャンスがあったが、玉の侵入を優先させる。だが▲2二飛・▲2四玉の局面で△1三角と打たれてしまった。以下▲3三玉△2二角▲同玉△1二飛と進み、相当あぶなくなった。
だが数手後、天チル氏は△2七竜!(第1図) これが悪手で、木村会長に大チャンスが巡ってきた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/47/ee1d571c32d68946fc5dbec635c61e20.png)
ところが、木村会長は▲5二と!? 以下△2五竜で投了したので、私は呆れてしまった。
「いやいや会長、なんで▲5二となんです!? ここは角打つ一手でしょう!!」
私は気色ばみ、真っ先に口を出した。
△2七竜には▲3六角打。以下△同竜▲同角△6三金左に▲2二歩(参考図)でどうか。先手は玉の守りを一手優先すれば、あとは持駒は飛金銀桂、▲4二にと金はあるし、5六に銀も落ちている。つまり▲3六角と打てば木村会長が勝勢だったのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/7d/b6f47d0d6793415c51886e1ee7304c89.png)
「入玉なんてやったことないから分からなくなっちゃったよ」
「……」
チームが勝ちを決めていない現状では、笑えない冗談である。入玉云々はともかく、▲3六角打くらい発見してもらわねば困る。
これで残りは阿部戦だ。しかしこちらも勝利期待度は低い。まして2勝2敗で阿部戦とくれば、いやでも9月の4回戦を思い出してしまう。あの時、阿部氏はまったく手が見えず、竜を歩でタダ取りされたうえ、金で飛車を取らずに香を取りにいったのだ。傍で見ていて、訳が分からなかった。
本局は天チル氏が寄せに入ったが、△7九金がやや重い。さらに△7八銀▲5六玉で、阿部玉が上部に逃げ出した。天チル氏は△4七の成銀で△5八成銀と金を取った(第1図)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/23/25eee483f4e99cf3501adcd776a05f7e.png)
しかしこれなら▲4九金と飛車を取れる。▲3三角や▲3三歩成も残って、先手にも楽しみが出るのではないか。
ところが阿部氏が「負けました」とつぶやいたので、私は自分の耳を疑った。
「投了……?」
はあああああ!? ふ、ふざけんじゃねえぞ!!
(つづく)