眼鏡橋は黒色の石が使われ、威風堂々としていた。川面まで降りていけるが、いまは飛び石の上に女性がおり、こちらの女性に向けてポーズを取っている。
川沿いの石塀には、どこかにハートマークの石が埋め込まれていたはずだ。それを探したいものだが、旅行者がほうぼうから写真を撮っており、私のようなオッサンがその視界に入っていくのはためらわれる。
その先に目を転じると、匠寛堂があった。こんな近くにあったのか! いまも店の女性が「申し訳ありません」とか言ってお客さんをお見送りしていた。
私も入店し、何となく店の女性に話し掛ける。
「ここ、以前テレビで紹介されてましたよね」
「はあ、どこでしょう? いくつも取材を受けているので……」
どうも、こちらは私の想像以上に有名な店だったようだ。とりあえずカステラを所望すると、当日販売分はなく、いまから注文すると1月3日の配送になるとのことだった。
カステラの味などどこでも同じだと思うが、こちらの最高級品は桐箱入りで、皇室献上らしい。それでも、けっこう購入する客がいるという。私は畏れ多くて口にしようとは思わないが、それに準じるカステラは味わってみたい。
それで、「献上五三焼・佳好帝良」(2200円+税)と「はちみつかすてら」(1750円+税)をそれぞれ1斤購入した。これに配送料がかかるから割高だが、前夜に入手した地域振興クーポン(1,000円分)が使えたからよかった。
会計時に個包装のカステラをお詫びにくれた。ありがたい配慮である。損して得取れで、また次回も利用する気になるではないか。
観光案内版を見ると、この先に商店街があるようだ。ぶらぶら行くとアーケード街が見え、「ベルナード観光通り」といった。私は長崎県に何回も訪れているが、さっきの諏訪神社同様、この商店街もまったく知らなかった。
ベルナード観光通りは、有名なカステラ処等もあったが、地元密着のような気がした。微妙に人通りも増え、私は複雑な気分になる。
アーケードを外れたところに、吉宗、という見事な和風建築の食事処があった。もう開店しているようだが、何となく怖気づいて、入れない。
アーケード街に戻り、ゴールインしたあとさらに進むと、聖寿山崇福寺に着いた。これも立派な観光名所なのだろうが、有料だったので入園はせず、引き返す。
さっきのアーケード街の外側は、味のある路地裏になっていた。ドラマのロケに使えそうな気がした。
このあたりにラムネを売る店があるらしいのだが、どこにあるのかさっぱり分からず、右往左往する。
結局アーケード街に戻ると、一隅にピアノが置かれていた。この類は札幌の地下街にあったが、要するに一般客が自由に弾いていいというアレである。いまも腕自慢の青年が見事な音を奏でていた。
朝から何も食べていないので腹が減った。和菓子屋の店頭でオニイサンが試食をやっていたので、ひとついただく。となったら、購入しないといけないだろう。チョコ饅頭が美味そうだったので1個購入するが、220円はやや予算オーバーだった。
ニューヨーク堂、という店ではアイス各種を売っていた。アイスモナカは1個130円也。1個購入したが、冷えすぎていて、固かった。でも美味かった。
その先には「讃岐うどん茶屋 麺夢」があった。通常800円の天丼セットが750円である。昼食はここに決めた。
天丼は野菜が中心で、カラッと揚がっていて美味い。讃岐うどんもコシがあって美味かった。これで750円は安い。
さてこれからどうしようか。むかし長崎駅近くのユースホステルに泊まったとき、「第2眼鏡橋」を教えてもらったが、ここからはちょっと離れているので、行く気がしない。
再び眼鏡橋に戻り、中島川をぶらぶらする。便意を催してきたが、幸い立派な公衆便所があった。こうした便所で用を足すと、優雅な気分になるから不思議だ。
川では鯉が泳いでいた。それほどこの水は綺麗だということだ。
私はめがね橋電停から5系統に乗った。次は大浦天主堂に行く。ここもいまさらの感じだが、意外に堂内は見学していない。
タイム14分で、大浦天主堂電停に着いた。そこから坂を登ると、その中途に大浦天主堂があった。日本に現存するキリスト教関係の最古の建築物である。国宝でもあるが、世界文化遺産でもあるらしい。
大浦天主堂の魅力、それはいかにも「教会」というデザインで、この前で記念写真を撮れば、それで観光完了の趣もある。でも今回は入園する。入場料1000円は目玉が飛び出たが、中で1円も使わなければよい。
天主堂内部は荘厳な雰囲気だ。長椅子に着席することはできるが、堂内は撮影禁止。正面のステンドグラスが美しい。天井のカーブのデザインも優美だ。
中では音声案内がひっきりなしに流れている。この教会は1597年、長崎で十字架にかけられた日本二十六聖人に捧げられたものだという。同記念碑はこの山の上の西坂公園にあり、私も観光したことがあるが、恥ずかしながら両者にそんな関係があるとは知らなかった。
敷地内の旧羅典神学校、旧長崎大司教館も見学可能だ。前者は、一見アパートのような2階建て。壁が白いのは、漆喰のようだ。
旧長崎大司教館は、これも茶色の煉瓦が美しい3階建ての建物だ。入室すると、コロナ禍の影響で、一部閉鎖があった。
各部屋にはキリスト教布教の苦境や大浦天主堂建立までの苦労が、豊富な資料や写真で展示されていた。大浦天主堂は1864年の完成で、当時の写真を見ると、周りに建物はほとんどなく、段々畑が広がっているばかりだ。昔の写真は束の間のタイムスリップだ。私は当時の長崎に迷い込んだ気がして、不思議な気持ちになった。
出口付近にショップがあったが、ここでは何も購入しなかった。
電停に戻るとちょうど電車が到着していたが、時間が中途半端なので、歩いていく。
若干道に迷いながら、出島に着いた。出島も何度も通っているが、有料なので敬遠していた。入場すれば見応えがあるのは知っているのだが、外観の鑑賞で事足りるところがあるのだ。そして今回は、時間的に厳しくなってしまった。入口には門番が2人いたが、私は見て見ぬふりをして、その場を失礼した。
(28日につづく)
川沿いの石塀には、どこかにハートマークの石が埋め込まれていたはずだ。それを探したいものだが、旅行者がほうぼうから写真を撮っており、私のようなオッサンがその視界に入っていくのはためらわれる。
その先に目を転じると、匠寛堂があった。こんな近くにあったのか! いまも店の女性が「申し訳ありません」とか言ってお客さんをお見送りしていた。
私も入店し、何となく店の女性に話し掛ける。
「ここ、以前テレビで紹介されてましたよね」
「はあ、どこでしょう? いくつも取材を受けているので……」
どうも、こちらは私の想像以上に有名な店だったようだ。とりあえずカステラを所望すると、当日販売分はなく、いまから注文すると1月3日の配送になるとのことだった。
カステラの味などどこでも同じだと思うが、こちらの最高級品は桐箱入りで、皇室献上らしい。それでも、けっこう購入する客がいるという。私は畏れ多くて口にしようとは思わないが、それに準じるカステラは味わってみたい。
それで、「献上五三焼・佳好帝良」(2200円+税)と「はちみつかすてら」(1750円+税)をそれぞれ1斤購入した。これに配送料がかかるから割高だが、前夜に入手した地域振興クーポン(1,000円分)が使えたからよかった。
会計時に個包装のカステラをお詫びにくれた。ありがたい配慮である。損して得取れで、また次回も利用する気になるではないか。
観光案内版を見ると、この先に商店街があるようだ。ぶらぶら行くとアーケード街が見え、「ベルナード観光通り」といった。私は長崎県に何回も訪れているが、さっきの諏訪神社同様、この商店街もまったく知らなかった。
ベルナード観光通りは、有名なカステラ処等もあったが、地元密着のような気がした。微妙に人通りも増え、私は複雑な気分になる。
アーケードを外れたところに、吉宗、という見事な和風建築の食事処があった。もう開店しているようだが、何となく怖気づいて、入れない。
アーケード街に戻り、ゴールインしたあとさらに進むと、聖寿山崇福寺に着いた。これも立派な観光名所なのだろうが、有料だったので入園はせず、引き返す。
さっきのアーケード街の外側は、味のある路地裏になっていた。ドラマのロケに使えそうな気がした。
このあたりにラムネを売る店があるらしいのだが、どこにあるのかさっぱり分からず、右往左往する。
結局アーケード街に戻ると、一隅にピアノが置かれていた。この類は札幌の地下街にあったが、要するに一般客が自由に弾いていいというアレである。いまも腕自慢の青年が見事な音を奏でていた。
朝から何も食べていないので腹が減った。和菓子屋の店頭でオニイサンが試食をやっていたので、ひとついただく。となったら、購入しないといけないだろう。チョコ饅頭が美味そうだったので1個購入するが、220円はやや予算オーバーだった。
ニューヨーク堂、という店ではアイス各種を売っていた。アイスモナカは1個130円也。1個購入したが、冷えすぎていて、固かった。でも美味かった。
その先には「讃岐うどん茶屋 麺夢」があった。通常800円の天丼セットが750円である。昼食はここに決めた。
天丼は野菜が中心で、カラッと揚がっていて美味い。讃岐うどんもコシがあって美味かった。これで750円は安い。
さてこれからどうしようか。むかし長崎駅近くのユースホステルに泊まったとき、「第2眼鏡橋」を教えてもらったが、ここからはちょっと離れているので、行く気がしない。
再び眼鏡橋に戻り、中島川をぶらぶらする。便意を催してきたが、幸い立派な公衆便所があった。こうした便所で用を足すと、優雅な気分になるから不思議だ。
川では鯉が泳いでいた。それほどこの水は綺麗だということだ。
私はめがね橋電停から5系統に乗った。次は大浦天主堂に行く。ここもいまさらの感じだが、意外に堂内は見学していない。
タイム14分で、大浦天主堂電停に着いた。そこから坂を登ると、その中途に大浦天主堂があった。日本に現存するキリスト教関係の最古の建築物である。国宝でもあるが、世界文化遺産でもあるらしい。
大浦天主堂の魅力、それはいかにも「教会」というデザインで、この前で記念写真を撮れば、それで観光完了の趣もある。でも今回は入園する。入場料1000円は目玉が飛び出たが、中で1円も使わなければよい。
天主堂内部は荘厳な雰囲気だ。長椅子に着席することはできるが、堂内は撮影禁止。正面のステンドグラスが美しい。天井のカーブのデザインも優美だ。
中では音声案内がひっきりなしに流れている。この教会は1597年、長崎で十字架にかけられた日本二十六聖人に捧げられたものだという。同記念碑はこの山の上の西坂公園にあり、私も観光したことがあるが、恥ずかしながら両者にそんな関係があるとは知らなかった。
敷地内の旧羅典神学校、旧長崎大司教館も見学可能だ。前者は、一見アパートのような2階建て。壁が白いのは、漆喰のようだ。
旧長崎大司教館は、これも茶色の煉瓦が美しい3階建ての建物だ。入室すると、コロナ禍の影響で、一部閉鎖があった。
各部屋にはキリスト教布教の苦境や大浦天主堂建立までの苦労が、豊富な資料や写真で展示されていた。大浦天主堂は1864年の完成で、当時の写真を見ると、周りに建物はほとんどなく、段々畑が広がっているばかりだ。昔の写真は束の間のタイムスリップだ。私は当時の長崎に迷い込んだ気がして、不思議な気持ちになった。
出口付近にショップがあったが、ここでは何も購入しなかった。
電停に戻るとちょうど電車が到着していたが、時間が中途半端なので、歩いていく。
若干道に迷いながら、出島に着いた。出島も何度も通っているが、有料なので敬遠していた。入場すれば見応えがあるのは知っているのだが、外観の鑑賞で事足りるところがあるのだ。そして今回は、時間的に厳しくなってしまった。入口には門番が2人いたが、私は見て見ぬふりをして、その場を失礼した。
(28日につづく)