一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「うつ病九段」を見る

2021-01-13 00:47:25 | 将棋雑記
昨年12月20日はもうひとつ、NHK-BSプレミアムで「うつ病九段」も放送された。これは2018年に発刊された先崎学九段の手記「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」の映像化である。本書は2年前の「第31回将棋ペンクラブ大賞」文芸部門の最終選考に残ったが、受賞を逸した。しかし本書の評判は高く、後にコミカライズ化、ラジオドラマ化されている。もし将棋ペンクラブ大賞で入賞していたら、その一文が何かにつけ紹介されていたのだが、まあしょうがない。
今回のキャストを記すと、先崎九段役は、NACK5の安田顕。安田顕はこの手の役をやらせたら天下一品だ。
奥さまの穂坂繭三段役は、内田有紀。内田有紀はテレビ朝日「ドクターX」での麻酔科医が当たり役である。またNHKでも「ディア・ペイシェント」で内科医役を演じており、病院関係のドラマはよく馴染んでいる。
NHKのドラマは細部までよく作りこんでいるので、期待して見た。
冒頭、先崎九段がうつ病に罹るところから始まる。手記もドラマも、ここからの寛解記だが、とくに大きな出来事が起こるわけでもないから、それをどう見せるかだ。
手記ではうつ病に罹り悶々とするさまを描いているが、ドラマは第三者の目から見ているからか、悲壮感が軽減されているように感じた。
安田顕の演技は期待に違わず秀逸である。先崎九段を演じているのだが、安田顕個人が罹患している感も受けた。これはもちろん褒めている。それを優しく見守る内田有紀もいい。
退院時、兄で精神科医の章氏が「退院してからが大変なんだ」と言ったが、その自宅療養の大変さを、もう少し表現されていればよかった。章氏役は高橋克実。高橋克実の演技もよく、本物の精神科医に見えた。
棋士役も何人か出演していて、中村太地六段役は渡部豪太が演じている。渡部豪太は昨年放送されたBSテレ東「サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻Season2」で、丹羽三善三冠役を演じており、将棋ドラマではお馴染みだ。
鈴木大介九段役(日本将棋連盟常務理事)は宇梶剛士。鈴木九段と宇梶剛士は完全にイメージが違うが、体格がいいところは似ている。
佐藤康光会長役は、前川泰之。こちらもイメージが違うが、「若き会長」という意味では適役だったかもしれない。
羽生善治九段役はナイツの土屋伸之で、両者がこんなに似ているとは思わなかった。羽生九段が中年太りして、土屋伸之に近づいたということか。羽生九段(土屋伸之)は王座戦五番勝負のネット中継での出演だったが、その第4局で中村六段が放った△3六角の盤面が上下逆で、これはNHKらしからぬミスだった。
娘の春香(南沙良)がフルートを吹く場面など、原作に比べてオリジナルエピソードが多かった。それが先崎九段の回復具合を示唆しているわけで、これはこれでよかったと思う。
すべて見終えて、1時間半は見応えがあったが、少し短かった。2時間にするか前後編にして、退院後の闘病に、もう少し時間を割いてもらいたかった。あとは藤井聡太四段の活躍や雁木の流行にも、もう少しスポットを当ててもよかったと思う。でも、うつは必要以上に怖がらなくていい、と勉強できたのは大きかった。NHKさん、ありがとう。
あとは、先崎九段が将棋の復調をするだけである。
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