一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

新宿将棋センター、3月に閉店

2021-01-06 00:40:08 | 将棋雑記
昨年12月15日、日本将棋連盟直営の将棋道場「新宿将棋センター」が、本年3月31日をもって閉店するとのニュースが入った。これは衝撃的だった。
日本にはさまざまな職業があるが、明らかに斜陽産業なのは将棋道場であろう。インターネットのなかった時代は安価で1日楽しめる格好の遊び場だったが、ネットが登場して棋客がネット上で指せるようになり、状況が一変した。全国の棋客とほぼ無料で将棋が指せるのに、わざわざ指しに行くのがヘンな感じになった。
私が新宿将棋センターにお邪魔したのはただ1回、ちょうど1年前の1月6日(月)で、大野八一雄七段に指導対局を受けるためだった。
実は、将棋を指す本人がその場に出向かなければいけない、という当たり前のことも、小さくない面倒臭さである。
これがネットだったら移動の時間はなく対局ができる。すなわち勤め人でも、昼休みなどのわずかな時間にも一局指せるのだ。
新宿将棋センターには、「将棋世界」の割引料金で入店した。ただ短時間の入店でも短時間料金が設定されており、その措置には大いに感心した。
室内は広く清潔で、相当数の棋客が指せるように思われた。ただ、この時はコロナ禍ではなかったが、お世辞にも棋客が多いとは言えなかった。主要顧客である男性勤め人は平日が仕事だから、まず来ない。よってリタイヤ組が主客になるのだろうが、最近はリタイヤ組もネット対局に鞍替えしたようだった。だがそうなると、この広さは却って負担となる。
そこへ持って来てコロナ禍が来襲した。対局者はマスクは付けているものの至近距離で顔を突き合わす。しかも同じ駒を2人で触り合っているのだ。対局が終わるごとに駒を消毒もできまい。神経質な人は、入店を忌避するだろう。ますます客が遠のいたのであろう。
もちろん生身の人間と指すライブ感も独特の緊張感があってよいがこれも良し悪しで、今回の私のように目的の棋士や棋客がいれば別だが、たとえば反りの合わない人と当たって負かされた場合は、相手の顔を見たくなくなる。もはや感想戦なしでその場を去ってしまいたいほどだ。
しかも将棋というのは厄介で、負けると全人格および全能力を否定された気がするのだ。負かされたうえにプライドまで踏みにじられる。全世界において、これほど劣等感を植え付けられるゲームもあるまい。
昨年12月26日に名古屋市で、将棋の勝敗を巡って流血騒ぎになった事件があったが、それなどはこの典型的な例である。
まだ妙齢の女性が対局してくれればいいが、そんなチャンスはほとんどない。それに、仮に実現できても対局中に凝視していたら失礼にあたるし、何より将棋に身が入らない。
結局ここでも、ネットに軍配が上がってしまうのである。新宿将棋センターのスタッフ氏も日々最善を尽くしていたが、閉店を決めざるを得なかった苦衷、察するに余りある。
ところで佐伯昌優九段の将棋センターも昨年一杯で閉店となった。コロナ禍になってから休店していたようで、こちらはコロナ禍の犠牲になった格好だ。
新宿将棋センターのほうは、場所を変えての新装開店の予定があるとのこと。将棋道場は日本の文化遺産である。何とか再開してくれることを祈ります。
コメント (2)
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