一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

金沢五段、引退

2021-05-21 00:16:54 | 男性棋士
17日に第34期竜王戦ランキング戦6組・昇級者決定戦が行われ、東和男八段と金沢孝史(かねざわ・たかし)五段が敗れ、現役引退となった。
東八段は1976年四段デビュー。順位戦は最高位B級2組だったが、竜王戦は1組の経験がある。今回は65歳のフリークラス定年に伴っての引退となる。
東八段がまずまず現役生活を全うしたのに対し、金沢五段はやや不適切だ。
金沢五段は1999年四段デビュー。2001年に王位リーグするなど活躍したが、順位戦C級2組では振るわず、2002年度と2003年度に連続して降級点を取ってしまう。
またこの間には不戦敗も多く、「勤務状況」は健康的ではなかった。
サラリーマン生活の経験もある私から言わせてもらえば、毎日通勤の必要がない棋士の生活パターンは天国みたいなもので、月に数度しかない対局に遅刻や不戦敗はあり得ない。
ただ、棋士の中には対局の前夜に眠れない人もおり、つい寝不足になって遅刻を繰り返してしまう気持ちも分からぬではない。
金沢五段は大局観が独特で、例えば2003年8月21日に指された清水市代女流六段との第52期王座戦では、清水女流六段に十分の駒組をされ、まだ駒もぶつかっていないのに「投了を考えた」という(当時の観戦記より)。結果的には金沢五段が快勝したのだが、対局中にこんなに早く諦めてしまっては、勝てる将棋も勝てなくなってしまう。

そんな2005年、金沢五段は突然、といった感じで、フリークラス宣言をしてしまった。
これにより、フリークラス15年と、C級2組の残り1期を加えた16年、すなわち2021年3月までの現役生活が確定したのであった。
しかし金沢五段は、2005年の宣言時点で31歳。この若さがあれば仮に順位戦から落ちたところで、自分に自信があれば、すぐに順位戦に復帰できる。それなのになぜに転出したのか、意味が分からなかった。
その後も金沢五段はタイトルホルダーに勝つなど好成績を収めたが、フリークラスに転出した以上、どんなにいい成績を取っても、現役生活は延長されない。私はとても虚しくなった。
そして今回、すべての対局を終え、現役引退となったのだった。
棋士は幼少時からの趣味を職業にでき、幸せだと思う。だが櫛田陽一七段や金沢五段のように、現役生活真っ盛りの時期に、自分で見切りをつけてしまうケースがある。将棋に魅入られた者は、永遠にそこから抜け出せないと認識しているが、そうでない棋士もいるのだ。
ともあれ金沢先生、22年の現役生活、お疲れ様でございました。
コメント (4)
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